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2013年5月24日 (金)

病原性カビの侵入を許してしまった植物の奥の手とは?

2013年5月21日 京都大学
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
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 高野義孝 農学研究科准教授、晝間敬
(ひるまけい) 日本学術振興会特別研究員
(現マックスプランク研究所)らの
研究グループは、植物病原性カビの侵入を
許した後、植物がその後のカビの
拡大・蔓延をブロックする抵抗性に必要な
因子の発見に成功しました。
 
 この研究成果は2013年5月21日
(米国東部時間)に米国科学誌
「米国科学アカデミー紀要
(Proceedings of the National
Academy of Sciences)」の
オンライン版に掲載されました。
 
 
研究の背景
 
 病害による世界の農業生産被害は
10~20%にまで達しており、これは8億人
の食糧に値します。
 
 そして、この植物病害の80%以上は、
糸状菌(カビ・菌類)によって引き起こ
されており、植物病原性カビの攻撃から
作物を保護することは、非常に重要です。
 
 植物にとって、植物病原性カビは大きな
脅威ですが、しかし、ある特定の
植物病原性カビについて考えた場合、
そのカビがどんな植物にでも、病気を
引き起こせるということはありません。
 
 植物は自身に感染できない(つまり自身
を宿主としない)病原性カビに対しては、
非常に強い抵抗性を示します。
 
 この場合、病原性カビにとって、
その植物は非宿主植物と呼ばれ、
非宿主植物が発揮する、その強固な抵抗性
は非宿主抵抗性と呼ばれます。
 
 もし、植物が非宿主抵抗性を発揮
できない場合、植物は外界に存在する
多数の潜在的病原体に対してなす術もなく
侵略されることは明らかで、非宿主抵抗性
は植物生存の根幹を支えるものと位置
づけられます。
 
 では、なぜ、非宿主抵抗性は非常に強固
な抵抗性なのでしょうか?
 
 その理由は、この抵抗性の重層的構造
にあります。
 
 病原性カビは植物に感染するために、
まずは、とにかく植物の中に侵入しないと
いけませんが、非宿主植物はこの侵入を
防ぐ抵抗性システムを持っています。
 
 この侵入阻止型の抵抗性は、
侵入前抵抗性と呼ばれます。
 
 しかし、万が一、病原性カビが
侵入前抵抗性を突破し、植物がその侵入を
許してしまったとしても、
即、病原性カビの勝利というわけでは
ありません。
 
 非宿主植物は、その後のカビの
拡大・蔓延を防ぐための、奥の手を持って
います。
 
 このカビの侵入を許してしまった時に
必要とされる抵抗性は、「侵入後抵抗性」
と呼ばれます(図1)。
 
 この侵入後抵抗性は、植物自身の細胞死
をともなう、文字通り、肉を切らせて骨を
絶つような、最後の砦に位置づけられる
強力な抵抗性です。
 
 しかし、侵入後抵抗反応時に、植物が
どのようにして病原性カビの拡大を阻止
しているのかは、十分には理解されて
いませんでした。
 
 
研究成果の概要
 
 今回、研究グループは、モデル植物で
あるシロイヌナズナの非宿主抵抗性を研究
することによって、シロイヌナズナが
炭疽病菌と呼ばれる病原性カビに対して
発揮する侵入後抵抗性において、
トリプトファンを起点とする抗菌物質合成
とグルタチオンの機能が、非常に重要な
役割を担っていることを突き止めました
(図1、図2)。
 
 これまで、この侵入後抵抗性において、
何が病原性カビの蔓延をブロックしている
のか、不明だったのですが、今回の研究
により、トリプトファンを起点して合成
されるインドールグルコシノレートが関連
する抗菌物質、および、カマレキシンと
呼ばれる抗菌物質が重要な役割を果たして
いることを明らかにしました。
 
 また、グルタチオンがこの抗菌物質合成
などに関与し、侵入後抵抗性に必要である
ことを明らかにしました。
 
 現在、耐病性を賦与された様々な作物が
生産されていますが、その耐病性の
ほとんどは抵抗性遺伝子(R遺伝子)と
呼ばれる遺伝子に依存しています。
 
 重要なポイントとして、研究グループは、
非宿主植物が示す侵入後抵抗性に必要な
因子として今回明らかにした因子は、
炭疽病菌に対して発揮されるR遺伝子
依存型抵抗性においても必要であること
を示しています。
 
 炭疽病菌は、600種以上の農作物に感染
し、世界中で深刻な被害をもたらしている
植物病原性カビです。
 
 侵入後抵抗性およびR遺伝子抵抗性は、
植物細胞自身の細胞死をともなう
抵抗性であり、過敏感反応とも呼ばれ
ます。
 
 病原性カビによっては、生きた植物
においてしか生存できないものあり、
この場合、植物細胞の死はそれらのカビに
致命的な影響を与えることは明らかです。
 
 ところが、炭疽病菌は死んだ植物組織内
においても増殖可能であり、過敏感反応
における、細胞死そのものの重要性
については、議論がわかれるところでした。
 
 本研究の成果は、細胞死よりも、
抗菌物質生産こそが、その抵抗性の本質
であることを強く示唆しています。
 
 非宿主抵抗性は頑強な抵抗性であり、
そのメカニズムの解明に基づいた新たな
作物保護技術の開発には大きな期待が
寄せられています。
 
 今回、明らかにした侵入後抵抗性に
必要な因子について、さらに詳細な研究を
おこなうことで、新たな防除薬剤の開発
および耐病性作物の作出に貢献できる
ことが期待されます。
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>病害による世界の農業生産被害は
>10~20%にまで達しており、これは
>8億人の食糧に値します
 無視出来ない被害ですね。
 
 興味深い研究だと思います。
  命の仕組みは本当に複雑です。
 
 動物の細胞でも、個を守るために
細胞死を選択する仕組みがあったと
記憶しています。
 
 植物に対するこのような研究も大事
ですね。
 
 今後に期待しています。

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