並列計算で感覚情報を分解 - 神経回路型ハードウェアによる生命科学・工学・医学の境界領域開拓へ -
2016年6月29日
理化学研究所
詳細は、リンクを参照して下さい。
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要旨
理化学研究所(理研)脳科学総合
研究センター神経適応理論研究チームの
豊泉太郎チームリーダーらの研究チーム※
は、神経回路型ハードウェア用いて
複数の感覚入力を独立した成分に分解する
ためのアルゴリズム[1]を開発しました。
騒がしいパーティー会場で、複数の話者
の話し声の中から注目する人の声を
聞き分けることができるように、
脳は複数の感覚入力を独立した成分に
分解して処理することができます。
この処理を「独立成分分析(ICA)[2]」
と呼びます。
これまで、計算機上でICAを実現する
ためのアルゴリズムが提案されて
いますが、神経ネットワークを模倣した
神経回路型ハードウェア[3]への実装は
さまざまな制限があり困難でした。
研究チームは、複数の信号源が混在する
感覚入力を表現する入力神経細胞と
感覚入力の中から元となる信号源の成分
(独立成分)を抽出する出力神経細胞
との間のシナプス強度[4]を、
経験に応じてどのように変化させたら
ICAを実現できるかを調べました。
その結果、シナプス強度の変化を
「広域信号×入力神経細胞の活動
×出力神経細胞の活動」で表現する
新しい計算方法を発見し、
「error-gated Hebbian rule(EGHR)」と
名付けました。
広域信号は、それぞれの出力神経細胞の
活動度に依存した信号を単純に
足し合わせることで計算され、
各シナプス結合で起こる
「ヘッブ型可塑性[5]」の速さと方向を
一元的に調節する仕組みになっています。
続いて、数理解析と
計算機シミュレーションによって
EGHRと従来法を比較しました。
すると、従来法が出力神経細胞の数と
信号源の数が等しくないと働かない
のに対し、EGHRは神経細胞の数が
信号源の数より多ければICAを実現できる
ことが分かりました。
すなわち、EGHRでは、神経細胞の数が
充分沢山あれば信号源の数が動的に
変化する現実的環境でも柔軟にICAを実現
できることが分かりました。
そして、EGHRは自然画像や動画に対して、
ICAを容易に実現しました。
今後、神経回路型ハードウェアを
用いた並列計算[6]による、
高速に画像・音声信号の要素分解が
可能になると期待できます。
また、EGHRは、神経ネットワーク内の
多数の神経細胞が協調的に動作することで
感覚入力の背後にある隠れた原因を
読み取る過程をうまく説明できるため、
これまで詳細が分からなかった
生命科学・工学・医学の境界領域を
開拓できる可能性があります。
本研究は、英国のオンライン科学雑誌
『Scientific Reports』
(6月21日付け:日本時間6月21日)に
掲載されました。
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>騒がしいパーティー会場で、
>複数の話者の話し声の中から
>注目する人の声を聞き分けることが
>できる。(「独立成分分析(ICA)[2]」)
人間ってすごいですね。
「独立成分分析(ICA)[2]」の実現
素晴らしいですね。
>今後、神経回路型ハードウェアを用いた
>並列計算[6]によって、
>高速に画像・音声信号の要素分解が
>可能になると期待できます。
期待しましょう。
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