« シャペロンによるビタミンB12酵素再活性化の分子機構を解明 | トップページ | X 線レーザーで生きた細胞をナノレベルで観察することに成功 »

2014年2月 3日 (月)

悪性脳腫瘍が脳内を動き回り広く散らばるしくみを解明 -新しい治療戦略確立へ-

平成26年1月16日
岡 山 大 学プレスリリース
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
---------------------------------------
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
細胞生理学分野の松井秀樹教授、
道上宏之助教、藤村篤史研究員らの
研究グループは、悪性脳腫瘍が脳内に
拡がるメカニズムを世界で初めて特定
しました。
 
 悪性脳腫瘍では、がん細胞が脳内に
拡がることが多く、そのために手術による
根治が困難となるなど、治療方法が
限られます。
 
 また、他のがんに比べて再発が多い
こともよく知られています。
 
 今回明らかにされたメカニズムに
基づいて治療戦略を立てれば、既存の
治療方法を格段に向上させ、術後の
再発防止もできると期待されます。
 
 本研究成果は 2013 年 11 月 15 日、
アメリカの癌研究専門雑誌
『Neoplasia』に掲載されました。
 
 
-----
 悪性脳腫瘍が脳内組織に広く拡がる
メカニズムにおいて Cyclin G2 という
タンパク質が中心的な役割を果たしている
事を世界で初めて突き止めました。
 
 悪性脳腫瘍は他のがんに比べて、
正常な組織(脳組織)に拡がる性質が強く、
そのため非常に質の悪いがんです。
 
 その原因はいろいろ提唱されていますが、
現在最も有力な説が『低酸素仮説』です。
 
 悪性脳腫瘍では、がん細胞が増えすぎて
血管が破綻し、腫瘍全体に酸素が届き
にくくなります。
 
 その結果、がん細胞の周辺が通常の
脳組織と比べて低酸素状態になり、
これをきっかけとしてがん細胞が動き回る
ようになり、脳内に広く散らばるとする
考えです。
 
 しかし、がん細胞が動くためには
細胞骨格*1という細胞の梁のような構造が
うまく制御されていなければなりませんが、
「低酸素環境」と「細胞骨格の制御」
という 2 つの現象をつなげる因子が
何なのか、全く不明でした。
 
 この研究では Cyclin G2 と呼ばれる
タンパク質がこの 2 つの現象をつなぐ
重要な因子であることを見いだし、
またその働き方を明らかにしました。
 
 すなわち、がん細胞が低酸素に
さらされると、がん細胞内で Cyclin G2
が急激に増え、細胞骨格に関連する
たくさんのタンパク質をがん細胞の移動に
適するようにコーディネイトします。
 
 つまり、サイクリン G2 は低酸素環境
での細胞骨格制御における指揮官の役割を
演じる事を見いだしたのです(図 1)。
 
 さらにこの研究では、Cyclin G2
タンパク質がコーディネイトしている
細胞骨格制御を阻害する薬剤を発見し
(図 2)、実際にマウス脳内でがん細胞
が拡がることを抑制することにも成功
しました。
---------------------------------------
 
 素晴らしい。
 
 がん細胞本当に狡猾ですね。
 
>今回の研究結果では、これらの現象を
>統べる因子として Cyclin G2を世界で
>初めて特定しました。
 
>このことは、悪性脳腫瘍の治療戦略を
>立てる際に新たな展望を提供する
>という点で、非常に大きな成果であると
>言えます。
 
>実際に、上記のメカニズムに基づく
>観点から選択された薬剤がマウスを
>用いた実験で有用であることが
>わかりました。
 
>このメカニズムをさらに解析することで、
>今後患者さんへの臨床応用が可能な薬剤
>を開発し、悪性脳腫瘍の治療成績を
>格段に向上させることが期待されます。
 
 大いに期待したい。

|

« シャペロンによるビタミンB12酵素再活性化の分子機構を解明 | トップページ | X 線レーザーで生きた細胞をナノレベルで観察することに成功 »

医療関連ニュース」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 悪性脳腫瘍が脳内を動き回り広く散らばるしくみを解明 -新しい治療戦略確立へ-:

« シャペロンによるビタミンB12酵素再活性化の分子機構を解明 | トップページ | X 線レーザーで生きた細胞をナノレベルで観察することに成功 »