抗CCR4抗体はSTLV-1/HTLV-1免疫応答を活性化させる
31 May, 2016 京都大学ウイルス研究所
詳細は、リンクを参照して下さい。
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HTLV-1(human T-cell leukemia virus
type 1)は成人T細胞白血病(ATL)や
HTLV-1 関連脊髄症(HAM/TSP)の
原因ウイルスです。
近年、感染細胞で発現が上昇している
ケモカインレセプター CCR4 に対する
ヒト化抗体(モガムリズマブ)が治療成果を
上げています。
しかし、CCR4 は制御性T細胞(Treg)
にも同様に発現する為、治療効果と共に
副作用も懸念されています。
これまで私達は HTLV-1 の
近縁ウイルスである
simian T-cell leukemia virus type 1
(STLV-1) に自然感染している
ニホンザルが、新たな HTLV-1 感染症の
霊長類モデルとして有用であることを
報告してきました。
本研究ではその STLV-1 感染ニホンザル
にモガムリズマブを投与し、
宿主の免疫反応の変化を解析しました。
これまで私達はモガムリズマブを
STLV-1 感染ニホンザルに投与すると
血中の STLV-1 感染細胞数が減少すること
を報告しています
(Miura et al. Retrovirology 2013)。
私達は治療後のニホンザルの長期観察を
行ったところ、1年以上にわたり
感染細胞数が抑制されていることを
見出しました(図1)。
その原因としてモガリズムマブ投与
STLV-1 感染ニホンザルでは
STLV-1 抗原(sTaxとSBZ)に対する
CD8 陽性 T 細胞が活性化していることが
明らかとなりました(図2)。
さらに、モガリズムマブ治療後の
ATL 患者検体を調べたところ、
完全寛解を維持している一部の症例では
HTLV-1 抗原(TaxとHBZ)に対する
T 細胞応答が活性化していることを
見出しました(図3)。
Treg と STLV-1 感染細胞は共に
CCR4 を発現するため、
STLV-1 感染ニホンサルでの
モガリズムマブ投与は「Tregの減少」と
「抗体依存性細胞傷害による感染細胞の
破壊」に起因する宿主免疫の活性化
によって STLV-1 特異的 T 細胞を
誘導していると考えられました。
以上の結果から anti-CCR4 抗体は
複数の機序により宿主免疫を活性化し、
ウイルス感染細胞を抑制・排除している
ことが予想されます(図4)。
尚、本研究は京都大学霊長類研究所との
共同利用・共同研究による成果です。
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「ケモカインレセプター CCR4
に対するヒト化抗体(モガムリズマブ)
が治療成果を上げている」理由が
解明されたということですね。
>以上の結果から anti-CCR4 抗体は
>複数の機序により宿主免疫を活性化し、
>ウイルス感染細胞を抑制・排除している
>ことが予想されます(図4)。
とのことです。
Good Newsと言って良いのかな?
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