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2017年4月15日 (土)

低ノイズ・低粘着性・低コストのタンパク質結晶輸送媒体を発見-生理条件に近いタンパク質の高分解能構造解析に期待-

2017年4月10日
理化学研究所
京都大学
大阪大学
高輝度光科学研究センター
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
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 理化学研究所(理研)放射光科学総合
研究センターSACLA利用技術開拓グループ
の菅原道泰特別研究員(研究当時)、
岩田想グループディレクター
(京都大学大学院医学研究科教授)、
京都大学大学院農学研究科の桝田哲哉助教、
大阪大学蛋白質研究所附属蛋白質解析
先端研究センターの鈴木守准教授、
高輝度光科学研究センターXFEL利用研究
推進室の登野健介チームリーダーらの
共同研究グループ※は、
X線自由電子レーザー(XFEL)施設
「SACLA[1]」のX線レーザーを用いた
「連続フェムト秒結晶構造解析
(SFX)[2]」
(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)
において、タンパク質結晶輸送媒体
として「ヒドロキシエチルセルロース[3]」
を用いると、コストを抑えつつ、
結晶を安定供給し、測定ノイズも
低減できることを発見しました。
 
 SFXには、試料に放射線損傷[4]を
与えず、従来の低温条件下
(100K、-173℃)で行う実験とは異なり、
生理条件(生体内)に近い温度での
タンパク質の立体構造(結晶構造)を
決定できるという特性があります。
 
 しかし、10~100mgという大量の
タンパク質から得た結晶を必要とする
という課題がありました。
 
 そこで、共同研究グループは2014年、
少量のタンパク質結晶を高粘度物質の
グリースに混ぜてインジェクター
(噴出装置)からゆっくりと押し出し、
タンパク質結晶のX線回折を行うことが
できる「グリースマトリックス法」を
開発しました注1)。
 
 グリースマトリックス法では、
従来の液状試料をインジェクターから
噴出する「液体ジェット法」と比べ、
構造解析に必要なタンパク質結晶の量を
1/10~1/100
(使用するタンパク質は1mg以下)に
軽減できました。
 
 しかし、グリースに由来する
散乱バックグランドノイズは無視できない
ため、より低ノイズのヒアルロン酸を
SFXに導入しましたが注2)、
その高い粘着力ゆえに安定に結晶を
流すことが難しく、また非常に高価である
ことも問題でした。
 
 今回、共同研究グループは、
タンパク質結晶輸送媒体として
ヒドロキシエチルセルロースを
利用することで、
ノイズ・粘着性・コストの問題を
解決しました。
 
 今後、ヒドロキシエチルセルロースを
利用することで、創薬ターゲットを含む
多様なタンパク質の高分解能結晶構造解析
が可能になると期待できます。
 
 本成果は、英国のオンライン科学雑誌
『Scientific Reports』(4月6日号)に
掲載されました。
 
 本研究は、文部科学省X線自由電子
レーザー重点戦略課題
「創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法
の開発」(研究代表者:岩田想)などの
支援を受けて実施されました。
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 「連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)」
は重要な解析手法です。
 
 
>現在、結晶輸送媒体として
>ヒドロキシエチルセルロース、
>グリースを用いて、さまざまな
>タンパク質のSFXを行っています。
 
>最近では、ヒドロキシエチルセルロース
>を用いたSFXで最高分解能1.20Åでの
>酵素の構造解析に成功しました注3)。
 
>またグリースを用いて、光合成の
>水分解反応において、
>光化学系Ⅱ複合体が酸素分子を
>発生させる直前の状態の立体構造を
>決定することに成功しました注4)。
 
>このタンパク質の場合、
>ヒドロキシエチルセルロースを用いると
>結晶に損傷を与えてしまいます。
 
>今後、ヒドロキシエチルセルロース、
>グリースなどを相補的に利用すること
>で、創薬ターゲットとなる
>膜タンパク質[9]を中心とした
>多様なタンパク質の高分解能での
>構造解析が期待できます。
 
 いろいろ大変なようですが、さらに
工夫を重ね、今まで出来なかった解析
が出来るようになることに
期待しています。

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