単一細胞でエピジェネティックな遺伝子の発現状態の変化を追跡する手法を開発しその規則性と制御遺伝子を発見
平成25年7月3日
福井大学
科学技術振興機構(JST)
詳細は、リンクを参照して下さい。
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ポイント
○エピジェネティクスは、細胞の多様性を
生み出す仕組みとして近年注目されて
いる。
○従来エピジェネティックな変化は
細胞集団で追跡していたが、
今回一細胞ごとの比較に成功し、
それが規則性を持って特定の遺伝子
によって制御されることを発見。
○本手法で酵母によって得られた知見を
ヒトに応用することで、関連遺伝子を
同定し、将来的にがんをはじめとする
後天性疾患の解明に期待。
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JST 戦略的創造研究推進事業
(さきがけ)の一環として、福井大学
大学院工学研究科の沖 昌也 准教授らは、
単一細胞のエピジェネティックな遺伝子の
発現状態の変化を可視化・解析する
追跡手法を開発し、その変化に規則性と
制御法を発見しました。
「エピジェネティクス」とは、DNA
塩基配列の変化を伴わずに遺伝子の
発現状態が変化する制御機構で、細胞の
多様性を生み出す仕組みや後天性疾患の
要因を解明するヒントになるものとして
近年注目を集めています。
その機構解明には、個々の細胞の挙動を
追跡することが必要ですが、従来は
細胞集団の平均値でしか発現状態を知る
ことができませんでした。
しかし、細胞は1つ1つ遺伝子の
発現状態が異なるため、単一細胞の
エピジェネティックな発現状態の変化を
知る新たな追跡手法の開発が望まれて
いました。
今回沖准教授らは、出芽酵母をモデル生物
に用いて単一細胞の染色体上の
ヘテロクロマチン領域(多数の遺伝子発現
が抑制された領域)の近くで、遺伝子の
発現状態が一定の規則性を持って
エピジェネティックに切り替わる領域が
あることを発見しました。
そこに、わずかな励起光で測定可能な
蛍光タンパク質になる遺伝子を挿入し、
単一細胞の生涯におけるエピジェネティック
な遺伝子の発現変化の可視化に成功
しました。
さらに、その結果に統計処理の解析を
加え、単一細胞の世代を超えた発現状態
の変化を定量的に解析し、一定の規則性を
持って発現状態が切り替わること、
またその切り替わりをつかさどる
制御遺伝子(GCN5 遺伝子)を
明らかにしました。
この結果は、それらの制御遺伝子の機能
を支配することで、遺伝子の発現に新たな
規則性を与え、例えば寿命などの細胞の
運命を意図的に制御できることを示唆
しています。
今後、本手法により出芽酵母で得られた
栄養状態あるいは放射線などの外的要因が
1つ1つの細胞に与える影響と
その原因遺伝子が特定されれば、将来的に
その知見をヒトにおけるさまざまな
後天性疾患の原因解明に役立てるとともに、
創薬の分野にも新たな方向性を提示する
ことが期待されます。
本研究は、東京大学 生産技術研究所の
小林 徹也 准教授と共同で行い、
本研究成果は、2013年7月2日
(米国東部時間)発行の国際科学誌
「PLOS Biology」に掲載されます。
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エピジェネティックな発現制御機構を
制御する遺伝子?
大きな発見ですね。
>今回、単一細胞での解析によって
>得られた結果は、細胞集団での解析結果
>では明らかにできなかった新たな知見を
>多く見いだしました。
>本成果は、個々の細胞が
>エピジェネティックな発現制御機構
>により多様性を生み出す仕組みは、
>遺伝子レベルの制御によって一定の
>方向性を持たせることが可能である
>ことを示します。
>例えば、今回特定した
>GCN5制御遺伝子の働きを弱める
>薬剤などを用いて機能を支配すること
>により、遺伝子の発現に新たな規則性
>を与え、細胞の運命を操作することが
>可能であることを示唆しています。
新たな規則性を与えることができる?
どの程度具体的に制御できるので
しょうか?
まだ、始まったばかりなので、これから
のことになると思われますが、興味深い
内容です。
これからに期待したい。
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