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2016年8月 9日 (火)

分子モーターの「バックギア」を解明-細胞分裂をつかさどるキネシンが微小管を逆走する仕組み-

2016年7月22日
理化学研究所
東京大学
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
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 生きものの特徴の一つは、「動く」こと
です。
 
 動物はもちろん、一見動いていない
ように見える植物でも、細胞の中では
さまざまな分子が動き回っています。
 
 これらのマクロな動きやミクロな動きは、
化学反応のエネルギーを運動エネルギーに
変換する特別なタンパク質、
「分子モーター」によって支えられて
います。
 
 分子モーターの一種キネシン
(kinesin: 運動、分裂をさすkinesisより)
は、哺乳類では45種類見つかっており、
細胞内の運び屋として中心的な役割を
担っています。
 
 例えば神経細胞は、軸索を含めた細胞の
長さが1mにもなる場合があります。
 
 軸索の中では、「微小管」と呼ばれる
タンパク質でできたレールの上を
キネシンが移動して、必要な分子を
シナプスの先端まで運んでいるのです。
 
 またキネシンは、細胞が分裂するとき
にも大事な役割があります。
 
 細胞分裂では、微小管が集まってできた
紡錘体が、染色体を正しく娘細胞に
分配します。
 
 このときキネシンは、微小管を正しく
並べたり、染色体の移動を牽引したり
しています。
 
 微小管は「プラス端」と「マイナス端」
という方向性を持ち、ほとんどの
キネシンはプラス端側に動きます。
 
 しかしごく少数のキネシンは、
この一方通行のレールをマイナス端側に
逆走できます。
 
 細胞分裂では、これら2種類の
キネシンが共同して働くことで、
染色体の整列が可能になります。
 
 これまで、プラス端側に動くキネシンの
駆動メカニズムはよく調べられて
いましたが、逆向きへ動くキネシンの
分子メカニズムはほとんど分かって
いませんでした。
 
 理研と東京大学の共同研究グループは、
キネシンタンパク質を構成する
たった5つのアミノ酸配列が、
動く方向を切り替える働きをしている
ことを突き止めました。
 
 さらに、クライオ電子顕微鏡と呼ばれる
特殊な電子顕微鏡と、X線結晶解析による
立体構造解析を駆使し、
キネシンタンパク質の動きを逆転させる
仕組みを解明しました(図参照)。
 
 アミノ酸配列のわずかな違いで
「バックギア」を進化させた生命の
巧妙な戦略には、感心するばかりです。
 
 分子モーターの構造・機能をさらに深く
知ることができれば、ミクロの世界で
自由自在に動くナノマシンの実現も
夢ではないかもしれません。
 
 
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 分子モーターと言われているものです。
 
 関連投稿です。
 
>ダイニンは細胞の中心方向へ、
>キネシンは細胞の周辺方向へと運ぶ
>役割分担があり、完璧ともいえる
>物質輸送システムが成り立っている。
 
 
 今回はキネシンに関するものです。
 どちらも重要なものです。
 
>今回の成果は、細胞分裂における
>染色体分配の分子メカニズムの解明、
>特に染色体分配時に形成される
>紡錘体の形成メカニズムの解明に
>大きく貢献する成果です。
 
>また、細胞分裂を制御するキネシン-14
>の高分解能構造解析は、それに結合する
>化合物のスクリーニングへと
>直接つながり、細胞分裂を制御する
>新たな抗がん剤設計への応用が
>期待できます。
 
>また、ナノマシンの設計戦略への応用
>も期待できます。
>同じ動力部を持ちながら方向性を
>制御できるナノマシンは、
>ドラッグデリバリーなどの
>新たな戦略として利用される日が
>くるかもしれません。
 
 期待しましょう。

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