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2013年5月28日 (火)

組み換えクモの糸を織ったのは82歳のお婆さん【日経バイオテクONLINE Vol.1887】

組み換えクモの糸を織ったのは
82歳のお婆さん
【日経バイオテクONLINE Vol.1887】
Webmaster 宮田 満
 
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 「QUMONOS」とブランドされた
このドレスは、世界で初めてクモの糸で
織られた服なのです。
 
 野外で蜘蛛の巣を集めて、バイオリンの
弦やハンモックにした例は知っていますが、
今回のドレスは遺伝子操作で工業的に生産
された組み換えクモの糸で創られています。
 
 暇人の趣味とは違い、これは絹に続く
たんぱく質性のまったく革新的な繊維と
その産業化の誕生を示しているのです。
 
 しかも、生分解性なのにクモ糸は
炭素繊維より強靱で、強靱さ故に
ほとんどの合成繊維が失ってしまう弾力性
をも兼ね備えているのです。
 
 耐熱性もあり、バイオプラスチックで
どうしても車のボンネットを製造
できなかった限界を打破することも可能
です。
 
 実際、今年10月31日にはトヨタ系の部品
メーカーである小嶋プレス工業と合弁事業
で、組み換えクモの糸の試験工場が完成
いたします。
 
 最初は強化プラスチックのガラス繊維を
代替するスーパー強化プラスチックの商業化
がリードするとは思いますが、新しい繊維の
用途は無限大です。
 
 繊維、工業マテリアル、膜、人工血管など
ほとんど産業の全領域に亘って新製品を
生み出す力を秘めています。
 
 より軽く、より強靱で、環境に優しい
自動車、飛行機、建物などの構造物、
家具や生活関連商品、農業関連製品など、
QUMONOSを起点にイノベーションの連鎖が
始まろうとしています。
 
 スパイバーはクモの糸の誘導体を
デザインする原理を掴みつつあります。
 
 遺伝子組み換えでアミノ酸配列を変えた
多数のクモ糸の誘導体を生産し、糸を引き、
物理化学的な特性を調べる、このサイクル
を2年前からくるくる回している企業は
スパイバーしか、世界に存在しないのです。
 
 今や自然界のクモ糸の多様性に加えて、
望みの特性を持つクモ糸を意図して
デザインできるまで、技術力を高めて
います。
 
 クモ糸だけにもはや止まらず、
たんぱく質性の人工線維をデザインし、
工業化する技術力を密かに蓄積して
いるのです。
 
 炭素繊維は猛烈な二酸化炭素を製造工程
で発生しますが、QUMONOSは常温常圧で
発酵生産によって、製造される
環境フレンドリーな素材でもあります。
 
 新興国の成長が環境破壊で最終的には
減速せざるを得ない、ジレンマを
この新しいクモの糸は解決する可能性が
あるのです。
 
 石油ではなく、バイオマスを活用した
産業モデルが描けるかも知れません。
 
 少なくとも、これ以上、土壌で分解
できないプラスチックや合成繊維に依存
しなくても良い。
 
 つまり生産すれば生産するだけ、
環境負荷が増えるという化石燃料を消費
する近代産業のジレンマを断ち切れる
新しい産業の産声が聞こえてくるでは
ないですか?
 
 廃棄物処理のコストを見ないふりをして
成長した無責任な原子力産業とは対極に
あるイノベーションであると思います。
 
 米国の国防総省も含め、今までクモの糸
生産には多額の資金と米Dupont社や多数の
ベンチャー企業が挑戦しました。
 
 しかし、いずれも見事に失敗し、誰も
組み換えクモの糸で創ったドレスなど
想像もできなかったのです。
 
 実際の青いドレスは300gの組み換え
クモの糸(今申請すればギネス記録です)
で織られています。
 
 手触りはちょっと硬質なタイシルク
のよう。
 
 染色は糸の段階で行っており、金属光沢
のブルー(イタリアのサッカーチームの色、
アズーリ)は深みのある輝きを放って
います。
 
 40デニールの太さは、ドレスを織るのに
必要な量の糸をぎりぎり確保する計算で
決まりました。
 
 だがそう簡単にクモの糸ドレスはまだ
誕生しなかった。
 
 実はこの糸では機械織りができない
ということが間際に発覚したのです。
 
 この壁を突破したのが、スパイバーが
存在する山形県庄内地方の首都、鶴岡の
実力です。
 
 シルクロードの東端に位置する鶴岡は
養蚕、紡糸、紡績、絹織物産業が垂直統合
している我が国の都市の北限でもあります。
 
 なんと82歳のお婆さんが手織りで青い
反物を織り上げてしまったのです。
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 本当に素晴らしい。
 
 クモの糸はその強靱さだけでなく
 
>生産すれば生産するだけ、
>環境負荷が増えるという
>化石燃料を消費する近代産業の
>ジレンマを断ち切れる
 可能性を秘めたものなのです。
 
>環境フレンドリーな素材
 なんです。
 
>廃棄物処理のコストを見ないふりをして
>成長した無責任な原子力産業とは対極に
>あるイノベーションであると思います。
 
 心から今後の発展に期待したい。
 日本発のベンチャーです。
 
 この記事の続編になります。
2013年5月27日 朝日新聞デジタル

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