組織形成における細胞分裂の新しい役割の発見
平成25年1月14日
独立行政法人 理化学研究所
詳細は、リンクを参照して下さい。
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◇ポイント◇
・組織の潜り込み運動(陥入)の様子を
高精度なライブセルイメージングで観察
・3つの性質の異なるメカニズムが補完的
かつ協調的に作用し、安定した組織形成
を実現
・細胞分裂が形態形成に関わる新たな
知見により、巧妙な発生の仕組み解明に
新たな一歩
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理化学研究所は、ショウジョウバエの
気管形成過程をライブセルイメージング
※1で詳細に観察することで、気管原基
(気管のもとになる上皮細胞※2シート)
の細胞が細胞分裂時に球状になることが、
組織の構造的な不安定化を引き起こし、
シート状の気管原基から管構造へと
ダイナミックに形態を変化させることを
発見しました。
これは、発生・再生科学総合研究
センター形態形成シグナル研究グループの
近藤武史基礎科学特別研究員と
林茂生グループディレクターの成果です。
1つの受精卵から私たちの複雑な体が
でき上がる発生は、細胞が多様化し、
機能的な組織が構築される巧妙なプロセス
です。
発生において、細胞はまず上皮細胞
となってシート状の組織を作り、続いて
内側への潜り込み運動(陥入※3)が
起きます。
この陥入をきっかけに2次元だった組織
が3次元の複雑な形態へと変化し、器官や
組織を作り出します。
陥入は、全ての高等動物の発生に共通
する、器官や組織形成のために不可欠な
イベントです。
しかし、陥入の詳しいメカニズム
については不明でした。
ショウジョウバエの胚発生では
上皮細胞シートの一部を占める気管原基が
中央部分から陥入して管構造を作り、気管
を形成します。
そこで林グループディレクターらは、
上皮細胞の動きと陥入の仕組みを詳しく
調べるために、ライブセルイメージングで
正常胚や変異体胚の気管形成過程を観察、
解析しました。
すると、円柱状である上皮細胞が
細胞分裂期に一時的に球形に形を変える
ことが、ひしめき合って安定していた
上皮細胞のバランスを崩壊させ、一気に
陥入を加速させる要因であることが
分かりました。
また、気管形成というイベントは、
球形化だけが原動力ではなく、分化、増殖
に関わるFGFシグナル※4、EGFシグナル※5
も関与していることが分かりました。
つまり、生物は、補完的かつ協調的に
作用する複数のメカニズムを備え持つこと
で安定した形態形成を実現していることが
明らかになりました。
特に分裂期進入に伴う細胞の球形化が
形態形成を積極的に推進するという知見
は、発生において細胞分裂が果たす
新しい役割の発見といえます。
本研究成果は、英国の科学雑誌
『Nature』オンライン版
(1月13日付け:日本時間1月14日)に
掲載されます。
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DNAの情報を元にして、1つの受精卵から
分裂を繰り返し、多様な細胞たちができて
機能的な組織ができ上がっていく、
生命の神秘ですね。
マクロ的には理解しているようですが、
実は何も分かっていないに等しいのが現状。
高精度なライブセルイメージングによって
今回の知見が得られた。
まだまだ、生命の神秘解明への
ほんの一歩と思う。
生命は本当に良く出来ていると思う。
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