米国政府がバイオテクノロジーの振興を狙った戦略を発表
米国政府がバイオテクノロジーの振興を
狙った戦略を発表
Tue, 1 May 2012
日経バイオテクONLINEメールより
by Webmaster 宮田 満
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さて簡単ですが、Bioeconomy Blueprint
の骨子を以下に紹介します。
今後、バイオ分野を牽引する技術を、
遺伝子操作、ゲノム解析技術、そして
ハイスループットスクリーニングなどの
ロボット技術の3つを取り上げているのが
印象的でした。
私だったらこれに大量情報のバイオ
情報技術/ペタコンピューティングと
細胞工学技術も現段階では取り入れるべき
であると思っています。
報告書を詳しく読むと、バイオインフォ、
iPS細胞、合成生物学にも重点が置かれて
います。
一番驚いたのが、今回の戦略で取り組む
重点分野として最初に例示したのが、
iPS細胞であった点です。
我が国も山中先生が2014年には予算が
無くなるなど気をもむようなことが
ないように、全省庁一そして企業も
一丸となって、米国がもっとも悔しがって
いるメイド・イン・ジャパンの技術突破を
大切にしなくてはなりません。
<<Bioeconomy Blueprintの戦略骨子>>
A)研究開発投資強化
企業が研究費を提供できない初期の
研究開発に投資、市場の失敗を補う。
協調性の取れた戦略的プログラムと
以下の分野に絞り込んだ投資が必要。
合成生物学、バイオインフォマ
ティックス、プロテオミックス、その他
統合的学際的投資
物理、化学、工学、計算機科学、
数学とバイオの境界での投資促進。
新しい投資メカニズム
プレコンペティティブ・シェアリング:
情報とリソースの共有を促進。
ゲノム情報、臨床試験デザイン、
バイオマーカーなど
B)トランスレーショナル・リサーチと
規制科学強化
発見、イノベーションそして商業化を
支援するエコシステムを創る。
SBIRプログラムの刷新と強化。
大学におけるアントレプレナー
シップの高揚。
連邦政府調達を活用し、バイオ製品開発
を加速。
C)規制の迅速化と透明化
バイオ技術の安全性担保を損なうこと
なく、迅速に評価。
コストと時間の負担を軽減。
各省庁をまたがる同時審査。
関係者との連携構築。
D)人材育成
雇用のミスマッチを埋める。
雇用者と教育機関の連携。
人材育成方法の見直し、そのための
連邦政府の投資。
E)公と民のパートナーシップ
政府は初期のシーズに投資。
健康、エネルギー、農業、製造業での
連携を勧奨するための投資。
●Bioeconomy戦略的プロジェクトの一例
1)iPS細胞などによる新しい精神疾患治療
に結びつく発見
パーキンソン病、ハンチングトン病、ALS
の3つのコンソーシアム(NIH)
2011年、Center for Reenerative
Medicine(NIH,2011、iPS細胞治療)。
2)ワクチンと医薬品の毒性と有効性
評価法
NIHとDARPA、FDA 140M$を投入して
ヒトの生理学的反応を再現する
チップ開発。
3)祖国防衛
DHSと米国立バイオテクノロジー
情報センターが、病原菌ゲノムの包括的な
データベース開発
4)FDAが蓄積している臨床試験と
前臨床試験データを活用し、新薬開発の
ドライバーにする。
5)バイオ燃料、バイオリファイナリーの
普及
2025年に米国石油輸入を3分の1カット
するため、USDAとDOEは2011年4月から
3000万ドル、4年間の研究資金を投入、
昨年9月にはUSDAは1億3600万ドルの
産学官連携による地域のバイオ燃料生産・
供給システムの開発する資金を提供。
6)バイオ燃料生産の多様化
化学合成独立栄養生物を使った新バイオ
燃料製造法開発プログラムElectrofuel
(2010年から、4500万ドル、13機関、
米Advanced Research Projects
Agency-Energy)
7)二酸化炭素から液体燃料へ変換
植物工学による代替燃料製造プロジェクト
(PETRO、3000万ドル、ARPA-E)。
光合成の改善などを目指す。
8)エネルギー植物の改良
USDA-DOE Plant Feedstock Genomics
for Bioenergy計画(1220万ドル、11年8月、
1220万ドル)。
ゲノム解析情報に基づき、エネルギー植物
の生産性を改良する。
9)農業分野の雇用増大を目指す新農業研究
プログラム
エネルギー生産のための農業研究を
振興、地域の雇用増進を図る。
10)有機農法技術の改善
USDAは09年9月から1900万ドルを投入中。
11)製造技術のバイオによる革新
Living Foundries Program(DARPA)、
軍事用途に生物学を応用した革新的な製造
プロセス開発に着手。
現在デザイン可能な100バイオ以上も
複雑なシステムを製造可能に。
12)バイオ製造技術の開発
新しいバイオ膜によるエネルギー生産や
細胞を再生医療のために基質に印刷する
などの革新的な製造方法をエネルギーと
医療分野で開発、雇用を創出する。
以上
この戦略は我が国のバイオにとっても
重要な羅針盤となるものだと判断しました。
是非とも残りの連休でじっくり吟味
願います。
中でも、米国食品医薬品局(FDA)の
今まで新薬の臨床試験や前臨床試験の
許認可で蓄積したデータを解析し、
企業のプライオリティを保護しながら
公開、活用して新薬開発の基盤とすべき
だという指摘は、各省庁が企業の知財や
個人情報保護などを体の良い言い訳にして、
情報共有を阻んでいる我が国とはえらい
違いです。
今後の行政ではデータの共有と公開が
政府の効率性を向上、国民からの信頼確保
にも繋がることにそろそろ気づかなくては
なりません。
いろいろ考えさせられる米国政府の
戦略でした。
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こういう戦略を見ると、日本の政府は
一体何をやっているのかと思う。
うらやましい限りです。
米国はシェールガスなどエネルギーには
それほど不安を感じていないと思いきや
エネルギー生産関連の戦略がかなり
含まれていますね。
この前、藻を使って日本を産油国にするの
だという夢をもって開発に取り組んでいる
人の話を見ましたが、政府はどう考えて
いるのかな?
予算の投入はしているのでしょうか?
個人の努力だのみでしょうか?
戦略の無い企業も国もいずれ滅ぶ。
今の政治家の行動を見ていると
希望が持てなくなる。
>中でも、米国食品医薬品局(FDA)の
>今まで新薬の臨床試験や前臨床試験の
>許認可で蓄積したデータを解析し、
>企業のプライオリティを保護しながら
>公開、活用して新薬開発の基盤とすべき
>だという指摘は、各省庁が企業の知財や
>個人情報保護などを体の良い言い訳
>にして、情報共有を阻んでいる
>我が国とはえらい違いです。
言い訳だけはえらく旨い。
官僚答弁の素晴らしいこと。
でも、そんなことばかりしている間に
日本はガラパゴス化していくだけ。
本当に情けない。
日本の未来を憂いている人は沢山いる
はずなのに、
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