水素燃料電池で「分散型電源」へ 発電所集中にリスク 九大の村上教授に聞く
水素燃料電池で「分散型電源」へ
発電所集中にリスク
九大の村上教授に聞く
2011/5/24 日本経済新聞
詳細は、リンクを参照して下さい。
---------------------------------------
「水素社会の出番だ」。
水素技術の研究の第一人者である
村上敬宜・九州大学教授は話す。
東日本大震災と原子力発電所の事故は
効率重視で発電所を集中立地させることの
リスクを顕在化させた。
これからの日本は原子力の比重が減る分、
再生可能エネルギーとともに「水素を使う
燃料電池を有力な分散型電源として増やして
いかねばならない」と村上教授はみる。
「今回の震災で、独立運転が可能な分散型
地域エネルギー供給システムの重要性が
明らかになった。
普段は系統電力とつながって運用される
が、災害などで系統から分離する必要が
生じたときは、独立して地域に安定的に
エネルギーを供給できるシステムだ。
大規模な燃料電池や再生可能エネルギー
を中核にした地域エネルギーセンターを
各地につくっていくことが必要だ」
「例えば、福岡県糸島市では150戸に設置
した家庭用燃料電池にプロパンガスを供給
して各戸のエネルギーを賄っている。
北九州市の水素タウンでは製鉄会社の
副生水素を水素ステーションや各戸の
燃料電池に供給している。
これらはガスがある限り、電力が
止まっても地域のエネルギー供給が可能だ。
家庭用の燃料電池は出力1キロワット程度
だが、発電効率が高い固体酸化物型
(SOFC)の1千キロワット級大型燃料
電池を早く実用化して、病院や大型商業施設
などの拠点を賄うようにしたい」
「再生可能エネルギーは天候によって
出力が変動するのが弱点だが、安定発電が
できる燃料電池か、蓄電池と組み合わせれば
うまく使える。
いずれにしても原発利用にブレーキが
かかるのは間違いない。
エネルギーの自給率が原子力を含めても
約20%と低く、石油価格に翻弄(ほんろう)
され、石油確保のため国富が国外に出る
のを、可能な限り避けたい」
――水素の確保が課題になりますね。
「副生水素の生産拠点は全国で約20カ所
ある。
ほかは天然ガスの改質や石炭ガス化で
水素を得ることもできる。
豪州で品質の悪い褐炭資源を活用して
水素をつくり大型船で日本に運ぶ構想も
ある。ノルウェーやカナダは水力発電の
電気で水を分解して安い水素を製造し輸出
する計画だが、日本はまねができない。
水素の調達では化石燃料に頼る側面も
あるが、天然ガスや石炭を使い、石油への
依存を減らして、水素社会への入り口と
したい」
――原発事故が発電コストの上昇をもたらす
と、電気自動車の普及にはブレーキ、
燃料電池車に対しては追い風になるとみて
よいのでしょうか。
「今年1月に世界の自動車メーカーと
エネルギー企業が燃料電池車の実用化の
推進で合意した。
2015年に燃料電池車を本格的に世に出す
ことを目標に掲げた。
ダイムラーやトヨタ自動車、日産自動車、
ホンダ、ゼネラル・モーターズ(GM)、
フォードなどと、シェルやトタルなどが
参加している。
これまで先に自動車を発売するのか、
燃料供給のインフラを先に整備するのか、
どちらが先かの論争があったが、
燃料電池車の本格販売に合わせて
インフラ整備を目指すと合意した」
「これを受けて、国内でもトヨタ、日産、
ホンダなどとJX日鉱日石エネルギーや
出光興産など合わせて13社が共同声明を
発表、首都圏などで100カ所以上の
水素ステーションの設置を目指す。
燃料電池車は1台1億円とか言われて
きたが、量産で値段は1けた下がる。
さらに技術進歩で、500万~1千万円の
間で販売できるようになると思う」
「電気自動車は、家庭のセカンドカーや、
郵便配達など決まったルートを巡回する
用途では使えるが、郊外へのドライブでは
やはりユーザーが電池切れを心配する。
技術進歩で車続距離は伸びるものの、
冷暖房の使用を考慮に入れるとまだ十分
ではない。
暖房にエンジンの余熱ではなく電気
ヒーターを使うのは、寒冷地では厳しい
制約条件になる。
最終的には消費者が答えを出すことに
なろう」
――仮に燃料電池車が未来の車の本命だと
したら、日本の自動車産業にとって悪い話
ではない。
「燃料電池車は体力のある企業でないと
実用化は難しい。
電気自動車は、極端なことを言えば電池と
モーターさえあればベンチャー企業でも
製品化できる。
しかし、燃料電池の出力制御は化学反応の
制御であり、かなりの技術者を投入して
研究しないとものにはできない。
トヨタやホンダは本気でそれをやってきて
いる」
――水素は安全に使えるのでしょうか。
「絶対安全であるとは言えないし、言う
つもりもない。
原子力は絶対安全を唱えたことでボタンを
掛け違えた歴史がある。
絶対安全を唱えて必要以上に厳しい規制を
設けることは本当の安全確保に
つながらない。
ガソリン車も電気自動車も事故を起こすし
火災も発生する。
水素をガソリンや電池より安全に扱う技術
を実現することはできるが、事故をなくす
ことはできない」
「液体水素はロケット燃料として米航空
宇宙局(NASA)が性質を調べ尽くして
安全に扱う技術ができた。
気体の水素を扱う研究は遅れたが、
ようやく性質が科学的につかめ危険を減らす
対策が講じられるようになった。
どんな素材を使って、どう設計すれば
耐久性のある水素タンクをつくれるか
など、具体的にわかってきた」
途中省略
「経験が蓄積されるにつれ、水素の取り
扱い規制も合理的なものに見直していける。
そうすれば製品の価格も安くなり普及も
進む。現在は水素ステーションを国内で
建てると4億~5億円かかるが、海外なら
1億円くらいだ。
日本の規制が厳しすぎるためだ。
これでは日本企業が海外でインフラ受注を
目指しても外国勢には勝てない。
国内で経験もデータもないものを海外へ
売れないからだ。
政府にはそろそろ規制の見直しを考えて
もらいたい」
---------------------------------------
事故の教訓には、
>「今回の震災で、独立運転が可能な分散型
>地域エネルギー供給システムの重要性が
>明らかになった」
というのもあるでしょうね。
>「水素を使う燃料電池を有力な分散型
>電源として増やしていかねばならない」
検討することも必要かもしれない。
安全、安全といって変な規制は止めて
欲しい。独りよがりの安全では何の意味も
ない。
>「絶対安全であるとは言えないし、
>言うつもりもない。原子力は絶対安全を
>唱えたことでボタンを掛け違えた歴史が
>ある。絶対安全を唱えて必要以上に
>厳しい規制を設けることは本当の
>安全確保につながらない。
>ガソリン車も電気自動車も事故を起こす
>し火災も発生する。水素をガソリンや
>電池より安全に扱う技術を実現すること
>はできるが、事故をなくすことは
>できない」
正論です。
きちんと事実を見つめることです。
事故をゼロには残念ながら出来ない。
出来るのは少しずつ減らすことくらい
です。英知を集めて。
| 固定リンク
「経済・政治・国際ニュース」カテゴリの記事
- ウミガメの99%がメスに! 豪で深刻、海水温の上昇(2018.01.20)
- 涙を誘う、餓死寸前のホッキョクグマ 温暖化の影響(2018.01.19)
- 氷山の一角から見えてきたもの -日本の研究力を維持するために-(2017.09.02)
- 死の熱波の脅威 80年後に人類の4分の3が直面(2017.07.02)
- 原発処理費用、22兆円のウソとそのワケ(2017.04.28)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント