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2011年7月22日 (金)

米国におけるがん免疫療法の現在

米国におけるがん免疫療法の現在
腫瘍免疫学を学ぶ立場から

2011年7月18日 医学書院

詳細は、リンクを参照して下さい。
参考情報です。

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 近年,欧米を中心に腫瘍免疫学
(Tumor immunology/Immuno-oncology)の
分野は,基礎,臨床開発とも目覚ましい
発展を続けています。

 わが国においても,基礎分野では偉大
なる先人たちにより素晴らしい業績が残さ
れていますが,こと臨床開発においては
欧米とは社会背景が異なることもあり,
大きく立ち遅れています。

 残念なことに,腫瘍免疫学を専門と
しない多くの臨床医の方々から,
がん免疫療法に対して懐疑的なまなざしを
向けられていることは周知の事実です。

求められる適切な臨床試験の実施
 現時点でがん免疫療法がすべて無効と
決めつけるのではなく,今後,科学的に
綿密に計画された臨床試験によって,
しっかりと白黒をつけていくべき
でしょう。

 そのためには,わが国でも,がん免疫
療法の臨床試験を適切に行い,治療後の
患者さんの体内での免疫応答を適切な方法
でモニタリングするためのinfrastructure
の整備が必要不可欠です。

 私はこのことを学ぶために留学しました
が,現状では,わが国は米国と比較し,
人的資源(個々の能力ではなく人数の
問題!),資金,設備のすべての面で
劣っていることを痛感せざるを得ません。

新たな免疫療法の認可の動き
 米国では最近,二つの免疫療法薬が科学的
に計画された臨床試験の試練を経て,ついに
食品医薬局(FDA)の認可を受けました。

 一つは2010年4月の前立腺がんに対する
sipuleucel-T(商品名:ProvengeR)です。

 これは,患者の血液から取り出された
末梢血単核球を,体外で前立腺がん抗原
(PAP),サイトカイン(GM-CSF)の
融合タンパク質等を用いて処理され,
製造された後に患者さんに投与される
ものです。

 抗原提示細胞(APC)が主たる成分
となり,PAPを持つ前立腺がん細胞を攻撃
できるT細胞を患者の体内で誘導し,
前立腺がんを攻撃するというコンセプト
です。

 もう一つは,私の現在の上司が臨床開発
に携わった ipilimumab(イピリムマブ,
商品名:YerboyR)です。

 これは,T細胞が活性化した際に,
T細胞応答に抑制(ブレーキ)をかける役割
を果たすCTLA-4(Cytotoxic T-Lymphocyte
Antigen 4)という物質を抑える抗体療法
です。

 いわば,T細胞応答のブレーキを解除
して,T細胞にがんを攻撃させようという
治療方法です。

 昨年,既治療の転移性悪性黒色腫に
対する第III相試験「イピリムマブ+
gp100ペプチドワクチン」と
「イピリムマブ単独」対「gp100ペプチド
ワクチン」との比較において,
gp100ペプチドワクチンの有無に
かかわらず,イピリムマブを含む治療群が
gp100ペプチドワクチン群よりも有意に
生存期間の延長を認めることが報告され
ました1)。

 この流れを受け,本年3月末に
悪性黒色腫に対するイピリムマブ療法が
FDAに認可されました。

 さらに,本年6月に開催された米国臨床
腫瘍学会年次総会にて,無治療転移性
悪性黒色腫に対する第III相試験
「イピリムマブ+ダカルバジン併用群」
対「プラセボ+ダカルバジン投与群」
において,併用群が全生存期間の延長,
無増悪進行生存期間の有意な延長を認めた
ことが報告されました(図1,表1)2)。

 これにより,転移性悪性黒色腫に対する
一次標準治療に免疫療法が加わることに
なります。

免疫療法と化学療法の効果発現時期,
効果持続時間は異なる
 イピリムマブの特徴として,図2の
矢印(←)に示されるように,試験登録
から2か月以上にもわたり両治療群で
無増悪進行生存曲線に差を認めないこと
から,イピリムマブ上乗せによる治療効果
発現までには時間を要すること,また
奏効期間がイピリムマブ併用群で19.3か月
にまで延長しており(表2),治療効果が
長期間持続する可能性が指摘されています。

 われわれの施設では,イピリムマブ投与
開始後,12週でPD(Progressive Disease;
最も縮小した時点から,25%以上の増大,
または新病変の出現があったもの)と判定
された症例が,投与継続により24週後以降
になってからPR(Partial Response;病変
の50%以上の縮小が4週間以上持続),
SD(Stable Disease;病変の縮小率が30%
未満,または20%以内の増加で,二次的
病変が増悪せず,かつ新病変の出現のない
状態が4週間以上持続)と判定される症例を
多く経験しています。

 化学療法では,通常治療開始後いったん
PDと判定されれば治療中止としますが,
免疫療法での効果発現までの時間と効果の
持続期間は,化学療法のそれとは異なる
ことがわかってきたため,従来のRECIST
(Response Evaluation Criteria In
Solid Tumors;固形がんの治療効果判定
のためのガイドライン)による効果判定を
修正した免疫療法用の評価方法の
ガイドラインが提案されました3)。

 今後,国際的にはがんに対する新しい
治療オプションとなることをめざし,
さまざまな形のがん免疫療法の臨床試験が
各種がんに対して積極的に行われていく
ことは間違いないでしょう。
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そうですね。
日本も遅れないようにして貰いたい。

批判することは得意のようですが、
新しいことに挑戦する人も組織も貧弱
です。

頑張ってください。

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