想定外を生き抜く力~ 大津波から生き抜いた釜石市の児童・生徒の主体的な行動に学ぶ ~
No.107(2012冬号)
消防科学総合センター
詳細は、リンクを参照して下さい。
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1.東日本大震災は「やむをえない」
出来事だったのか?
「想定外であり、やむを得なかった」で
片付けてしまうことは間違っていないか。
そもそも、事前の十分な対策と
津波襲来時の十分な対応はできていた
のか。
その上で「やむを得なかった」という
ことなのか。私には疑問に思えて
ならない。
2.想定にとらわれすぎた防災
~二つの意味での「想定」~
津波の場合は、確かな記録に残る
既往最大の津波を想定外力の規模として
定めている。
三陸沿岸では、それは1896(明治29)年の
明治三陸津波および1933(昭和8)年の
昭和三陸津波ということになり、これらの
レベルの津波に耐え得る防潮堤や防波堤
などの施設整備を行ってきた。
今回の大津波はその想定外力を超えた
ということであり、そういう観点から
いえば「想定外」だったということに
なる。
では、今回の大津波災害で、我々は
なぜここまで大きな犠牲を払わなければ
ならなかったのか。
それは、「想定が甘かった」から
ではない。
行政も住民も、そして専門家も含めて
「想定にとらわれすぎた」という
「落とし穴」があったと言ってよかろう。
3.津波から生きながらえるための
「避難3原則」
(1)想定にとらわれるな
(2)その状況下において最善を尽くせ
(3)率先避難者たれ
4.災害に柔軟に対応できる「姿勢」
を与える防災教育
今回、釜石の子どもたちは、見事な対応
を見せてくれた。
彼らがこのような行動をとることが
できた背景には、彼らに対して実施して
きた防災教育の手法が、従来とは異なる
手法であったことが大きく作用している
と考えている。
では、従来の防災教育とどう異なるのか。
何が重要かというと、「姿勢の防災教育」
であると考えている。
子どもたちに伝えたのは、津波の知識や
恐怖ではない。
自分の命を守ることに主体的であり、
できる限りの最善を尽くすという姿勢の
重要性を説いたのだ。
5.「津波てんでんこ」の真意を再考する
釜石の子どもたちに行ってきた
「姿勢の防災教育」の集大成として、
津波防災教育の授業の最後に、
私は子どもたちに次のように問いかけた。
「君たちは教えたとおり逃げてくれる
と思うが、君が逃げたあと、お父さん、
お母さんはどうするだろう?」。
すると、子どもたちの表情は一斉に
曇った。
お父さんやお母さんは自分を心配して
迎えに来て、その結果どうなるかという
ことも想像できるからだ。
私は続けてこう話した。
「今日家に帰ったら、
『いざというときは僕は必ず逃げる
からね』と、信じてくれるまでちゃんと
伝えるんだ。
お父さんやお母さんは、君たちが逃げて
くれると信じられなければ、きっと迎えに
来てしまうよ」。
一方、父兄に対しても「お子さんが
『津波が来るときには、僕は必ず逃げる
から』と言うと思う。
しっかり子どもたちの訴えを受けとめ、
『この子は絶対に逃げてくれる』という
確信がもてるまで、子どもの話を聞いて
あげて欲しい。
そして、確信が持てたら、
『わかった。ちゃんと逃げるんだよ。
お母さんも逃げるからね。
あとで必ず迎えに行くからね』と
言葉をかけてあげて欲しい」と話した。
6.「社会対応力」で想定外を生き抜く
釜石の子どもたちは、想定を超える災害
に対しては、ハード施設に依存せず
「社会対応力」で備えることの重要性を
我々に教えてくれた。
これらのことが「地域知」として常識化
され文化となり、世代間に受け継がれて
いくことが重要である。
それは、一人一人が災害に対する賢さ
を備えた真に強い社会を形成し、想定外
を生き抜いていくということに
ほかならない。
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「姿勢の防災教育」
良い教育だと思います。
ある想定のもとに防災計画を立て実施
する。
それはそれで良いが、実際の災害は
想定外となり得るということを認識して
おかなければいけない。
想定にとらわれすぎてはいけない。
想定は、ある仮定のもとに実施されて
いることを知っておかないといけない。
災害時には、ここに避難すれば安全
だと単純に考えてはいけない。
頭には入れておくとして実際の状況
をしっかり把握しないといけないのだ。
想定内なのか、そうでないのか?
主体的でなくてはならない。
今回の「この教育は」決して風化
させてはならないと思う。
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