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2013年5月19日 (日)

我が国ではアンジーは乳房切除を告白できない【個の医療メール Vol.482】

我が国ではアンジーは乳房切除を
告白できない【個の医療メール Vol.482】
日経バイオテクONLINE Webmaster
宮田 満
 
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 トゥームレイダーの演技で私を魅了して
しまった女優Angelina Jolieが全乳房
切除術を今年2月に行ったことを
ニューヨークタイムズのブログで告白
しました。
 
 彼女の強い決断は、母親が乳がんで
56歳で死亡した家族歴とBRCA1の遺伝子変異
によって、生涯の乳がんリスクが85%と
診断されたゲノム診断によって促され
ました。
 
 BRCA1と2の変異によって生じる家族性
乳がんの問題は欧米だけの問題では
ありません。
 
 2007年に我が国の研究グループによって
発表されたデータでは、日米欧に家族性
乳がんの患者が持つBRCA1と2の頻度に差は
ありませんでした。
 
 我が国でも乳がん患者の26%にBRCA1
もしくはBRCA2の変異が報告されています。
 
 民族差なしに、我が国の女性の問題でも
あるのです。
 
 但し、もしAngieが我が国の国民
だったら、新聞で全乳房切除術を行った
ことを告白できるか?というと、
多分そうではない現実が我が国には存在
するのです。
 
 日本産業衛生学会のシンポジウムで
東京大学医科学研究所の武藤香織教授は
「Angieは日本では告白できない」と断言
していました。
 
 社会や医師の間でのBRCA変異に対する
認知不足や親族が差別扱いされるなども
ありますが、最大の根拠は「遺伝子検査
の結果に基づいて雇用や生命保険などの
契約で差別することを禁じる法律
(遺伝子情報差別禁止法:GINA)が
我が国には存在しない」(武藤教授)こと
だと言うのです。
 
 Angieの子ども達や親戚が米国では
BRCA1変異を持つ可能性があるからといって
差別すれば、刑事罰の対象となるのに
対して、日本では社会的認知もなく、
差別は野放しになっているから、とても
告白などはできないというのです。
 
 Angieは「私の経験を公表することに
よって、私と同じリスクで悩んでいる女性
を支援したかった」とブログで語って
います。
 こうした経験の共有や知識の共有を
遺伝子情報に関して安心して行うことが
できる法的な基盤を我が国は欠いている
のです。
 
 これはまったくもって厚生労働省の怠慢
としか言いようがないのです。
 
 今や今回の学会のように、産業衛生
(悪用すると雇用差別、善用すると
労働者保護)に遺伝子情報が利用できる
寸前のところまで来ている現状をもっと
リアルに認識しなくてはなりません。
 
 労働安全などは政治家の責務でも
ありますので、もっと勉強して早急に
議員立法で構いませんから、
遺伝子差別禁止法を我が国でも制定
しなくてはならないでしょう。
 
 現在、問題となっているOTC遺伝子検査
や全ゲノム情報解の取り扱いなど、全ての
問題はこうした法律を欠いているために、
生じていると考えています。
 
 我が国の先端医療のインフラとして
臨床試験・臨床研究被験者保護法と
遺伝情報差別禁止法の制定は喫緊の課題
であると確信しています。
 
 個の医療の普及に関しても、遺伝情報
によって医療を受け、リスクを克服した
経験の共有は重要です。
 
 我が国でも早く、Angieのような告白が
できる環境を整備しなくてはなりません。
 
 米国でGINAによって健康保険契約の
差別禁止が施行されたのが09年12月、
雇用差別禁止が施行されたのが11年1月
です。
 
 米国でも2年前にはAngieの告発は難し
かったのです。
 
 GINAの制定は大変な議論となりました。
 
 最初に米国議会に提出されたのは1995年、
大統領が署名して発行したのが2008年です。
 
 実に13年の議論が必要でした。
 
 我が国ではもはやウェブ上で
OTC遺伝子検査がどんどん広告されて
います。
 また厚労省の地下のコンビニでも
GeneLifeというOTC遺伝子検査キットが
販売されています(武藤教授)。
 
 こうした状況を踏まえて、皆さん我が国
でも遺伝子情報差別禁止法を是非とも
早急に検討しなくてはならないと考えます。
 
 一刻を争います。
 
 具体的なトラブルを待つ、傍観は
もう許されません。
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 全く同感です。
 よく考えてみてください。
 
 どうしてこうも日本の政治家は勉強不足
なんでしょうか?
 
 近眼政治家ばかりのように思える。
 
 
>日本産業衛生学会のシンポジウムで
>東京大学医科学研究所の武藤香織教授は
>「Angieは日本では告白できない」と
>断言していました。
 
>社会や医師の間でのBRCA変異に対する
>認知不足や親族が差別扱いされるなども
>ありますが、最大の根拠は「遺伝子検査
>の結果に基づいて雇用や生命保険などの
>契約で差別することを禁じる法律
>(遺伝子情報差別禁止法:GINA)が
>我が国には存在しない」(武藤教授)
>ことだと言うのです。
 
 政治家は世界のニュースを見ていない
のでしょうか?
 
 日本は先進国なのでしょうか?
 
 米国ですらGINA施行まで13年の議論が
必要だったようです。
 (日本では議論すらされていない)
 
 でも現在は違います。
 もう直近の問題なのです。
 一刻の猶予も出来ない状況です。
 
 怠慢は許されません。
 
 喫緊の課題は山積しています。
 
 何が優先順位の高い課題なのかを
正しく評価出来る本当の政治家に
出てきて欲しいものです。

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