iPS細胞:「ミューズ」が元 東北大・京大チーム、多能性の起源解明に道
iPS細胞:「ミューズ」が元
東北大・京大チーム、多能性の起源解明
に道
毎日新聞 2011年5月31日
詳細は、リンクを参照して下さい。
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東北大と京都大のチームが、さまざまな
細胞になる能力を持つ人工多能性幹細胞
(iPS細胞)の元になる細胞を突き止め、
今週号の米科学アカデミー紀要(電子版)
に発表した。
この細胞は、同じチームが昨年発表した
「Muse(ミューズ)細胞」と呼ばれる
神経や筋肉などの細胞になる多能性幹細胞。
iPS細胞は体の細胞に分化した細胞が
受精卵のような状態に「初期化」したもの
と考えられているが、今回の研究成果は、
初期化は起きず、異なる仕組みで作られる
ことを示しているという。
東北大の出沢真理教授(幹細胞生物学)
らは、ヒトの皮膚の元になる細胞に1%
ほど含まれるミューズ細胞を選び出し、
ミューズ細胞の集合体と、ミューズ細胞を
含まない細胞の集合体を作った。
それぞれに山中伸弥・京都大教授が
見つけたiPS細胞作成に用いる4種類の
遺伝子を導入した結果、ミューズ細胞の
一部はiPS細胞になったが、それ以外の
細胞集合体からはできなかった。
作成したiPS細胞と元のミューズ細胞
の遺伝子の特徴を比べると、さまざまな
細胞になる多能性に関する遺伝子の働き方
が類似していた。
出沢教授は「iPS細胞の多能性は、
遺伝子導入によって細胞が初期化されて
付与されるものではなく、ミューズ細胞が
持っていたものが強くなったのではないか」
と話している。【野田武】
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■解説
◇「初期化」定説に疑問
ミューズ細胞は東北大のチームが昨年、
胚性幹細胞(ES細胞)、iPS細胞に
続く多能性幹細胞として発表。
その性質や再生医療への応用を研究して
いる。体細胞に含まれるミューズ細胞が
iPS細胞の元になっているという今回の
成果は、iPS細胞の特色である
「遺伝子導入によって、体細胞を分化前の
状態に初期化する」という定説に疑問を
提示するもので、今後議論を呼びそうだ。
iPS細胞が、ある特定の細胞から
できている可能性は以前から指摘されて
きた。iPS細胞を開発した山中教授は
09年、こうした見方に否定的な見解を
英科学誌ネイチャーで公表。
とはいえ、作成時に導入する遺伝子が
「初期化」にどうかかわっているかは
今でも明確には分かっていない。
東北大のチームは今回、遺伝子が初期化
にかかわっているのではなく、
ミューズ細胞が元々持っている多能性を
遺伝子が強めているのだと結論付けた。
共著者の藤吉好則・京都大教授は
「(謎だった)遺伝子の役割を提示できた」
と強調する。
今回、ミューズ細胞から作ったiPS細胞
をマウスに移植したところ、腫瘍ができた。
一方、ミューズ細胞は他の多能性幹細胞
よりがんができにくい点が長所とされて
おり、チームは今後、有効性の検証を進めて
いく方針だ。【野田武】
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なかなかややこしい話が出て来ましたね。
ミューズ細胞が元だとすると、作成効率は
>ヒトの皮膚の元になる細胞に1%ほど
>含まれるミューズ細胞
ということですから、皮膚細胞を原料に
した場合は、1%以下のはず。
ということになりそうな気もしますが?
どうなんでしょう?
iPS細胞の作成効率はもう少し
高かったような?
いずれにしても、安全なiPS細胞を
効率よく作成することが求められるわけ
ですので、そうなるよう研究が進んで
欲しいものです。
ふりかけるだけでiPS細胞という
話も出て来ています。
多面的に研究が進むとさらに解明されて
行くと思います。
今後に期待したい。
関連情報です。
「ヒト線維芽細胞由来iPS細胞は、
Muse細胞からのみ形成される」
2011年6月 1日 東北大学
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