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2013年5月22日 (水)

かごに閉じ込められた生体分子が語る貴重な情報

10 May 2013
RIKEN Research Highlights
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
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 呼吸から生殖まで、自然界のあらゆる
生命活動はタンパク質になしでは実現
できない。
 
 タンパク質は生命維持に欠かすことの
できない多くの化学反応を制御する働き者
である。
 
 しかしながら、タンパク質がどのように
してそうした役割を果たすのか、あるいは
その役割を果たせずどのようにして疾患を
引き起こすのかを解明する研究には、
依然として困難も多い。
 
 このたび、東京大学の藤田誠教授、
高輝度光科学研究センター(JASRI)の
熊坂崇副主席研究員および理研放射光
科学総合研究センターの高田昌樹副
センター長を中心とする学際研究チーム
によって、タンパク質を巨大な構造の中に
1つずつ閉じ込める技術が開発された1。
 
 この技術は、こうした研究を容易にする
だけでなく、タンパク質の工業利用の
可能性を広げるものと期待される。
 
 タンパク質分子はその多くが巨大である
ため、研究の大きな障害となっている。
 
 タンパク質は長鎖の天然ポリマーで、
折り畳まれてかさ高い三次元構造をとる
が、その構造はしばしばきわめて複雑で、
従来の化学的手法で読み解くことは
難しい。
 
 構造がよくわかっているかご状の分子
の中にタンパク質分子を1つずつ閉じ込める
ことができれば、研究は単純になるはず
だが、ここでもまたタンパク質分子の
大きさがハードルとなってしまう。
 
 このような大きな構造物を捕らえるため、
研究チームは、自己組織化して
タンパク質分子を取り込む、巨大な分子の
かごを考案した。
 
 このかごは12の面を持ち、
パラジウムイオンと有機分子からなる
配位子の2種類の構成要素からなる。
 
 パラジウムイオンは各面の中心に位置
し、有機配位子は隣り合う
パラジウムイオンをつないで辺を作って
いる。
 
 このかごが自己組織化によって
組み上がり、すべての構成要素が
しかるべき位置におさまると、その内部
には直径6.3 nmの空洞ができる。
 
 これは多くのタンパク質を収容するのに
十分な大きさだ。
 
 この手法を試すために研究チームが
選んだのは、ユビキチンというタンパク質
だった。
 
 ユビキチンは、植物や動物、その他
多くの生物の細胞に共通して見られる
調節タンパク質で、よく研究されて理解も
進んでいる。
 
 この分子はまた、直径約4 nmと大きさも
ほどほどで、かごの中に容易におさまる。
 
 ユビキチンを閉じ込めるため、
研究チームはまず、ユビキチンを1つの
有機配位子に化学的に結合させた。
 
 そこにパラジウムイオンを加え、さらに
配位子を足すと、最初の配位子を
中心にして配位子が自己組織化し、かごが
組み上がった(図1)。
 
 研究チームは複数の測定法で調べた
ところ、それぞれのかごの中には
タンパク質分子が1つずつ閉じ込められて
いることが確認された。
 
 その一例が超遠心分析による分子量測定
で、得られた約26,300という測定値は、
ユビキチン1分子が詰まったかごの分子量
の理論値25,300にきわめて近いもの
だった。
 
 高田副センター長は、タンパク質と
1つ目の有機配位子を共有結合で
結びつけてからかごの残りを形成させる
ことにより、確実かつ強固にタンパク質
をカプセル内に封じ込めることができた
のだと説明する。
 
 有望視されているかごの用途の1つが、
X線結晶学への応用だ。
 
 X線結晶学は、X線ビームを用いて結晶化
したタンパク質の構造を調べる強力な
分析手法であり、タンパク質の構造を
時には個々の原子のレベルまで詳細に
画像化することができる。
 
 ところが、タンパク質のように大きくて
球形をとることの多い構造を結晶化させる
のは非常に時間がかかり、試行錯誤を
繰り返さなければならない。
 
 重要なタンパク質でも、いまだに結晶化
に成功していないものは少なくないのだ。
 
 研究チームは、簡単に結晶化する
かごの中にタンパク質を閉じ込めること
で、この問題を乗り越えられることを
示した。
 
 また、糖鎖を結合させた有機配位子を
用いてかごの内面を加工したところ、
この糖鎖は閉じ込められたタンパク質の
周りをやさしく包みこみ、タンパク質自体
の構造に影響を及ぼすことなく、分子を
動きにくくしたのである。
 
 このかごは巨大で、通常の研究室で
使われるような標準的なX線回折計では
分析が困難だが、理研大型放射光施設
SPring-8の強力かつ安定なX線ビームを
使えば、より詳細な結晶構造を得ること
ができる。
 
 それでも、かごの中のユビキチンは
完全に固定されているわけではないため、
従来の分析法ではぼんやりとした画像しか
得られなかったが、研究チームは、
最大エントロピー法(MEM)という不明瞭
な構造の処理を行う強力なプログラムを
併用することで、捕捉されたタンパク質
の位置を特定することに成功した。
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>タンパク質は生命維持に欠かすことの
>できない多くの化学反応を制御する
>働き者である。
 
>しかしながら、タンパク質がどのように
>してそうした役割を果たすのか、
>あるいはその役割を果たせず
>どのようにして疾患を引き起こすのかを
>解明する研究には、依然として困難も
>多い。
 
 タンパク質の構造を正確に知ることは
非常に重要なことなのです。
 
 今回、一つのタンパク質分子をかごに
閉じ込めることに成功出来たと言うのは
素晴らしいことだと思います。
 
 これで今までできなかった分子の
構造を解析出来るようになっただけで
なく、その他の応用も考えられるよう
です。
 
 今後の発展に大いに期待したい。

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