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2011年7月22日 (金)

Vol.217 なぜか進まない原発作業員の造血幹細胞保存

Vol.217 なぜか進まない原発作業員の
造血幹細胞保存

2011年7月21日 医療ガバナンス学会

詳細は、リンクを参照して下さい。

この文章は、『ロハス・メディカル』
2011年8月号に掲載されたものです
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 ロハス・メディカル誌5月号巻頭で、
谷口修一・虎の門病院血液内科部長の
『原発作業員は、造血幹細胞保存を』
(参照1)という提言をご紹介しました。

 しか し原子力安全委員会や日本学術会議
が、誰の判断か曖昧なまま『不要』と
突っぱねたことから、6月末までに1人しか
保存していないそうです。

 専門家の社会と の関わり方の妥当性
という意味で非常に考えさせられます。
 また、将来、歴史の検証が必要に
なりそうな予感もします。

 小康状態にあるとは言え、東京電力福島
第一原子力発電所が依然として危険な状態
にあること、破滅を避けるために不断の
燃料冷却と汚染水処理が必要なことは、
皆さんもよくご存じのことでしょう。

 そして、大量の放射線被曝と背中合わせ
の劣悪な環境の中、必死にその作業を
している方々がいます。

 作業してくれる方々がいなければ我々の
日常すら脅かされるということを考えると、
作業員の生命と健康を守るため何ができる
のか、そのコストを誰がどう負担するのか、
他人事でなく考える必要があるのでは
ないでしょうか。

 谷口医師の提言を叩き台として、広く
見える形で専門家が意見を闘わせれば、
国民の理解が深まり、もっとよい知恵が
出て合意に至る可能性だってあった
はずです。

 しかし残念ながら透明な議論はなく、
どんどん話がおかしくなっています。
 この3カ月間の経緯を振り返ります。

○提言と否定
 谷口医師が病院で記者会見を開き提言
したのが3月29日のことでした。
 この際、日本造血細胞移植学会も
「自己幹細胞保存が望ましいとされた
場合、学会はその医学的、社会的妥当性を
検討した上協力します。
 (略)全国の107施設が対応可能と
なっています」と、声明を出しました。

 実は、その前日に国立がん研究センター
も、嘉山孝正理事長らが会見で(作業員
などに)「事前に自己末梢血幹細胞を
保存」することを推奨すると発表して
いました。

 ところが原子力安全委員会は同じ
3月29日、「緊急技術助言組織」の名前で、
「作業従事者にさらなる精神的、身体的負担
をかけるという問題があり、関連国際機関等
の合意がなく、国民にも十分な理解が
得られていない」から「必要ない」との判断
を示しました。

 すると国立がん研究センターは4月14日に
2度目の会見を開き、被曝線量が250ミリSv
以下の職場環境が保たれる場合は不要と、
玉虫色の表現に変更しました。

 また日本学術会議も4月25日、
「東日本大震災対策委員会」名で「不要
かつ不適切」との見解を発表しました。
 理由として挙げられたのが、作業者は
被曝 250ミリSv以下の環境で働いており、
移植の必要な大量被曝の可能性がない。
 たとえ大量被曝したとしても、そういう
場合に行われる緊急治療のスタンダードに
造血幹細胞移植は入っていないといった
ことでした。
 末梢血幹細胞採取の際用いる薬に白血病
を誘発するリスクがあるということも
書かれていました。
 ただ し5月2日に一部修正され、
日本血液学会の統一的見解を期待するとの
記述が追加されると同時に、白血病リスク
上昇の根拠として挙げられていた
医学論文が削除されました。
 結果として、何を根拠に白血病のリスク
が上がると主張しているのか不明です
(参照2)。

 実は、学術会議の最初の見解と修正との
間の4月28日に、谷口医師は学術会議に
対して「日本の叡智を結集して最善の方法
を模索する」べきと公開討論会の申し入れ
を行っています。
 しかし、学術会議から反応はありません。
 また、学術会議の「期待」に応え
日本血液学会が統一見解を出そうという
動きもありません。

○現実が先を行く
 その後、250ミリSvを超える被曝の判明が
相次いでいるのは、皆さんもご存じの通り
です。

 5月23日に日本造血細胞移植学会は2回目
の声明を出しました。
 学術会議の見解に対して、作業環境に
関する情報開示が不足しており、被曝量が
コントロールされているから不要と断定は
できない、などと反論しています。

 6月7日になって国立がん研究センターも
3度目の会見を開き、改めて原則として
推奨する方向に舵を切り直しました。

 国会議員たちも関心を持ち始め、
6月24日、7月1日と2週連続で勉強会が開かれ
ました。
 しかし、残念ながら学術会議で見解作成
に携わった人たちは出席せず、双方の主張
はすれ違ったままです。

 もちろん大量被曝事故が起きないに
越したことはありません。
 ただし今回は、起きてほしくないことが
次々起き、後追い対策に終始しているのが
現実です。
 現場の方々に最善の備えをと願います。
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何回も投稿しています。

>原子力安全委員会は同じ3月29日、
>「緊急技術助言組織」の名前で、
>「作業従事者にさらなる精神的、
>身体的負担をかけるという問題があり、
>関連国際機関等の合意がなく、
>国民にも十分な理解が得られていない」
>から「必要ない」との判断を
>示しました。
国民にも十分な理解が得られていない?
どうやって調べたのでしょうか?

上記にあげていることが造血幹細胞保存
を拒否する理由になるとは思えません。

事故は思わぬことで発生します。
人がコントロールできることでは
ありません。
せいぜい出来ることは、その発生確率を
下げることくらいしか出来ないのです。
決してゼロには出来ません。

高濃度汚染水の中に落ちるかも知れない。
万一落ちた場合は自己責任ということ
で終わりになるのでしょう。
命綱をかならずつけろと指示したと
いうことで、

コントロールしている積もりでも、
万全などということがあるので
しょうか?

何か勘違いしていませんか?
今回の原発事故そのものがそうです。
安全であるようにコントロールして
いたはず。違いますか?

目的は、
「人の命を救うために最善を尽くす
こと。」のはず、
それが出来ているのですか?

世の中の知識人と言われる人達の
考えることは理解出来ない。

>透明な議論はなく、
というのがいつもながら残念です。

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