意外な血液細胞の分化モデルの発見
2013/8/30 東京大学プレスリリース
詳細は、リンクを参照して下さい。
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発表のポイント:
◆血液細胞が、自己複製能力を有する
骨髄球性前駆細胞と造血幹細胞から
分化される新しい分化経路を発見した。
◆従来考えられていた造血幹細胞の
分化モデルの学説を覆す、生物学や
医学の教科書を書き換える発見である。
◆血液細胞の分化モデルを正しく理解する
ことにより、新しいメカニズムの
同定につながる可能性がある。
それにより造血幹細胞やある特定の
血液細胞の試験管内での増幅など
再生医療への応用も期待される。
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発表内容:
骨髄の中にある造血幹細胞は、一生涯
にわたって、毎日数千億個もの新しい
成熟血液細胞(主に赤血球、血小板、
顆粒球、Bリンパ球、Tリンパ球)を供給
しています。
このような特徴は、造血幹細胞の
自己複製能・多分化能と呼ばれています。
造血幹細胞からどのように血液細胞が
産生されるか、これまでも研究は精力的に
行われてきていました。
しかしこれまでの研究の多くは、
マウス個体内で白血球抗原CD45を指標
にしたシステムにより顆粒球・Bリンパ球・
Tリンパ球への分化能のみを観察すること
によって行なわれてきました。
一方、赤血球や血小板は核を持たず
CD45を発現していないため、これらの細胞
への分化能力は、試験管レベルの実験など
別の手法を用いて観察されていました。
そうした研究成果のもと、造血幹細胞は、
その多分化能は維持したまま自己複製能
のみを失って造血多能性前駆細胞となり、
さらに骨髄球性前駆細胞と
リンパ球性前駆細胞に分かれ、最終的に
成熟血液細胞を産生するという分化モデル
が教科書的には主流でした。
しかし、この分化モデルは上記のような
問題から必ずしもすべてが実験的に証明
されているものではありませんでした。
この問題を解決するために、まず、
赤血球、血小板、顆粒球、Bリンパ球、
Tリンパ球の5系統の成熟血液細胞が
蛍光色素クサビラオレンジで標識された
マウス(クサビラオレンジマウス)を
作製しました。
このマウスを用いることにより、
マウス体内においてCD45の発現に依存する
ことなく赤血球・血小板を含む5系統
すべての成熟血液細胞を蛍光により判別
できます。
まず、このクサビラオレンジマウスの
骨髄細胞から単一細胞を分取し、
他のマウスに移植しました。
その後、定期的に末梢血を解析すること
により、移植した単一細胞がどの種類の
成熟血球を産生する能力をもっているか
評価しました。
その結果、単一細胞レベルで自己複製能力
のある前駆細胞として、血小板のみを産生
しつづける前駆細胞(megakaryocyte
repopulating progenitor)、
赤血球・血小板のみを産生し続ける前駆細胞
(megakaryocyteerythroid repopulating
progenitor)、
赤血球・血小板・顆粒球のみを産生し続ける
前駆細胞(common myeloid repopulating
progenitor)を初めて同定しました。
また、娘細胞対アッセイ解析法(注2)
を用いて、造血幹細胞が、上記の3種類の
前駆細胞を直接的に産生することを
示しました。
本研究の結果は、造血幹細胞から
成熟血液細胞を産生する最初の過程
において、自己複製能力の喪失は必須
ではないこと、さらに段階的に分化能力を
失っていく従来の血液細胞の分化モデル
とは異なる、これまで知られていなかった
血液細胞の分化経路が存在することを
示しています。
造血幹細胞を起点に、段階的に各血液
細胞が作り出されるという従来の分化モデル
は、生物学や医学の教科書に頻繁に記載
されており、今回の研究成果は、これまでの
学説を覆すもので、新たに教科書を
書き換える成果であるといえます。
血幹細胞は、他の体性幹細胞(注3)
の中でも最も古くから精力的に研究の
なされていた分野であり、他の種類の
体性幹細胞を研究する際にもモデルと
なっています。
本研究成果は、他の体性幹細胞の研究
にも影響を与える可能性があります。
さらに、より正確に造血幹細胞の
分化系図を理解することにより、新たな
分子メカニズムの発見にもつながり、
造血幹細胞やある特定の血液細胞の
試験管内での増幅に加え、胚性幹細胞・
人工多能性幹細胞(注4)から
造血幹細胞を誘導するという再生医療の
発展、血液疾患のメカニズムの解明や
白血病を始めとする難病治療への応用
にも有用であると期待されます。
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最近教科書を書き換える成果がいくつか
出ています。
このことが新たな展開へ繋がると良い
ですね。
>本研究成果は、他の体性幹細胞の研究
>にも影響を与える可能性があります。
期待したい。
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