培養細胞で高い増殖能を持つB型インフルエンザウイルスの作出に成功~より迅速に、効率よく季節性ワクチンを製造することが可能に~
平成28年12月6日
東京大学 医科学研究所
日本医療研究開発機構(AMED)
科学技術振興機構(JST)
詳細は、リンクを参照して下さい。
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ポイント
○培養細胞で高い増殖能を持つ
B型インフルエンザウイルスを作出した。
○本研究グループがこれまでに開発した
A型インフルエンザウイルス高増殖株と
今回開発した
B型インフルエンザウイルス高増殖株を
ワクチン製造に利用することで、
季節性インフルエンザワクチンを
効率よく生産することが可能になる。
○従来の鶏卵ワクチンに見られたような
ワクチン製造過程で起きる抗原変異
による有効性低下の懸念がない
季節性インフルエンザワクチンを
迅速に供給することが可能になる
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東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門
ウイルス感染分野の河岡 義裕 教授らの
研究グループは、培養細胞で高い増殖能を
持つB型インフルエンザウイルス(図1)
の開発に成功しました。
現行の季節性インフルエンザワクチン
注1)は発育鶏卵注2)で増やした
ウイルスから製造されていますが、
その増殖過程でウイルスの主要抗原
であるヘマグルチニン(HA)に変異が
入るとワクチンの有効性が大きく低下する
ことが知られています。
抗原変異が起きにくい培養細胞を用いて
ワクチンを製造することで、
この問題を回避することが可能ですが、
培養細胞における
季節性インフルエンザウイルスの増殖能の
低さが大きな問題となっていました。
本研究グループが1999年に開発した
「リバースジェネティクス法注3)」
(図2)を用いて、多様な
B型インフルエンザウイルス株からなる
変異体集団(変異ウイルスライブラリ)を
人工的に作出しました。
そして、その変異ウイルスライブラリ
から培養細胞で高い増殖能を持つ
B型インフルエンザウイルス株を
選別しました。
次に、このB型インフルエンザウイルス
高増殖株を母体に野外で流行している
ウイルスの主要抗原を入れたウイルス株を
作製し、その増殖能を解析しました。
その結果、このウイルス株は
細胞培養ワクチンの製造でよく利用されて
いる培養細胞において効率よく増殖する
ことが判明しました。
本研究の成果によって、従来の
鶏卵ワクチンに比べ高い有効性が
期待できる細胞培養ワクチンを
より迅速に製造供給することが
可能になります。
本研究成果は2016年12月5日
(米国東部時間)、米国科学雑誌
「Proceedings of the
National Academy of
Sciences of the
United States of
America」のオンライン速報版で
公開されます。
なお本研究は、東京大学と
米国ウィスコンシン大学が共同で行った
ものです。
本研究成果は、科学技術振興機構
(JST) 戦略的創造研究推進事業
(平成20年度~平成26年度)、
日本医療研究開発機構(AMED)
革新的先端研究開発支援事業
(平成27年度以降)、
文部科学省 新学術領域研究などの
一環として得られました。
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Good News !
>本研究で開発した特定の変異を持つ
>B/Yamagata株バックボーンを
>使用することにより、
>B型インフルエンザウイルス流行株の
>主要抗原(HAとNA)を持つ
>ワクチン製造用高増殖株を短期間で
>作出することが可能になります。
>すなわち、理論的にはどのような
>流行株であっても2種類の主要抗原を
>入れ換えるだけで、流行株と抗原性が
>一致したワクチン製造用高増殖株を
>作出することが可能になります。
期待しています。
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