「原発はダメ、自然エネ拡大まで天然ガス」
では解決しない
-ピークオイル問題が日本に投げかける
もの- 大場 紀章 【プロフィール】
2012年2月28日 日経ビジネスONLINE
詳細は、リンクを参照して下さい。
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いま議論すべきなのは石油問題
図1を見て下さい。
左のグラフは、1990年から2009年までの
20年間の日本の最終エネルギー消費量の
推移です。
石油が依然としてエネルギー消費の5割
以上を占め、またその内訳の殆どは、
運輸部門と産業部門であることが分かり
ます。
石炭、天然ガスを含めると未だに9割
近くが化石燃料です。
一方、電気による消費は23%に
過ぎません。
現在、盛んに議論されていることは、
23%の中の約6%の原子力を2011年から
2012年にかけて一気にゼロにするという
事態を受けて、約0.5%にとどまっている
再生可能エネルギーをなんとか拡大
できないか、ということになります。
現在は、原発の減少分を、高コストな
調整用電源である天然ガスや石油などの
火力発電をフル稼働させ、さらに産業界に
省エネ(+今後の電力料金上乗せ)
させることでしのいでいます。
もちろん、原子力業界・電力業界の闇を
暴き、被災者に補償させて、
再生可能エネルギーの普及拡大を願う議論
も重要なのですが、ここで私が言いたい
のは、「エネルギー源としての石油の
重要性は強調してもし過ぎることはない」
ということです。
今、議論されていない真の
エネルギー問題は、石油問題であり、
それはまず運輸と産業の問題なのです。
私はこの数年間、「ピークオイル」
について研究してきました。
「ピークオイル」とは、将来必ずやって
くる世界の石油生産の減少のタイミング
こそが人類文明の重要な転換期であり、
またそのタイミングはそう遠くないとする
考え方です。
実は、たった数年間で、これまで
「ピークオイル」論を批判してきた
専門機関や石油会社の多くが、石油生産の
ピークが近いことに言及するように
なりました。
代表的なところでは2010年、
国際エネルギー機関(IEA)が、
「2006年に在来型石油生産はピークを
過ぎた」「安い石油の時代は終わった」と、
報告書の中で述べました。
ピークの時期の予想については、以前は
ばらばらでしたが、最近では研究が進んで
様々な予測手法が開発され、かなり集約
されるようになってきました。
様々な研究を総合すると、どうやら
図4のようになるのではないかと我々は
考えています。
特に、2014年前後に需要が供給を
オーバーシュートし、2020年頃には生産
減退が始まるという点については、かなり
確度が高いだろうと思われます。
石油生産が減退すると、何が起こるので
しょうか。
私はこの問題をずっと考え続けています。
その影響の大きさは、脱原発や
再生可能エネルギーの比ではなく、
どう考えても明るい未来を描けそうに
ありません。
この点が、最近のエネルギーの議論の
前提で最も欠けていることではないかと
思っています。
石油生産の減退は20年、30年先の
話ではなく、もう目の前の問題です。
まず重要なのは、ピークオイル問題は、
単なる「エネルギー問題というよりも
液体燃料問題である」ということです。
図1で見たように、石油の多くは
輸送用燃料、つまり自動車やトラックに
使われています。
特にトラック輸送に強く依存する物流
は、産業の血液とも呼べるものですが、
ハイブリッド車や電気自動車での代替が
困難であり深刻な影響を受けます。
鉄道輸送に移行しようにも、現在の鉄道
インフラキャパシティのおよそ10倍が必要
になります。
そして、自動車の利便性が下がることは、
すなわち日本の基幹産業の一つである
自動車産業の衰退でもあります。
加えて、日本では欧米と異なり天然ガス
をLNG(液化天然ガス)として石油価格と
リンクした価格で購入しているため、
石油価格の上昇がダイレクトに天然ガス
コストにも影響します。
このままいけば、ピークオイル後の
日本は物流と産業に深刻なダメージを
受け、労働人口減少の効果も加わって、
不可避なマイナス成長の世界に突入して
しまうことになるでしょう。
現在、「原発はダメで、自然エネルギー
の開発には時間がかかるから、天然ガス発電
を増やす」という選択肢が最も現実的である
かのように語られています。
それは“かなり”正しいのですが、既に
述べたように今後はLNG価格も石油価格
とともにどんどん上がるという現実を考慮
する必要があります。
日本にはもう、「原子力にシフトして、
少しでも輸送部門を電化する」ぐらいしか
有効な道は残って“いなかった”のです。
この連載では、ともすると忘れられがち
な、石油、天然ガス、そして石炭といった
化石燃料を中心に取り上げ、将来の
エネルギーを考えるうえでの最も基本的な
前提について解説していきたいと思って
います。
また、最近話題になることも増えてきた
「シェールガス」や「シェールオイル」、
「メタンハイドレート」といった
非在来型化石資源と呼ばれるものも
取り上げていきます。
そしてその内容は、読者の方々が想像
される以上に暗い未来を示さざるを得ない
ことになりそうです。
特に日本は、エネルギーのほぼすべてが
輸入依存であるのに加え、原発の運用に
致命的な課題を抱えており、諸外国に増して
厳しい立場に立たされています。
これに人口減少や財政問題など、内部の
根本的マイナス要因が加わります。
なかなか明るい未来を描きづらい状況
ですが、そもそも私たちが本当に守ら
なければならないことは何だったのかを
問い直しながら、皆さんと一緒に日本の
エネルギーのこれからについて考えて
いけたらと思います。
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なるほど、こういう視点での議論が
聞こえてこないのは何故でしょう?
確かに今している議論は、
>電気による消費は23%に過ぎません。
>現在、盛んに議論されていることは、
>23%の中の約6%の原子力を2011年から
>2012年にかけて一気にゼロにするという
>事態を受けて、約0.5%にとどまっている
>再生可能エネルギーをなんとか拡大
>できないか、ということになります。
と言うことですね。
>ピークオイル問題は、単なる
>「エネルギー問題というよりも
>液体燃料問題である」ということです。
>図1で見たように、石油の多くは
>輸送用燃料、つまり自動車やトラックに
>使われています。
>特にトラック輸送に強く依存する物流
>は、産業の血液とも呼べるものですが、
>ハイブリッド車や電気自動車での代替が
>困難であり深刻な影響を受けます。
なるほど。
>「シェールガス」や「シェールオイル」、
>「メタンハイドレート」
を考慮しても将来は暗い?
う~ん。
そうなんでしょうか?
まだ連載は続くようなのでどういう考察が
なされていくのか興味のあるところです。
私はもう少し、楽観的です。
バイオ燃料がかなり現実的になりつつ
あるし、メタンハイドレートも期待
出来るのではないか?
人は窮地に立たされると思わぬ力を発揮
するものだと思っています。
ただ、こういう視点での議論がもっと
活発に行われてしかるべきではないかと
思います。
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