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2013年11月12日 (火)

大規模電力システムのセンシングデータに基づく 安定性判別技術の開発に成功

平成25年11月11日
京都大学
科学技術振興機構
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
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 薄 良彦 京都大学 大学院工学研究科
講師らのグループは、センシングにより
収集されたデータを用いて、
大規模電力システムの安定性判別するため
の新技術の開発に成功しました。
 
 この技術により電力システムの状態監視
技術の高精度化が可能になるとともに、
様々な社会的要求に応える分散協調型
エネルギー管理システムの実現が期待
されます。
 
 この研究は科学技術振興機構戦略的
創造研究推進事業 CREST等の一環
として行われ、成果は
2011年11月6日(米国東部時間)
に米国学術誌
「IEEE Transactions
 on Power Systems」の
Early Accessにて発表
されました。
 
 
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研究手法・成果
 
 本研究では、大規模電力システムの
センシングにより得られたデータに
基づいて安定性を判別する技術を新たに
開発し、2006年欧州及び2011年
米国で発生した大規模故障の実測データ
への適用によりその有効性を示しました。
 
 本技術では、センシング技術や情報通信
技術などの進展により最近利用可能に
なってきた大規模電力システムにおける
電力の流れ(電力潮流)の時空間変動データ
をコンピュータで処理することにより、
対象とする電力システムの安定性維持及び
喪失を判別します。
 
 ここで用いた処理手法では、力学系理論
に基づく非線形クープマンモード解析注4)
と呼ばれる新手法を採用しており、
このデータ解析手法を用いることにより、
従来困難であった広域大停電に至るような
複雑な電力潮流の解析と電力システムの
安定性判別が初めて可能になりました。
 
 下図は、本研究で開発した技術を
2006年に欧州電力システムで発生した
大規模故障時の電力潮流データに適用した
結果を示しています。
 
 図Aは欧州電力システムの8地域の
電力融通量偏差(実際の電力融通量と
当初計画された融通量との差)の
時系列データであり、電力融通量の複雑な
時間変動を示しています。
 
 図Aの時系列データに本研究で開発した
技術を適用することにより、電力融通量偏差
が発散傾向を有し、電力システムの安定性が
失われていることを明らかにしました
(図Bは図Aの時系列データから得られた
離散スペクトル(固有値)であり、単位円
の外側にあるスペクトルは時系列が発散傾向
(電力システムが不安定)となる証拠に
なっています)。
 
 実際、図Aの時系列データ後の時刻に
行った変電所制御により、欧州電力システム
では故障の波及的伝搬が発生し、その結果、
最終的に欧州電力システムは3地域に分断
される結果となりました。
 
 この適用結果は、データに基づく安定性
判別が力学系理論に基づく本技術により
可能であることを示しています。
 
 なお、発表論文中では、2011年米国
で発生した大規模故障時の電力潮流データ
に対しても本技術を適用し、複雑な
電力潮流の時間変化と故障の波及的伝搬
との関係を明らかにしています。
 
 
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波及効果
 
 本技術はエネルギーシステム、情報処理、
力学系理論の融合により得られた研究成果
であり、その汎用性は高く、
電気エネルギーを扱う電力システム
のみならず、電気エネルギーやガス、熱など
複数のエネルギーを同時に供給する
マルチエネルギーシステムに対しても
適用可能です。
 
 センシング技術や情報通信技術の飛躍的
な進展に伴い、エネルギーシステムにおいて
大量のセンシングデータービッグデーター
の収集が可能になってきており、
このデータを統合・解析しどのように
エネルギー管理に生かしていくかが重要な
技術課題となっています。
 
 このような課題に対して本技術は解決の
糸口を与えるものであり、本技術の波及効果
は大きく、分散協調型EMSの構築に向けた
基盤技術として重要な成果と考えられます。
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 これからの再生可能エネルギーを加えた
分散電源ネットワークを安定運用する為の
必須の技術となるものだと思います。
 
 大いに期待したい。

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