ガラスの新しい物性制御法を開発~微量の電子を混ぜただけで、ガラスの転移温度が100℃以上も低下~
平成28年8月23日
科学技術振興機構(JST)
東京工業大学
詳細は、リンクを参照して下さい。
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ポイント
○液体の構造が凍結されてガラスになる
転移温度は、ガラスの網目構造の
つながり具合で決まるのが常識だった。
○酸素イオンを数%の電子に置き換えた
「電子化物ガラス」は、網目構造は
同じままで転移温度が大幅に低下する
ことを発見した。
○電子が他のイオンより動きやすいために、
電子化によりガラスの転移温度が
低下することを、
第一原理分子動力学計算で検証した。
○陰イオンとして機能する電子の添加が
新しいガラスの物性の制御法になる
ことを提唱。
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JST 戦略的創造研究推進事業
において、東京工業大学 元素戦略
研究センター センター長
/科学技術創成研究院 教授の
細野 秀雄 博士と、
米国パシフィック・ノースウエスト
国立研究所(PNNL)の
ピーター・スシュコ 博士らは、
電子化物ガラスが、従来のガラスと
大きく異なるユニークな物性を持つことを、
実験と計算によって、初めて明らかに
しました。
液体の構造が凍結される温度
(転移温度)などのガラスの物性は、
ガラスの網目を形成する成分(NWF)と
それを切断する成分(NWM)の比、
つまり化学組成で決まります。
本研究グループは、
12CaO7Al2O3(マイエナイト)
電子化物(C12A7:e-)の
ガラスを作製し、物性と構造を検討した
ところ、化学組成はそのままにも関わらず、
酸素イオンの3%を電子に置き換えた
だけで、転移温度が100℃以上も
低下することを見いだしました。
これまでに、ガラスの化学組成を
大幅に変えることで転移温度を低下させた
例は膨大にありますが、これほどの
大幅な低下は報告がありません。
第一原理分子動力学計算注1)によって
電子アニオン注2)の周囲の局所構造と
その温度による変化を検討した結果、
電子アニオンは他のイオンよりも
ずっと動きやすいために、
微量の電子アニオンが酸素イオンと
置き換わることで転移温度が顕著に
低下したことが明らかになりました。
これまで、転移温度はNWMとNWFの
割合で決まるという常識のもと、
微量成分でそれを制御することは不可能
と考えられてきました。
今回の成果により、電子アニオンを
用いればそれが可能となることが
示されました。
これが契機となって未開拓であった
電子化物ガラスという領域が拓けることが
期待されます。
本研究は、東京工業大学とPNNLが
共同で行ったものです。
本成果は、2016年8月22日の週
(米国東部時間)に米国科学誌
「Proceedings of the
National Academy
of Sciences of the
United States of
America」のオンライン速報版で
公開されます。
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ガラスにはまだまだ未知の部分が
沢山ありそうです。
>電子化物ガラスは、全く新しいタイプの
>ガラスであり、今回見いだされた以外
>にもこれまでの常識とは大幅に異なる
>物性を持つことが予想され、
>学術と応用の両面でこれからの進展が
>期待されます。
期待しましょう。
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