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2013年1月12日 (土)

細胞の熱ストレスを鎮める

細胞が熱ショックを受けると、
最近同定された「火消し」分子が、
熱応答タンパク質を細胞核に
運び込んで細胞の損傷を防ぐ。
11 January 2013 理化学研究所
Research Highlights
 
詳細は、リンクを参照して下さい。
 
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 火災が起きたら消防隊が送り込まれる
ように、細胞では、急激な温度変化
(熱ショック)などの環境ストレスを
受けると、それに対応して一群の
熱ショックタンパク質(HSP)が配備
される(図1)。
 
 熱ショックは、タンパク質を変性させ
凝集させることで、細胞の恒常性
(ホメオスタシス)を乱すストレス要因
である。
 
 HSPは、細胞のホメオスタシスを維持
するのに不可欠な分子シャペロンで、
熱ショックなどの細胞ストレスに反応して
発現が亢進し、ストレスが誘発する様々な
ダメージから細胞を守っている。
 
 細胞がストレスを受けると代表的な
分子シャペロンHsp70は核内に運び込ま
れることが30年も前から知られていた。
 
 しかし、Hsp70が核に運ばれる
分子メカニズムや分子シャペロンの
核内機能の重要性は、これまで明らかに
されていなかった。
 
 大半のタンパク質の核-細胞質間輸送は、
インポーチンβファミリーと総称される
運搬体タンパク質群によって担われると
考えられているが、インポーチンβが媒介
する核内輸送にエネルギーを供給する
タンパク質RanGTPの活性は、
熱ショックストレス条件では低下する。
 
 このため、核内へのHSP輸送を促す
分子機序はこれまで知られていた
分子機構とは異なる可能性があった。
 
 理研基幹研究所(埼玉県和光市)の
細胞生物学者、今本尚子主任研究員が
率いる研究チームはこのたび、
分子シャペロンHsp70が核に運ばれる
分子機構と、Hsp70の核内機能が細胞の
生死を左右するほど重要性であることを
はじめて明らかにした。
 
 同チームはCell誌に最近掲載された論文1
で、熱ショックストレスが誘導する
新たな核-細胞質間輸送経路を同定したこと
を報告している。
 
 この輸送経路は、これまで知られて
いなかった新タンパク質が運搬体として
HSPに結合し、核膜上の孔を通してHSPを
核内に運び込むことが明らかになった。
 
 インポーチンなどの運搬体分子は、
水を強くはじく性質(疎水性)を持つ。
 
 研究チームはこの事実を踏まえて、
Hsp70と結合する運搬体の単離を試みた。
 
 熱ショックを受けた細胞の抽出液から、
運搬体分子が“疎水性”である性質を
踏まえ、輸送活性を指標に生化学的に
精製していった。
 
 その結果、ヒト第11染色体上の遺伝子
にコードされるタンパク質が同定され、
このタンパク質を江戸時代の消防隊に
ちなんでHikeshiと命名した。
 
 さらなる研究の結果、Hikeshiタンパク質
の発現レベルが熱ショックに反応して
2~3倍に上昇すること、HikeshiがHsp70と
結合するとともにヌクレオポリンとも
相互作用すること、またHikeshiとHsp70
との結合がコシャペロン
(シャペロン補助因子)による調節を
受けることが明らかになった。
 
 Hikeshiは、ATPが結合したHsp70分子
にのみ結合し、ATPが分解されてADP
となる過程(エネルギー放出反応)に
伴って両者は解離する。
 
 こうした証拠に基づき、研究チームは、
Hikeshiが媒介する輸送に必要な
エネルギーが、インポーチンβファミリー
が媒介する輸送に見られるような
RanGTPのサイクルではなく、Hsp70の
ATP-ADPサイクルに由来するのではないか
という説を唱えている。
 
 さらに研究チームは、HikeshiがHsp70
の核-細胞質間輸送に必要十分であること、
そして熱ショックによる損傷から核を
回復させることも明らかにした。
 
 実際、Hikeshiなしでは熱ショックを
受けた細胞は生存できないことが確認
されている。
 
謎の解明が新たな謎を呼ぶ
 得られた知見から、細胞は、正常状態と
熱ショックストレス条件とで異なる
核-細胞質間輸送経路を活性化させること
が明らかになった。
 
 正常状態が優勢な場合は、
インポーチンβ分子が核-細胞質間の
タンパク質輸送を媒介するが、
熱ショックを受けるとこの経路は
不活性化される。
 
 このとき、細胞はHikeshi経路に
切り替えることによってHsp70を核内に
蓄積し、熱ショックストレスが引き起こす
細胞損傷に対処するのである。
 
 しかしながら、細胞が
核-細胞質間輸送経路を切り替える仕組み
については、まだわかっていない。
 
 また、Hsp70がストレス時に核の中で
働くことが細胞の生死を左右するほど
重要であることが30年の時を経て
はじめて明らかになった。
 
 Hsp70が核の中で具体的に何をしている
のかはこれまで全く解析されていない問題
である。
 
 Hikeshiが熱ショックストレス条件で
Hsp70以外の積荷を核内に運んでいる
可能性もある。
 
 研究成果から、
「細胞がストレスダメージからどのような
分子機構で回復するのか」といった、
細胞生物学上の重要な問題が新たに提起
される。
 
 「切り替え機構の研究が進めば、
核-細胞質間輸送と分子シャペロンという
2つのシステムの調節に関して確かな理解
が得られるはずです。
 
 Hikeshiが媒介する核-細胞質間輸送の
活性化の基盤となる分子機序も興味ある
問題ですね。
 
 Hikeshiの機能を明らかにしていくと、
細胞がストレスダメージから回復する
分子機構がわかってくると考えています。」
と今本主任研究員は語っている。
---------------------------------------
 
 興味深い研究だと思います。
 
>細胞がストレスを受けると代表的な
>分子シャペロンHsp70は核内に運び
>込まれることが30年も前から
>知られていた。
>しかし、Hsp70が核に運ばれる
>分子メカニズムや分子シャペロンの
>核内機能の重要性は、これまで明らかに
>されていなかった。
 
 このうち今回明らかに出来たのは、
Hsp70が核に運ばれる分子メカニズム
と分子シャペロンHsp70の働きですね。
 
 新しく発見された蛋白Hikeshiが作用
していること。
 
>HikeshiがHsp70の核-細胞質間輸送に
>必要十分であること、
>そして熱ショックによる損傷から
>核を回復させることも明らかにした。
>実際、Hikeshiなしでは熱ショックを
>受けた細胞は生存できないことが
>確認されている。
 
Hsp70の重要性。
 
>また、Hsp70がストレス時に核の中で
>働くことが細胞の生死を左右するほど
>重要であることが30年の時を経て
>はじめて明らかになった。
 
 Hikeshiと分子シャペロンHsp70
すごい働きをするんですね。
 
>「細胞がストレスダメージから
>どのような分子機構で回復するのか」
 興味あります。
 
>「切り替え機構の研究が進めば、
>核-細胞質間輸送と分子シャペロン
>という2つのシステムの調節に関して
>確かな理解が得られるはずです。
 
 期待しています。

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