メタボのブレーキに肝臓癌を抑制する働きを発見 ~新しい肝臓癌治療法の可能性~
平成26年10月3日
東京大学 大学院医学系研究科
科学技術振興機構(JST)
詳細は、リンクを参照して下さい。
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ポイント
〇タンパク質AIM注1)は細胞中での
中性脂肪の蓄積を阻害するメタボリック
シンドロームのブレーキとして働く。
〇このタンパク質は肝臓の細胞が癌化する
と、細胞の表面に蓄積して癌細胞が除去
されやすくする作用があることを今回
明らかにした。
〇肝臓癌は有効な抗癌剤がなく治療が困難
であるが、今回の発見により、AIMを
利用した新規かつ安全な肝臓癌の治療法
を開発できるようになることが期待
される。
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発表概要
東京大学 大学院医学系研究科の宮崎 徹
教授らの研究グループは、本研究グループ
が発見し、メタボリックシンドロームの
ブレーキとして働くことが知られている
タンパク質AIMが、肝臓に生じた癌細胞
を選択的に除去せしめる働きがあることを
明らかにした。
AIMは血液中に存在するタンパク質で、
通常は脂肪細胞や肝臓の細胞(肝細胞)に
取り込まれ、細胞中での中性脂肪の蓄積を
阻害することによって肥満や脂肪肝の進行
を抑制する、いわばメタボのブレーキとして
働いている。
ところが今回、研究グループは肝細胞が
癌化するとAIMは細胞の中には入って
行かず、代わりに細胞の表面に溜まるように
なることを確認した。
さらに、この表面に蓄積したAIMが
目印となり、細菌などから最前線で体を
守る免疫の一つである補体注2)が活性化
し、癌化した肝細胞を攻撃するようになる
ことをマウスにおいて発見した。
この結果、癌化した肝細胞のみが選択的
に取り除かれて、肝臓癌の発症が抑えられる
のである(図)。
AIMを持たないマウスを作製し、
このマウスに高カロリー食を食べさせて
肝臓に脂肪が蓄積した状態(脂肪肝)にする
だけでマウスは100%肝臓癌を発症した。
しかし、このマウスにAIMを注射すると
肝臓癌の発症を抑えられることが分かった。
近年、メタボリックシンドロームの流行と
共に、脂肪肝が進む結果、肝細胞が癌化し
肝臓癌が発症するケースが注目されている。
ヒトの血液中のAIM値には個人差が
あり、性別、年齢などによっても異なる。
したがってAIM値が低い場合は細胞が
癌化しても上手く取り除かれなくなり、
ヒトにおいても肝臓癌が発症しやすくなる
可能性がある。
以上のことから、血液中のAIM値は
肝臓癌発症のリスクを予測する目印と
なり得ると示唆される。
また、AIM投与による肝臓癌の新しい
治療法を開発できる可能性も高い。
特に、肝臓癌は有効な抗癌剤がなく治療
が困難であるだけに期待は大きく、AIM
は本来よりヒトの血液中に存在する
タンパク質であるため、安全性は高いと
期待される。
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>AIM値が低い場合は細胞が癌化しても
>上手く取り除かれなくなり、
>ヒトにおいても肝臓癌が発症しやすく
>なる可能性がある。
なるほど。
>AIMはHCCの診断と治療に新しい
>大きな可能性を持つタンパク質であると
>期待される。
有効な抗癌剤がなく治療が困難である
こともあり、おおいに期待したい。
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