生体防御に不可欠なNKT細胞の新しい分化経路を発見-「NKTがん治療」の開発に貢献する可能性-
2017年1月31日
理化学研究所
詳細は、リンクを参照して下さい。
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免疫機能を担う細胞の一つに、
1986年に理研の研究者によって
発見されたナチュラルキラーT細胞
(NKT細胞)があります。
NKT細胞はT細胞、B細胞、
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)に続く
第4のリンパ球と呼ばれ、機能の異なる
複数の亜集団から構成されています。
先天的に備わっている「自然免疫系」と
生後獲得していく「獲得免疫系」の両方を
同時に活性化することにより、
長期にわたり抗腫瘍効果を発揮する
「長期免疫記憶」を誘導する中心的な
働きをします。
また、アレルギー疾患、慢性炎症性疾患、
自己免疫疾患の発症、自己免疫寛容の維持、
臓器移植の生着などを制御し、
さらにがん免疫や病原体感染防御など
“種の生存”に不可欠な生体防御
においても重要な役割を果たしています。
免疫反応の際に、T細胞は抗原の
タンパク質を認識するのに対して、
NKT細胞は抗原の糖脂質を認識します。
これまでNKT細胞は、
①T細胞と同じ細胞系列に属し、
②元々骨髄の中にある造血幹細胞が
変化して、リンパ球のもとになる
細胞が心臓の少し上にある胸腺という
臓器内でT細胞と同じ分化経路を
たどるものの、分化の最終段階で
分岐し、成熟すると考えられて
きました。
ところが、この説については
不明な点が多く残されていました。
マウスでは、Rag2という遺伝子が
リンパ球の「遺伝子再構成」を
特異的に活性化します。
そこで、理研の研究チームは、
胸腺リンパ球の分化経路の最終段階
(DPステージ)でRag2遺伝子を欠損させた
マウスを作製し、詳しく解析しました。
その結果、T細胞とはDPステージで
分化成熟する従来のNKT細胞と別に、
T細胞が分化・成熟する前の未分化段階
において、早期に成熟する新たなNKT細胞
が存在することが分かりました。
このタイプのNKT細胞は全体の約20%を
占め、主に肝臓に分布することも
分かりました(図参照)。
また、新たなNKT細胞の特徴を解析した
ところ、がんの排除や病原体感染防御に
必須のインターフェロン-ガンマなどの
サイトカインや、抗原を殺傷する
細胞障害活性に重要なパーフォーリンや
フランザイムという顆粒タンパク質を多く
発現していることが分かりました。
以上の結果から、新たに発見された
NKT細胞は「生体防御に不可欠なNKT細胞」
であることが示されました。
本成果は、さまざまな免疫細胞の
機能獲得の機序の解明や、NKT細胞を
標的とした高効果ながん免疫治療の
開発につながると期待できます。
詳細は下記リンクを、
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免疫系は本当に複雑ですね。
>本研究から、傷害活性が高く生体防御に
>不可欠なNKT細胞は早期に分化すること
>が明らかとなり、今後、新しい観点から
>研究を進めることが可能となります。
>本成果は、さまざまな免疫細胞の
>機能獲得機序の解明や、効果の高い
>NKT細胞標的がん免疫治療の開発に
>つながると期待できます。
大いに期待したい。
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