視神経軸索流のライブイメージで解明された緑内障と加齢変化
2015年08月04日 NIPS 生理学研究所
福井大学、熊本大学、名古屋大学
岡山大学、
カリフォルニア大学サンディエゴ校
詳細は、リンクを参照して下さい。
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本研究成果のポイント
◆神経細胞が活動して生きていく上で、
神経軸索の中に、たくさんの物質が
運搬(軸索輸送)されています。
今回、視神経軸索内のミトコンドリアの
輸送をライブイメージで観察することに
成功しました。
これは、解剖を加えずに自然な状態で、
哺乳動物の中枢神経組織の軸索輸送を
動画で撮影できた世界で初めての
研究成果です。
◆緑内障になると視神経の軸索輸送が
止まって、視神経が死ぬと言われて
いますが、実際に止まる映像はこれまで
報告されていませんでした。
本研究で、視神経が死ぬ前に、視神経の
軸索輸送が止まることを動画で明らかに
しました。
◆緑内障になると、ミトコンドリアの輸送
が止まるだけでなく、ミトコンドリアが
減ったり小さくなったりすることが
わかりました。
年を取ったマウスでも、同様に、
ミトコンドリアが減ったり小さく
なったりする現象がみられ、高齢者が
緑内障になりやすいという事実と
一致していました。
◆緑内障の進行を予測する検査法に
大きな技術革新が得られたり、
神経細胞の老化を評価する指標として
役立てられたりすることを
期待できます。
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研究の内容
軸索内を輸送されている物体として、
ミトコンドリアを観察対象としました。
なぜなら、ミトコンドリアは軸索内を
輸送される物体としては最も大きいから
です。
また、ミトコンドリアはATPという
神経細胞が活動して生きていく上で大事な
エネルギーを作る細胞内器官で、
緑内障では視神経が死ぬ前に
ミトコンドリアが障害されることが
報告されているからです。
ミトコンドリアを蛍光標識したマウスを
用いて、軸索内を輸送される
ミトコンドリアを2光子レーザー顕微鏡で
観察し、視神経軸索1本1本の中を活発に
輸送されるミトコンドリアの動画の撮影に
成功しました。
眼圧の高いマウスでは、ミトコンドリア
の輸送が止まり、その後、視神経が
死ぬことがわかりました。
さらに、軸索の中で、ミトコンドリアが
無くなっている領域が広がっていくことや、
ミトコンドリア自体の長さが短くなって
いることがわかりました。
高齢のマウス(ヒトでは70才台)でも、
軸索の中で、ミトコンドリアが無くなって
いる領域が広がっていくことや、
ミトコンドリアの長さが短くなっている
ことがわかり、中高年のマウス(40才台)
でも同じ現象が始まっていることが
わかりました。
これは、加齢と共に緑内障にかかりやすい
ことや、高齢者の緑内障ほど眼圧で視神経
が死にやすいという臨床研究のデータと
一致する結果でした。
ただし、緑内障ではミトコンドリアの
軸索流が止まりますが、加齢では
止まらないというところが、ただの
老化現象と緑内障という深刻な眼の病気と
明確に異なる点です。
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私自身、正常眼圧緑内障なのですごく
関心がある研究です。
残念ながら治療法そのものではない
ですね。
>実際に軸索流が止まるのかを動画でみた
>報告はありませんでした。
今までは、想像でしかなかったと言う
ことですね。
以下のことがわかったと言っています。
>眼圧の高いマウスでは、
>ミトコンドリアの輸送が止まり、
>その後、視神経が死ぬことが
>わかりました。
>さらに、軸索の中で、ミトコンドリア
>が無くなっている領域が広がっていく
>ことや、ミトコンドリア自体の長さが
>短くなっていることがわかりました。
>緑内障ではミトコンドリアの軸索流が
>止まりますが、加齢では止まらない
>というところが、ただの老化現象と
>緑内障という深刻な眼の病気と明確に
>異なる点です。
今後は、
>軸索流をみることで、今まさに視神経が
>弱ってきているのかを判定することが
>でき、今の眼圧が視神経にとって
>適切なのかまだ高いのかを見極め、
>治療を変更することができます。
>今後、さらに大型の動物で検証を
>重ねて、臨床応用に進めていきたいと
>考えています。
現状把握がより正確に出来るように
なるということのようです。
根治治療が出来るようになると
良いのに、と思います。
正常眼圧緑内障に対して出来ることは
眼圧コントロールで進行を遅らせるのみ。
本当に残念。
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