シリコン原子の振動を利用して周波数コムの観測に成功
シリコン原子の振動を利用して周波数コム
の観測に成功
(光通信を1000倍高速化する
基盤技術開発に貢献)
平成24年3月5日
筑波大学
電気通信大学
科学技術振興機構(JST)
詳細は、リンクを参照して下さい。
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筑波大学(学長 山田 信博)数理物質系
の長谷 宗明 准教授、電気通信大学
(学長 梶谷 誠)大学院情報理工学研究科
の桂川 眞幸 教授、ピッツバーグ大学
物理・天文学科のHrvoje Petek
教授らのグループは、原子の集団振動
(格子振動:フォノン)を操作する技術を
開発し、100テラヘルツ
(THz=1012Hz)以上の極めて
広い周波数帯域を持つ、全く新しい原理に
基づく周波数コム注1)
(櫛の歯状に分布したスペクトル)の発生
と観測に成功しました。
光ファイバーを用いた光通信に代表
されるように、光を振幅(あるいは位相)
変調する技術(光変調技術)は、現代社会
のインフラを支える基盤技術であり、
光変調技術の高速化、大容量化が常に
望まれています。
また光変調技術を用いた光通信では、
変調周波数の高度な安定化
(正確な周波数間隔)も大きな課題です。
しかし、デバイス材料として最も重要な
半導体シリコンを用いた電子デバイス
あるいは光デバイスに関する研究は、
ギガヘルツ(GHz=109Hz)
周波数帯域で動作するものがほとんど
です。
これまでの周波数の限界を突破して、
さらなる高速化、大容量化、高安定化を
達成するためには、テラヘルツ以上の高い
周波数帯域を持つ、全く新しい動作原理の
光変調技術や周波数コムの実現が強く
望まれています。
しかし、半導体シリコンなど固体結晶中
の格子振動を発生原理とした
テラヘルツ帯域の周波数コムに関する研究
は、格子振動を操作する技術の確立が困難
とされていたため、全く未知の領域でした。
本研究グループは、極短パルスレーザー
注2)光を半導体シリコンに効率よく吸収
させることにより、大振幅の
コヒーレント光学フォノン注3)
(周波数15.6THz)の励起に成功
しました。
また、このコヒーレント光学フォノンに
伴うシリコン表面の屈折率変調を積極的に
光変調技術として利用することにより、
間隔が15.6THzの櫛状かつ
100THz以上の広帯域を持つ
周波数コムの発生を世界で初めて実現
しました。
今回、得られた周波数コムは、光周波数
ではなくフォノン周波数として現れること
から「フォノン周波数コム」とも呼べる
全く新しいタイプのものです。
このフォノン周波数コムを、
光ファイバーに結合することができれば、
従来の光通信よりも、1000倍以上
高速に情報を伝送することが可能に
なります。
また、今後、光通信や光スイッチなどで
利用できる新しい光デバイスの開発に
おいて、大きな役割を担うことが期待
されます。
さらに、周波数コムの周波数間隔を
高度に安定化することができれば、
光通信の高品質化につながるだけでなく、
テラヘルツ周波数帯域の周波数物差し
として、超精密分光法や周波数標準などに
応用できる可能性も秘めています。
本研究成果は、2012年3月4日
(18:00GMT、英国時間)に
英国科学雑誌「Nature
Photonics」のオンライン速報版
で公開されます。
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伝送データ量は増えるばかりですから、
光通信を1000倍高速化することが可能に
なるとは素晴らしい。
>本研究で得られた成果は、今後、
>光ファイバーを用いた大容量光通信や
>テラヘルツ光テクノロジーを利用した
>新しい光デバイスの開発などにつながる
>ことが期待されます。
>また、超高帯域周波数コムを応用した
>分光法を開発することにより、化学反応
>や相変化の制御など、幅広い応用が期待
>されます。
>例えば、コヒーレント光学フォノン
>によりテラヘルツの周波数で振幅・位相
>変調されたフォノン周波数コムを変調光
>として光ファイバーに取り込めば、
>毎秒テラビット(1012bit/s)
>以上の超高速データ送信を可能にする
>新しい光源が実現します。
とのことで、実用化までにはまだ時間が
かかりそうですが、期待したい。
関連記事です。
「光ファイバの伝送容量を
通常の19 倍以上に!」
2012.03.08
情報通信研究機構プレスリリース
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