脳の情報伝達系の新メカニズムを数理モデルが正確に予測 金沢大学など
2016年8月23日 大学ジャーナル
詳細は、リンクを参照して下さい。
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金沢大学と北海道大学、九州大学の
共同研究グループは、
数理モデルのシミュレーションを実験的に
検証することで、脳の形成過程での
長距離性と短距離性の情報伝達因子間に
働く協調作用のメカニズムを発見した。
細胞間の情報伝達因子には、
長距離性のタンパク質(EGF)と
短距離性のタンパク質(Notch)がある。
Notchは隣接細胞に作用(側方抑制)し、
細胞が四角から丸に変化(分化)するとき
などは、隣接細胞に抑制性シグナルを送る
ため,周囲の細胞は必ず四角になり、
ゴマシオパターン(丸と四角の交互配列)
を形成する。
一方、EGFは離れた場所に作用を及ぼす。
両者は生命現象に重要な役割を果たすが、
Notchの側方抑制とEGFの拡散効果の協調
による効果は不明だった。
ショウジョウバエの脳の形成過程には、
最初四角い上皮細胞のみが存在した後、
1列ずつ順番に丸い神経幹細胞に変化する
「分化の波」(Proneural Wave)
という現象があり、類似の現象は
他の生物でも知られている。
研究グループはこの現象に着目し、
EGFの拡散とNotchの側方抑制を
組み合わせた「分化の波」数理モデルを
構築し、EGFの産生減少による
ゴマシオパターンの出現を予測した。
実際にEGFの産生量を減少して
検証すると、脳に明らかな
ゴマシオパターンが出現したことから、
「分化の波」にはNotchの短距離性作用が
組み込まれており、EGFとの協調作用
によって波の伝播速度を制御する役割の
存在を発見した。
EGFとNotchの協調作用は
大脳皮質の形成過程での神経幹細胞の分化
や、肺がん・乳がんの発症過程でも
重要な役割を果たしているとされる。
今回の研究が可能にした数理科学と
生命科学の異分野融合研究は、
今後多様な生命現象研究への応用が
期待される。
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数理科学と生命科学の異分野融合研究
大いに期待しています。
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