「一瞬の沈黙」がもたらす長期的な効果
「一瞬の沈黙」がもたらす長期的な効果
一時的に過剰発現遺伝子を抑制することで、
マウスクローンの出産効率を劇的に改善
01 June 2012
RIKEN Research Highlights
詳細は、リンクを参照して下さい。
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体細胞核移植(SCNT)は、理論上、特定
の動物と全く同じ遺伝情報を有する個体の
作出を可能とする強力なツールだ。
核を除いた卵子に成体の細胞核を注入し、
胚を発生させることで、「ドナー」動物の
クローンを誕生させることができる
のである。
しかしながら、この技術の効率は
きわめて低く、マウスでの成功率は
1~2%でしかない。
「これは、通常の受精胚で観察される
のと同じ『全能性』の状態にゲノムを
初期化するときに、何らかの誤りが生じる
ことによると考えられます」と、
理研バイオリソースセンター
(茨城県つくば市)遺伝工学基盤技術室の
小倉淳郎室長は説明する。
このたび、小倉室長の研究チームは、
SCNTの成功に立ちはだかる大きな障害を
排除することに成功した1。
哺乳類の雌の胚発生では、2本の
X染色体のうち1本が不活性化されており、
その結果、X染色体上にある遺伝子の
発現量が雄と雌で等しくなっている。
この不活性化は、一方のX染色体の
Xist遺伝子から生じたRNAがその染色体を
被覆して、不活性化過程を開始させる
ことによる。
研究チームはこれまでの研究で、
SCNT胚ではXistが過剰発現しているために
重要な遺伝子の発現が損なわれていること
を明らかにしており2、今回はこの不具合の
修正に着手した。
Xistを不可逆的に不活性化することは
実用的ではないので、研究チームは、
Xistの活性を直接阻害する
「short interfering RNA(siRNA)」と
呼ばれる分子を、発生初期の雄マウスの
SCNT胚に注入して、一時的にX染色体の
活性維持を試みた。
その結果、この処理により、
X染色体遺伝子の発現量は未処理の対照と
比較して著しく増大し、siRNA注入の
直接的な作用はきわめて短時間であった
ものの、その影響は長く持続した。
「siRNAが機能するのはわずか72時間に
過ぎませんが、その効果は長期的なもの
で、出生率はもちろん産子の健康状態にも
及んでいました」と、小倉室長は語る。
実際、研究チームは、これまでの10倍に
当たる20%近い成功率を達成しており、
得られた産子の外見も健常であった。
この高い効率の意義はマウスの大量生産
にとどまらず、畜産応用および基礎科学の
方面で大きな関心が寄せられていながら
遺伝子操作が困難なブタやヒツジなど、
マウス以外の動物種のクローン作出の
経済性を高めることにつながるかも
しれない。
「マウス以外の哺乳類でも健常な産子の
出生率を高めたいと考えています。
さらに、ライフルサイクル中でゲノムを
劇的に変化させる機序を明らかにしたいと
思います」と小倉室長は展望を語っている。
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ふ~ん。
クローン動物の誕生確率は低かったの
ですね。
>ライフルサイクル中でゲノムを劇的に
>変化させる機序を明らかにしたいと
>思います
少しずつ明らかになって行きます。
このことがどういう意味を持つように
なるのかちょっと心配な気もします。
遺伝的に同一のマウスを大量に誕生
させられるというのは、医学実験
をする立場としては、大きな意味を
持つとは思いますが、
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