菅首相 自然エネルギーへのご執心は延命のため 注目の「電力買取法案」にも経産省の思惑
菅首相 自然エネルギーへのご執心は
延命のため
注目の「電力買取法案」にも経産省の
思惑
詳細は、リンクを参照して下さい。
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急に政権の最優先課題として浮上したのが
「電力買取法案」だ。
これは政治的にいえば、単なる延命である。
本当に総理がやりたい課題は、就任直後の
所信表明で行う。
昨年6月の所信表明には「原子力産業を
含むエネルギー部門」への期待はあるが、
自然エネルギーは出てこない。
10月の所信表明では、役所からの要請
であろうが、政策羅列の中に
「再生可能エネルギー」、「全量買取制度」
がかろうじてでてくる。
この法案は、今回の原発対応で出てきた
わけではない。
麻生政権時代に「余剰電力買取制度」が
導入されて、その延長線上ででてきた
ものだ。そして、3月11日の震災当日、
まさに震災の直前に閣議決定されていた
ものだ。
震災の影響があったのだろうが、4月5日
に衆議院が議案受理している。
しかし、問題なのはその後まったく動き
がないことだ。
もし菅総理に強い思い入れがあるならば、
趣旨説明をしていいはずだ。
また、菅政権・与党で国会を延長せずに
閉じるという話があったが、その時も
この法案はまったく審議されていない。
国会関係者であれば、この法案は
まったく話題に上がっていなかったことは
誰でも知っている。
だから、菅首相の延命策だといわれる
のだ。
さらに、法案自体にも、本格的な電力の
自由化を避けてきた経産省の思惑も入って
いる。例えば、電力会社は、
「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる
おそれ」があるときは、設備を送電網に
接続することを拒絶できることになって
いる(法案5条1項2号)。
これは、表向き、不安定な自然エネルギー
の発電設備を接続することによる支障を防ぐ
規定だが、電力会社はこれまでこれを隠れ蓑
として新規参入などを阻み続けてきた。
だから、本格的な電力の自由化でないと、
全量買取制度がうまくワークしないおそれ
がある。
これまで経産省は電力会社の都合のいい
ように本格的な電力の自由化をせず、
「なんちゃって自由化」ばかりを行って
きた。そういう官僚しか経産省では出世
しないのだ。
本格的な電力の自由化は、北欧4ヵ国
(ノルウェー、スウェーデン、
フィンランド、デンマーク)の成功例に
見られる。
北欧諸国における電力の自由化は、1991年
ノルウェーでエネルギー法、1996年
スウェーデンで新電気法、同時にノルウェー
とスウェーデンで電力市場統合、共同の
電力スポット市場(Nord Pool)開設、
1998年フィンランド、1997年デンマーク
西部地域、2000年にデンマーク東部地域
がNord Poolに加入という経緯で進んで
きた。
北欧諸国の電力産業構造は、
①多数の発電事業者、
②送電会社の設立、
③多数の地方公営配電事業者に特徴がある。
つまり、発送電分離と電力料金自由化だ。
その結果、電力本体料金は需給を反映する
自由価格、送配電料金は規制価格となって、
電力本体料金と送配電料金(それに税金)
の合計を電力消費者が支払っている。
発送電を分離して送電網を開放し
発電分野で新規参入を促進せよ
経済学の教科書では、電力は自然独占の
代表例になっていた。
というのは、電力事業では巨額の投資が
必要、しかも規模が大きいほど平均費用が
低くなる(規模の経済性)ので、
市場メカニズムでは最初に電力事業を始めた
企業しか生き残れず自然独占になるからで
ある。
この教科書の説明は、最近の技術革新を
考えると修正すべきだ。
電力事業を発電部門と送電部門に分けて
考えると、発電部門での規模の経済性は
技術進歩でなくなりつつある。
各家庭で太陽光パネルを設置し、家庭に
よっては自家消費以上に発電して、
近隣家庭に余剰電力を供給したり、地域で
小規模発電して「地産地消」するのも、
今の技術では可能だ。
しかし、送電部門ではまだ規模の経済性
が残っている。
そこで、自家発電を増強して発電を事業化
するのは容易になっても、送電は既存の
電力会社の送電線を借用せねばならなく
なる。となると、既存の電力会社について、
発電と送電を分離し、同時に送電網を開放
して、発電分野で新規参入を促し競争する
のが、国民にとって望ましい。
これは電話について、電話回線網を開放
して、いろいろな電話会社を参入させたこと
と同じ理屈だ、
これまで、電力の自由化は発電業者の
新規参入という形で段階的に行われて
きたが、送電網の開放が十分に行われ
なかった。だから、「なんちゃって自由化」
なのだ。
その結果、発電の新規参入業者も価格
決定力がなく、自由化の恩恵は大規模な
工場など極めて限定的な地域にとどまって
いる。
こうした電力の自由化に対して、東京電力
はじめ十電力会社は電力の品質などを理由
として反対してきた。
実は、電力会社が、発送電一体体制で、
巨大な原発・火力発電を作り、地域独占で
膨大な独占利潤を得る仕組みだったからだ。
このため、日本の電力料金は国際的に
みても高い。
なお、余談であるが、電力会社の反競争
行為はしばしば見られる。
今回の震災で計画停電になったが、本来
であれば、そうした緊急時には日本卸電力
取引所が機能しなければいけない。
この取引所は特定規模電気事業者
(PPS)が電気を取引するところで、東電
はそこから電力を買わずに、計画停電をして
しまったのだ。
全くちぐはぐな
菅政権の政策
本来であれば、本格的な電力の自由化を
しながら、全量買取制度をつくるべきだ。
しかし、菅政権の政策はまったく
ちぐはぐだ。
例えば、東電の賠償スキームの法案も
今国会にでている。
しかし、それは賠償のために東電を温存
するので、送電網は賠償期間中は事実上売却
できず、政策として発送電分離はできない。
というのは、資産側の送電網は5兆円と
大きいので、同時に負債側の株主・債権者
の整理も行う必要があるが、株主や債権者
を温存するので、東電のバランスシート
から切り離すのが難しいのだ。
すでに述べたような本格的な電力の
自由化は、発電方式の間のフェアな競争を
もたらし、自然エネルギーさえもその対象
となる。
こうした競争の中で、地球環境にも配慮
がなされて、地域の特色ある電源別電力構成
が形成されるだろう。
そのことは、当然原子力発電にも影響
する。
今回の原発事故の前から、自由化された
市場では、海外でも原子力新増設は敬遠
されてきた。
本当は原子力の発電コストはかなり高い
からだ。
それに今回の原発事故で賠償費用もでて
きたので、新増設は経済的に限りなく不可能
になるだろう。
米英でも採算性の劣る旧式炉や欠陥炉の
廃止が進み、採算性の優れた原発会社だけに
集中特化が見られる。
もっともそうした経済問題以外でも、
地域住民は気が気でないだろう。
そこで住民参加の方法はないだろうか。
原発について、現行では電力会社との協定
により県知事の同意が必要とされている。
これを住民投票とすることはできない
だろうか。
原発の是非については、住民の直接参加
を基本とすべきだろう。
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おっしゃる通りだと思います。
>本来であれば、本格的な電力の自由化を
>しながら、全量買取制度をつくるべきだ。
と思います。
そうでなければ思った程の効果は期待
できず必ず壁に突き当たる。
>ある閉じた系の中のエネルギーの総量は
>変化しない。
のです。
>「電気の円滑な供給の確保に支障が
>生ずるおそれ」があるときは、設備を
>送電網に接続することを拒絶できる
>ことになっている(法案5条1項2号)。
というのも電力会社にとって実に都合の
良い規定。
再生可能エネルギー促進の大きな障壁に
なる。
>東電の賠償スキームの法案も今国会に
>でている。しかし、それは賠償のために
>東電を温存するので、送電網は
>賠償期間中は事実上売却できず、
>政策として発送電分離はできない。
>というのは、資産側の送電網は5兆円と
>大きいので、同時に負債側の
>株主・債権者の整理も行う必要がある
>が、株主や債権者を温存するので、
>東電のバランスシートから切り離すのが
>難しいのだ。
というのも気にくわない。
電力の自由化が進まない。
これも、再生可能エネルギー促進の大きな
障壁になる。
とは言うものの無いよりはましで、
再生可能エネルギー促進に一定の効果は
あると思います。
但し、買い取り費用の電気料金上乗せ
は止めてもらいたい。
原発推進はどうせ出来ないのだから、
その為にとっている電源開発促進税
(年間約3500億円)は、電力の全量
買い取りに回すべきです。
電源開発の余剰金は今回の事故の
補償に回してください。
原発推進の為に積み立てているものが
あるはず。
事故の補償の負担が結局、電気料金に
上乗せなどということの無いように、
して貰いたい。
もう少し納得できる政策を打ち出して
ください。
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