阪大、ES細胞での遺伝子機能を迅速に解析できる手法を開発
阪大、ES細胞での遺伝子機能を迅速に
解析できる手法を開発
2011/10/25 マイコミジャーナル
詳細は、リンクを参照して下さい。
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大阪大学(阪大)と科学技術振興機構(JST)
は10月24日、ES細胞において遺伝子機能を
迅速に解析する新手法を開発したと共同で
発表した。
研究は阪大大学院医学系研究科の
堀江恭二准教授および竹田潤二教授らに
よるもので、成果は米国東部時間
10月23日付けで「Nature Methods」
オンライン速報版に掲載された。
遺伝子機能を調べるための一般的方法
として、「目的の遺伝子を破壊した細胞を
作成し、その影響を調べる」手法が、
これまでさまざまな生物種において多くの
研究者によって用いられてきた。
しかし、各遺伝子は細胞につき2コピー
ずつ存在するため、遺伝子機能を解析する
ためには、両方のコピーを破壊する必要が
あり、研究遂行上の律速段階となっている。
目的のゲノム領域と相同なDNA配列を
単離後、改変を加えて細胞へ導入し、
ゲノム配列と外来性相同配列との間で
生じる組み換えを利用してゲノムを改変
する「ジーンターゲティング」は、最も
広く用いられている方法だが、この方法
では遺伝子破壊のみならず、さまざまな
ゲノム改変が可能になる一方で、多大な
時間と労力を必要とし、例えば両方の
コピーを破壊したマウスを作成するには、
半年から1年程度の時間がかかってしまう。
そのため、1人の研究者が解析できる
遺伝子数は、極少数に限られているのが
現状の課題だ。
また、遺伝子機能を簡便に阻害する
には、標的とするRNAに相補的な2本鎖RNAを
細胞内に導入することで、標的RNAが分解
される現象を利用した「RNA干渉」が広く
用いられている。
しかし、この方法では遺伝子発現を低下
させることはできても、完全な破壊は
不可能であり、目的以外の遺伝子が阻害
されてしまう可能性もあるのが課題だ。
そうした課題を解決すべく、
研究グループは今回、マウスのES細胞
において両方のコピーを迅速に破壊し、
遺伝子機能を網羅的に解析することが
可能な手法を構築したのである。
マウスES細胞のゲノムのさまざまな部位
へ、後述する薬剤耐性遺伝子を含む
DNA断片を挿入し、ES細胞の遺伝子をまずは
1コピーのみ、ランダムに破壊(画像1)。
次に、研究グループが以前に報告した
「Bloom遺伝子」の発現抑制により、
染色体間の組み換えを高める操作を行い、
もう1つのコピーも破壊された細胞を誘発
した。
続いて、今回開発した1コピーと
2コピーの遺伝子破壊を薬剤に対する耐性で
区別する方法(画像2)を用いて、遺伝子が
2コピーとも破壊された細胞を選択。
ただし、この選択も完全ではないので、
さらにこの中から破壊された遺伝子と同じ
染色体に位置する一塩基多型(SNP)の多様性
が消失した細胞をスクリーニングする
(画像1)ことで、2コピーの遺伝子が
破壊された細胞を同定した。
今回の研究の特徴は、この一連の過程を
「流れ作業」にしたことにあり、各遺伝子
に対する詳細な知識なしに、遺伝子破壊を
行うことができる点が特徴となっている。
この作業は約1カ月で完結し、複数の
遺伝子に対して同時に適用可能だ。
そのため、1人の研究者あたりで、
年間100個程度の遺伝子について両方の
コピーが破壊されたES細胞を取得できる
ようになる。
また研究グループでは、この手法を
用いてさまざまな遺伝子を破壊した
ES細胞バンクを作成。
さらに、そのES細胞バンクからは
分化能力が異常な細胞株も単離されて
おり(画像3)、ES細胞の万能性を解析する
上で極めて有用であることが示されて
いる。
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>今回の研究の特徴は、この一連の過程を
>「流れ作業」にしたことにあり、
>各遺伝子に対する詳細な知識なしに、
>遺伝子破壊を行うことができる点が特徴
>となっている。
素晴らしい成果ですね。
これで、遺伝子の解析がさらに容易になる
と思われます。
遺伝子の各々の要素の働きは、その部分を
破壊した遺伝子を作成して調べるしかない
わけですから、
時間のかかる作業だったんですね。
それがずいぶん改善される。
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