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2011年6月 8日 (水)

昨年の末からiPS細胞研究に対するバッシングが激化

昨年の末からiPS細胞研究に対する
バッシングが激化

2011年06月06日
Biotechnology Japan:Webmasterの憂鬱

詳細は、リンクを参照して下さい。

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 やれ、エピジェネティクスの初期化が
特定の遺伝子部位で生じる。

 初期化の過程でがん遺伝子抑制遺伝子の
脱落が起こる。

 不適切な培養の結果、がん遺伝子の
重複などが起こる。

 iPS細胞に抗原性がある。

 そして極めつけは、ヒト皮膚の線維芽
細胞からiPS細胞が生じるのは、特殊な
多能性でありながら増殖力の弱い細胞
Muse細胞だけであるという東北大学の
出澤教授の論文(PNAS)です。

 無批判に新聞がこうした研究を取り
上げた結果、市民の間では混乱が生じて
います。

 しかし、これらの論文を一読した
だけで、科学論文としては証明が不十分
なまま、科学的な証拠から語れる以上の
ことを主張していることは、明白で
あります。

 例えば、出澤先生が主張している
Muse細胞から0.03%の割合でiPS細胞を樹立
できたが、Muse細胞以外のヒト線維芽細胞
からは0%のiPS細胞しか樹立できなかった
という報告です。

 山中教授らの研究所ではルーチンに
ヒト皮膚由来の線維芽細胞から、0.1%から
0.5%の効率でiPS細胞を樹立している
ことを考えると、一体、0.03%の樹立効率
で、すべてのiPS細胞の樹立を論議する
意味があるのか?

 この30倍もの樹立効率の違いを議論せず
に、ヒト繊維芽細胞からはMuse細胞から
だけがiPS細胞となると結論することが
できるのか?

 私は極めて疑問であると思っております。

 よしんば実験に間違いはなかったと
しても、これは言い過ぎであります。

 また、T細胞やB細胞の前駆細胞、
インスリン生産細胞、肝臓のアルブミン
生産細胞などかなり分化の進んだ細胞から
4因子などにより、iPS細胞が樹立され、
しかも追試されていることを見ると、
ますますエリート細胞(一部の細胞)
だけがiPS細胞に初期化できるという説
は、疑わしくなります。

 確かに、09年に米Stanford大学の
グループがヒト線維芽細胞にはMuse細胞に
発現している特殊な糖鎖抗原、SSEA-3の
発現量に差があり、この抗原の発現量が
高い細胞集団がiPS細胞に変わり易い
という論文を報告しています。

 出澤教授らの論文はこれの追試としては
意味があるかも知れませんが、Muse以外、
ヒト線維芽細胞ではiPS細胞にならない
というには証拠不十分です。

 当初、細胞をばらばらにする蛋白分解
酵素処理に耐久性のある細胞として定義
されたMuse細胞の詳細な生物学的な定義
も含め、iPS細胞はエリート細胞に由来する
のか?
 あるいは、偶然のプロセスによって
iPS細胞となる細胞が決まるのか?
 明白にしていただきたいと思って
おります。

 こうした研究は最終的には、iPS細胞を
誘導する初期化のメカニズムを解明する
道に繋がります。

 ただし、報道する側としては、科学者が
絶対的信仰を寄せるピアレビュージャーナル
のリビューアー達にもっとしっかりして
いただきたいと思うばかりです。

 こんな論文審査状況では、ただでさえ
国際的な生命科学研究の隆盛のために、
この領域の論文が鰻上りに増加しても、
質を維持できない。

 そのためにノイズばかりになる可能性
があります。
 科学的な真実は追試によってのみ
確かめられます。

 論文発表しただけでは科学的な真実
ではありません。

 単なる仮説提唱であり、第三者が追試
してみて初めて、科学的な真実と
みなされるのです。

 生命科学の論文のデータベースを作成
しているトムソンのデータでは、
一流科学誌に掲載された論文の30%しか、
その後引用されていません。
 つまり、追試が記述される可能性は
低いのです。

 言いっぱなしの状況にある論文を、
「一流雑誌に掲載された」ということを
根拠に、私達が信じて報道せざるを得ない
ような末期的な状況は、是非とも科学者の
良心に賭けて改善していただきたい。
 勿論、メディアも研鑽を積まなくては
なりませんが、現在の科学記者不足では
とても責任を負いかねます。

 もう論文過多で、ピアレビューでは対応
できないというなら、追試が成功した論文
に研究者がリンクを張り、信頼性を記名
にて確保するなど、新しいウェブ技術を
活用した技術突破を行わなくてはならない
のではないでしょうか?

 科学論文より、新聞ばかり読んで
政策立案する癖がある、我が国の政府も
参加する、科学者→科学誌→メディア→
政府→科学者→という”悪のサイクル”
により、論文の質の低下は、その質の低下
に乗数をかけて、科学者の環境にも
悪影響することを認識しなくてはなりま
せん。

 もう論文の質の低下とピアレビューの
質の低下は看過できない問題となって
おります。
 私は、追試の結果の情報公開こそ、
解決の鍵を握っていると思います。

 それを国家管理ではなく、資本主義の
下に自由競争でどうやって実現するのか?
 知恵の絞りどころです。

 どうやら今週、山中所長が次の技術突破
を発表するらしい。
 今頃、京大で、この件も含めて、怒りの
会見を開催しているはずです。
 最先端の研究成果を追求し、世界と
鎬を削っているiPS細胞研究所のチームが
バッシングに対抗するために、守備的な
研究に時間を割かれることは、
誠にもったいない。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?id=20079506
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>科学的な真実は追試によってのみ
>確かめられます。

>私は、追試の結果の情報公開こそ、
>解決の鍵を握っていると思います。
そうですね。そう思います。

理論物理学に似てますね。
理論だけでは駄目で、実験によって証明
されないかぎり、それは単なる理論で
あって真実なのかどうかはわからない。
理論物理と実験物理は両輪です。

守備的な研究に時間をさかれることの
ないように祈ってます。

素人としては、新聞に載れば、そんなもの
なのかな? と思うしか無い。

Muse細胞の件は確かに発生確率から見て
そう言い切れるのかな?
という疑問は湧きましたが、
いずれ明確になるでしょう。

>科学的な真実は追試によってのみ
>確かめられます。
肝に銘じておきます。

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