化石燃料脱却へのデンマークの挑戦
化石燃料脱却へのデンマークの挑戦
朝日新聞論説委員・脇阪紀行の記者ブログ
詳細は、リンクを参照して下さい。
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先週からデンマークに来ております。
酪農と風車のイメージが強いこの国は
実は、エネルギー政策や環境問題にも非常
に熱心に取り組んでいます。
北海から吹く風を利用した風力発電の
電力発電に占める割合はすでに全体の2割
に達しています。
最近では、2050年までに石油や石炭、
天然ガスといった「化石燃料」の消費に
頼らないという驚くべき目標さえ掲げて
いるのです。
この国のエネルギー事情の特色はなんと
いっても、再生可能エネルギーの利用の
多さです。
日本のように太陽光への関心はあまり
高くありません。
やはり第一に風力発電、そして、
日本では、あまり関心がありませんが、
バイオマスの利用です。
バイオマスの方からいきますと、
穀物生産や酪農の現場で出る麦わらや
糞尿といった伝統的な原料よりも、人が
日常生活で生み出される生ごみや廃棄物を
原料にして、熱や電気を生み出すやり方が
驚くほど普及しているのです。
冬に寒い地域ですから暖房は不可欠
です。そこで地域全体にパイプを埋めて、
暖気を送る地域暖房が普及していますが、
石油や石炭を燃料としていたやり方を
改め、今やバイオマスが主流になりつつ
あります。
わかりやすく言えば、ごみ焼却場が
そのまま地域暖房のエネルギーセンターに
しているわけです。
これは電力生産というより、
熱エネルギーの生産ということになります
が、日本では、誰もごみの仕分けは熱心
でも、ごみ焼却場といえば、「迷惑施設」
というイメージが先行してしまい、
エネルギー利用にまでは思いが及んで
いないのが実情ではないでしょうか。
他方、電力生産の方ですが、
2009年の電力生産に占める比率を
見ると、風力が19%、バイオマスが
10%と再生可能エネルギーの合計が
29%を占めています。
残りの71%が、石炭や石油、天然がす
などの化石燃料を使った発電です。
デンマーク政府は2020年には、
この構成比を風力42%、
バイオマス20%、化石燃料38%にする
目標を立てております=グラフ下。
ずいぶん大胆な目標だと思う方が多いと
思いますが、これで驚いてはいけません。
最近発表された
「エネルギー戦略2050年」という文書
では、この化石燃料の比率をさらに下げて、
2050年には「ゼロ」にする、という
のです。このあたりの詳細は、帰国後、
紙面にて報告できたらと考えております
が、正直言って、最初は「ちょっと無謀
ではないの」と思いたくなる目標では
ありました。
ただ、デンマーク政府は生真面目にも、
化石燃料の利用量が次第に減っていく
グラフまでこの戦略文書に示して、国民を
鼓舞しているのです=2020年までの
グラフは下。
見えにくかもしれませんが、黄色の線が、
再生可能エネルギーが増えている現在の
トレンドを続けた場合の化石燃料利用減少
の予想図。
黒い緑の線が、政府が今後さまざまな
政策が効果をあげれば、化石燃料利用が
さらに減るという予想図です。
電力生産の主役として期待されている
のが風力発電です。
昔から農業に風車を利用してきた伝統
のある国です。
いまや西部、北部の海岸部を中心に全土
に風力発電の塔がたっていますが、一方で、
タービンの起こす騒音への苦情も増えて
おり、これからは洋上での大型風力発電を
中心にしたいと政府は考えております。
風車の直径が100メートルとか
200メートルとか、想像を絶する超大型
の風力発電機が登場しつつあります。
最後に、沿岸部にある廃棄物エネルギ―
生産施設、日本流にいうなら大型ごみ
処理場を訪れた時に、屋上から見えた風力
発電機の印象を記しておきましょう
=写真下。
海風にあたりながら、風車がくるくる
回っておりました。
対岸にスウェーデンが見えておりました
が、案内の人が、その海岸部にある小さな
煙突と建物を指して、「あれば閉鎖された
バルセベック原発ですよ」といって、
教えてくれました。
1980年の国民投票での「脱原発」
支持の世論を受けて、スウェーデン政府が
閉鎖を決めた原発です。
福島第一原発のような深刻な事故を
起こしたわけでもありませんが、
稼働約30年で2基の原発が閉鎖され
ました。
原発と風車。この両者の鮮やかな対比に
一瞬、目のくらむような思いが
いたしました。
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何が違うのでしょうか?
私にはうらやましく思えます。
政府には戦略がある。
結局は、国民一人一人の考え方が
変わっていかないと変わらないのは
確かだし、強いリーターシップもないと
又、変わらないのも確かなのではと思う。
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