未分化細胞の糖鎖マーカーを17種類発見【個の医療メール Vol.449】
未分化細胞の糖鎖マーカーを17種類発見
【個の医療メール Vol.449】
Wed, 19 Sep 2012
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究極の個の医療ともなるiPS細胞研究
開発で、極めて重要な意味を持つのは
全能性を示す未分化マーカーです。
通常、胚性幹細胞(ES細胞)や
iPS細胞の細胞表面の未分化マーカーとして
使用されるのはいずれも糖鎖抗原である
SSEA-1/5、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、
TRA-1-81、GloboHなどです。
O結合型糖鎖であるTRA-1以外は、
グリコシルスフィンゴリピッドの糖鎖
であります。
世界中の研究者が、生化学的手法で
特異性が高い未分化マーカーを探索中。
しかし、これがなかなか進まず、既存の
6種の糖鎖マーカーでもうほぼ出尽くした
といった研究の沈滞というか、
これでもう良いという慣れ合い状態に
なっていました。
しかし、これらの未分化マーカーを
いくらみ合わせても、必ずしもスパッと
未分化な全能性を保持したiPS細胞を
定義することは容易ではありません。
こうした研究の慣れというか、
行き詰まりを破る研究が昨日
(2012年9月18日)、鹿児島市で開催中の
日本糖質学会で、北海道大学先端生命科学
研究院次世代ポストゲノム研究センター
複合糖質機能化学グループの藤谷直樹特任
助教によって発表されました。
理化学研究所のバイオリソースセンター
と九州大学大学院との共同研究です。
藤谷助教らのグループは、ヒトの18種類
の細胞(正常細胞、がん細胞、iPS細胞、
ES細胞)の細胞表面糖鎖を網羅的に
悉皆解析、糖鎖の種類と出現頻度を
クラスター解析したところ、ES細胞と
iPS細胞など全能性を保持している幹細胞に
共通な未分化細胞の糖鎖マーカーを17種類
も発見することに成功したのです。
現在使用されている未分化細胞の
糖鎖マーカーはこの17種類に全部含まれて
おり、なんと最も未分化性を示した
マーカーはTRA-1でありました。
この結果は、新たな未分化マーカーの
探索研究にピリオドを打つばかりでなく、
藤谷助教らが確立した糖鎖の悉皆解析
(グライコーム)の手法の有用性をも証明
したのです。
20万細胞あれば、藤谷助教らのグループ
は1週間で細胞が持つ糖鎖の悉皆解析
(定量)ができると言います。
現在のところ、質量分析(MALDI)を使って
いるため、イオン化しにくい硫酸化糖鎖が
測定できない限界はありますが、これも
質量分析の装置を代えれば計測可能
でしょう。
いよいよ細胞の分化や機能のマーカー
として期待されていた糖鎖に関しても、
悉皆解析が可能となったのです。
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>ES細胞とiPS細胞など全能性を保持して
>いる幹細胞に共通な未分化細胞の
>糖鎖マーカーを17種類も発見することに
>成功したのです。
素晴らしいですね。
これでさらに有効なバイオマーカーが
発見されると思います。
期待したい。
>個の医療でも今後、がん細胞の糖鎖解析
>は重要となります。
>さしあたり、前立腺がんの性能の悪い
>バイオマーカーであるPSA
>(前立腺肥大と区別不能です)の
>糖鎖分析に、私は注目しております。
>前立腺肥大と前立腺がんを区別する
>糖鎖マーカーが、私が前立腺肥大となる
>前に、是非とも皆さん発見して
>いただきたいと願っております。
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