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2012年7月12日 (木)

がん細胞の悪性化をもたらす代謝制御メカニズムを発見

がん細胞の悪性化をもたらす
代謝制御メカニズムを発見
- 同化反応促進メカニズムから見える
新たながんの治療戦略 -

平成24年7月10日
東京大学プレスリリース

詳細は、リンクを参照して下さい。

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【研究内容】
背景
 1980年代以降、がんは日本人の死因の
第一位です。

 とりわけ肺がんによる死亡率はがんの中
でも特に高く、男性では第1位、女性では
大腸がんについで第2位となっています。

 手術療法、化学療法、放射線療法などの
治療法の進歩にもかかわらず、肺がんの
5年生存率は他のがんに比較して低迷して
います。

 これまでに、国立がん研究センター
並びに東北大学は世界に先駆けて、
転写因子Nrf2が非小細胞性肺がんで高頻度
に活性化型変異を起こしていることを
報告しました。

 また、Nrf2が強く発現している肺がん
症例では、予後が極めて不良であることが
両機関を含めた複数の施設から報告され、
肺がんの悪性化を担っているタンパク質の
一つがNrf2であることが明らかに
されました。

 また、肺がん以外でも食道がんや
胆嚢がんなどで、Nrf2が異常に安定化して
核内に蓄積している症例が多数発見されて
います。

 Nrf2は、本来、酸化ストレス応答や
異物代謝などの生体防御機構で中心的な
役割を果たしている転写因子です。

 通常状態では、Nrf2タンパク質は細胞質
で常に分解されており、その存在は
ほとんど検出できません。

 一方、細胞が酸化ストレスや毒物などに
曝露されると、安定化して核内に蓄積し、
DNAに結合して生体防御に重要な遺伝子群
を活性化します。

 その結果、抗酸化タンパク質や解毒酵素
が誘導されて、細胞の障害は最小限に
とどめられます。

 Nrf2ががん細胞の悪性化に働く
メカニズムとして、従来、がん細胞で
Nrf2が恒常的に安定化すると、
生体防御遺伝子群が常に活性化され、
その結果、がん細胞は抗がん剤や
放射線照射に対する抵抗性を獲得するもの
と理解されてきました。

 しかし、Nrf2が高いレベルで発現して
いるがん細胞では、細胞の増殖そのものが
亢進していることも観察されており、
このこともNrf2のがん細胞での働きと
理解されてきましたが、これまでその
メカニズムは不明でした。


今回の発見
 Nrf2が肺がん細胞において活性化する
遺伝子を網羅的に調べたところ、
グルコースの代謝、グルタミンの代謝に
関与する酵素群の遺伝子が直接Nrf2により
活性化されることがわかりました。

 グルコースの代謝経路のうち、
ペントースリン酸経路を触媒する主要な
4酵素がNrf2の標的遺伝子となって
いました。

 また、グルタミンの代謝経路のうち、
これまで知られていたグルタチオン合成に
関わる酵素に加えて、グルタミンから
乳酸を生成する経路の酵素もNrf2により
直接制御されていることがわかりました。

 肺がん細胞においてNrf2が代謝の流れに
どのような影響を与えているかを調べると、
Nrf2は核酸合成とグルタチオン合成を
強力に促進することがわかりました。

 これらはいずれも細胞の増殖にとって
有利な同化反応です。

 すなわち、Nrf2はグルコースを核酸合成
へ、グルタミンをグルタチオン合成へと
向かわせることで、細胞増殖に有利な代謝
を実現していることがわかりました。

 こうしたNrf2の代謝への影響は、増殖が
盛んな細胞において特に強く認められる
ことがわかりました。

 増殖していない細胞では、Nrf2は
主として酸化ストレス応答、解毒代謝機能
を担っていますが、増殖を促進する刺激が
細胞に作用するとNrf2の機能が強まり、
その結果、Nrf2はグルコースやグルタミン
の代謝の流れを改変する作用を発揮できる
ようになることがわかりました。

 さらに、Nrf2機能の亢進は、逆に、
増殖シグナルの増幅をもたらし、
Nrf2機能と増殖シグナルとの間の正の
フィードバック機構が細胞増殖をさらに
促進していると考えられました。


意義
 20世紀初頭にオットー・ワールブルグ
は、がん細胞が正常の細胞とは異なる
特徴的な代謝様式を用いていることを発見
し、その代謝様式はワールブルグ効果と
呼ばれています。

 最近ではこれに加えて、がん遺伝子の
活性化、もしくは、がん抑制遺伝子の
欠落がもたらす特異な代謝経路が次々と
報告されており、抗がん剤の標的として
代謝酵素が注目されています。

 ペントースリン酸経路は、核酸の合成に
必須の代謝経路であるにも関わらず、
がん細胞におけるその促進機構は不明
でした。

 本研究成果は、その直接の活性化因子が
Nrf2であることを明らかにしたものです。

 また、酸化ストレス応答を担うはずの
Nrf2が、細胞の増殖刺激存在下において、
代謝経路の改変をもたらして増殖を促進
するという、がん細胞の悪性化メカニズム
の新しい局面が明らかになりました。

 さらに、Nrf2の機能亢進と増殖シグナル
との間に存在する正のフィードバックの
発見は、Nrf2を高発現するがんに対する、
より効果的な治療戦略の開発に道を拓く
ものです。
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>今回の研究結果は、がん細胞の増殖や
>悪性化を支える代謝制御メカニズムの
>一端を解明したものであり、がん細胞の
>性質を理解する上で重要な発見です。
とのことです。


要約すると、
>酸化ストレス応答を担うはずの
>Nrf2が、細胞の増殖刺激存在下において、
>代謝経路の改変をもたらして増殖を促進
>するという、がん細胞の
>悪性化メカニズムの新しい局面が
>明らかになりました。

>さらに、Nrf2の機能亢進と増殖シグナル
>との間に存在する正のフィードバックの
>発見は、Nrf2を高発現するがんに
>対する、より効果的な治療戦略の開発に
>道を拓くものです。
ということのようです。

がんというのは全くやっかいな代物です。
本来の代謝メカニズムを改変してしまう。

Nrf2の機能亢進と増殖シグナルとの間に
存在する正のフィードバックをいかに
断ち切るかが重要なようです。

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