身体の初期位置に応じて、脳からの運動指令を脊髄神経回路が変換
平成27年4月30日
科学技術振興機構(JST)
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
詳細は、リンクを参照して下さい。
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ポイント
〇サルの脊髄への電気刺激で引き起こ
される運動が、身体の初期位置で
異なることを発見した。
〇脊髄神経細胞が脳の運動指令を変換し、
多くの筋肉を制御することが判明した。
〇脳梗塞や脊髄損傷で円滑に運動できない
状態の新たなリハビリテーション法
開発への貢献が期待できる。
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JST戦略的創造研究推進事業において、
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 モデル動物開発研究部の
関 和彦 部長らは、霊長類における脊髄
の神経細胞が脳からの運動指令を変換して、
多くの手指の筋肉を制御している
メカニズムを世界で初めて明らかに
しました。
同じ目的を持った運動でも、身体の
初期位置(運動を始める前の身体の位置)
によって使われる筋肉は異なります。
例えば物体をつかむ時、右手の初期位置
が物体の左にある場合は手首や肘の伸筋、
右にある場合は屈筋という正反対の機能を
持つ筋肉が使われています。
この場合、「つかめ」という脳からの
運動指令は、運動する前の手の位置に
応じて適切な筋肉を使うプログラムに
無意識のうちに変換されています。
しかし、この無意識に行われている
運動指令を変換する脳内メカニズムは
これまで不明でした。
関部長らは、脳からの運動指令の変換
には、脊髄神経回路注1)が関連している
と予想しました。
脊髄神経回路では、身体の位置に関する
感覚情報と運動指令が狭い領域に混在して
います。
サルの手の位置を変化させて脊髄を
電気刺激する電極を開発し、初期位置に
応じて異なった筋活動が引き起こされる
ことを見いだしました。
この現象は脳と脊髄の信号を切断した
状態でも観察されました。
この研究成果は霊長類で共通するもの
であり、ヒトの無意識下の運動が
このような脊髄の運動指令の
変換メカニズムを用いて制御されている
可能性を示します。
脊髄が持つ運動指令の変換メカニズムを
再建注2)する新たな
リハビリテーション法の開発につながり、
脳梗塞や脊髄損傷などによる運動失調注3)
の新たな治療法の確立に貢献することが
期待されます。
本研究は、国立精神・神経医療研究
センター 神経研究所 モデル動物開発研究部
の矢口 博彬 研究員と共同で行われ
ました。
本研究成果は、2015年4月29日
(米国東部時間)発行の米国神経科学学会誌
「The Journal of
Neuroscience」に
掲載されます。
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>脳からの運動指令の変換には、脊髄神経
>回路注1)が関連している
想像もしませんでした。
脊髄は単なる信号伝達路であると
思っていました。
かなり高度な変換作業であるはず
なので、脳のどこかの部分で変換が
なされていると考えていたのですが、
以外な結論ですね。
>脊髄が持つ運動指令の変換メカニズムを
>再建注2)する新たな
>リハビリテーション法の開発に
>つながり、脳梗塞や脊髄損傷など
>による運動失調注3)の新たな治療法の
>確立に貢献することが期待されます。
意外に単純な論理で変換が行われて
いるはずです。
さらなる解明に期待したい。
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