胚発生過程と化石記録から解き明かされたカメの甲羅の初期進化
2013年7月9日
独立行政法人理化学研究所
詳細は、リンクを参照して下さい。
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「鶴は千年、亀は万年」と、長寿の
代表選手のように言われているカメ
ですが、万年は無理としても種類によって
は百数十年生きた記録もあるそうです。
あの鎧(よろい)をかぶったような
特殊な容姿はいかにもガードが固そうで、
外敵から身を守る“専守防衛”には
もってこいですね。
カメの容姿を特徴づけているのが甲羅
です。
この甲羅がどのような初期進化を経て
今の形になったのかについては、動物学者
の間で19世紀から現在にいたるまで論争が
続いています。
理化学研究所の研究者を中心とした
研究グループは、この謎を解くため、
カメの胚の発生過程に関する組織学的な
観察と、三畳紀の化石記録の調査を行い
ました。
脊椎動物の進化の歴史の中では、
アルマジロやワニ、ある種の恐竜などの
ように、背中に「骨の装甲」を持つ動物
が登場しています。
これら多くの脊椎動物の骨の装甲は
「皮骨」と呼ばれる組織です。
カメの背中の甲羅(背甲)も一種の
骨の装甲で体幹の骨がひと続きとなって
いますが、皮骨と肋骨(ろっこつ)が
進化の過程で融合したのか、そうではなく
皮骨成分が関わることなく肋骨が形を
変えたのか、いまだに分かっていません。
研究グループは、カメ(スッポン)の
胚を使い、組織断片を作製して背甲の
発生過程を詳細に観察し、ニワトリの肋骨
やワニの皮骨性装甲の発生過程と比較
しました。
その結果、カメの胚では最初に肋骨が
形成された後に肋骨を取り巻く骨膜が
拡張し、骨膜の内側で板上の骨の形成が
起きる様子が確認できました。
ワニの皮骨性の装甲は真皮層で形成され
ますが、カメの装甲は皮骨が形成される
真皮層の中ではなく、より深い層にある
結合組織で起きることが分かりました。
これらのことから、カメの背甲は皮骨の
成分を含まずに、肋骨が拡張して
形づくられることが明らかになりました。
また化石標本を調べ、カメと系統的に
近い三畳紀の海生爬虫(はちゅう)類
「シノサウロスファルギス」が、
皮骨性装甲とは別に、その下層に肋骨が
拡張して作られたカメ型の背甲を持って
いたことを突き止めました。
このことも、カメ型の背甲には皮骨成分
が入っていない、という今回の成果を
後押しします。
今後は、「なぜカメの肋骨は背中側だけ
に広がり、それを覆う筋肉が形成されない
のか」とう進化過程の解明が課題に
なります。
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面白いですね。
カメの甲羅の初期進化
思いもよらなかった。
こういう研究も面白いと思います。
何かの役に立つのかと問われれば何とも
心許ないことになりますが、これも立派な
研究。
素晴らしい。
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