自然免疫の記憶メカニズムを解明-病原体感染によるエピゲノム変化が鍵-
2015年9月1日 理化学研究所
詳細は、リンクを参照して下さい。
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私達の体は、一度感染した病原体が
再感染した時には、より早くその病原体を
認識し、排除する仕組みを持っています。
これが「免疫記憶」で、ワクチンなどに
応用されています。
免疫はマクロファージなどが関与する
「自然免疫」と、T細胞やB細胞が関与する
「獲得免疫」の連携によって成り立って
います。
獲得免疫には記憶が存在する一方、
自然免疫には記憶がないとされてきました。
しかし自然免疫しか持たない植物や
昆虫にも免疫記憶が存在し、
また脊椎動物でヘルペスウイルス感染が
バクテリアに対する抵抗性を上昇させる
ことなどから、自然免疫にも記憶が
存在するのではないかと議論されて
いました。
しかし記憶のメカニズムが不明なため、
受け入れられていませんでした。
共同研究チームは、転写因子ATF7の
変異マウスのマクロファージが活性化
されていることに気づき、研究を始め
ました。
一連の解析の結果、マクロファージ
では一群の免疫系遺伝子にATF7が結合し、
ヒストンのメチル化酵素G9aを
リクルートし、ヒストンをメチル化する
ことにより発現を抑制していました。
そしてグラム陰性菌細胞壁外膜の
構成成分であるリポ多糖(LPS)を
マウスに投与すると、Toll様受容体
(TLR)からのシグナルによりATF7が
リン酸化され、これらの遺伝子から
はずれ、ヒストンのメチル化が低下し、
転写が誘導されました。
LPSを投与して3週間後でもこれらの
遺伝子のヒストンメチル化レベルは
低い状態で維持され、基底発現レベルの
高い状態が継続していました。
そして、このような状態はグラム陽性の
黄色ブドウ球菌に対して抵抗性を持つこと
が分かりました。
このように自然免疫の記憶は、特定の
抗原の情報を特異的に認識する獲得免疫の
記憶と異なり、特異性がないのが特徴です。
乳幼児期までの感染,非衛生的環境が,
その後のアレルギー疾患の発症を低下
させるということが判明しています
(衛生仮説)。
しかしバクテリア感染などの影響が
長期間記憶されるメカニズムは不明
でした。
今回特定の遺伝子のエピゲノム変化が
長期間維持されることが分かったこと
から、これらの遺伝子をアレルギーの
予測に使える可能性が出て来ました。
また効率的なワクチンには、自然免疫を
活性化するアジュバントが必要です。
これまで、アジュバントの効果は数日で
終了すると考えられていましたが、
本研究により長期間記憶される事が
分かりました。
これはアジュバントの選択法にも影響し、
より効率的なワクチンの開発に繋がること
が期待できます。
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自然免疫にも記憶が存在するんですね。
自然免疫の研究も重要です。
自然免疫の研究では、
大阪大学免疫学フロンティアセンターの
審良静男研究室が活発なようです。
自然免疫の威力は想定していた以上の
ようです。
自然免疫についても、更なる研究に
期待しています。
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