原発事故賠償金の国民負担を少なくし電力料金引き下げも可能な処方箋を示そう
原発事故賠償金の国民負担を少なくし
電力料金引き下げも可能な処方箋を示そう
2011年5月12日 DIAMOND online
詳細は、リンクを参照して下さい。
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東電の賠償スキームそのものは単純だ。
賠償は原子力損害賠償法に基づいて
行われるが、これまで政府が明言している
ように、同法3条但し書きによる免責が東電
に適用されない。
となると、東電が責任をもって行う
こととなる。
一方、東電の責任を超える部分は、
被災者の泣き寝入りは容認することが
できないので、政府、つまり国民が負担
することになるだろう。
ということは、
「賠償額=東電負担分+国民負担分」と
いう公式が成り立つ。
ここで、東電負担分は、東電のステーク
ホルダーである株主、債権者、経営者
・従業員のいずれかが負担する。
また、国民負担分は、税負担か電力料金
値上げになる。
さらに、負担関係をきっちり具体的に
把握するには、東電のバランスシート
(BS)を見なければいけない。
資産は13.2兆円、負債のうち流動負債
1.9兆円、固定負債8.8兆円
(うち社債4.7兆円)、純資産2.5兆円
(2010年3月末。連結ベース)。
東電の賠償スキームでは、現状の
バランスシートにいろいろな要素を加味
する。
まず資産側だが、原子力損害賠償法に
基づき、東電は原子力損害賠償責任保険に
加入する義務があり、福島第一原発で
0.1兆円だ。
さらに、この責任保険でカバーできない
範囲については、国が東電を相手として
原子力損害賠償補償契約を結んでいる。
これは2011年度予算で2.3兆円だ。
これは国民負担である。
その一方、今回の原発問題への賠償は
一義的には東電にかかる。
仮にその金額を10兆円とし、負債側に
加える。
賠償額が10兆円まで達しないとしても、
その金額が株主資本2.5兆円と保険0.1兆円
の合計2.6兆円を超えると債務超過になる。
東電社長がすでに政府の支援を求めて
いることからわかるように、とても2.6兆円
で収まるはずなく、東電は既に実質的に
債務超過状態である。
以上を踏まえた上で、政府案(プランA)
をみてみよう。
海江田万里経産相は、東電のステーク
ホルダーである東電株主を救済する意向を
示している。
東電の個人株主は多く、天皇家もそうだ
といわれている。
株主を保護する以上、債権者も保護
されるはずだ。
他のステークホルダーである経営者
・従業員については、経営者で役員報酬の
全額返上などがいわれているが、金額的
にはたいした話でない。
企業年金までカットするのであれば、
数千億円程度は国民負担が減るが、
そうした話は出ていない。
となると、政府案(プランA)は、東電
負担はなく、賠償額のほとんどが国民負担
になる。
国民に負担してもらうについては、東電
の不始末を増税というわけにはいかない
ので、電力料金の値上げという形になる。
また、東電が温存されるので、地域独占
や発送電一体などの現行の仕組みは
ほとんど変更されることなく継続される
だろう。
もう一つ、政府案とは対極のもの
(プランB)を考えてみよう。
東電のステークホルダーである株主や
債権者に負担を負わすものだ。
もし株主に本来の役割を持たせるなら、
100%減資すれば2.5兆円も国民負担は減少
する。もし債権をカットすれば、その分は
さらに国民負担は減る。
もっとも債権のカットには技術上の問題
がある。電気事業法37条に基づく一般担保
による優先弁済だ。金融機関関係者は
これを主張し、被災者への賠償より自らの
債権を優先弁済すべきという。
まず担保でカバーされている東電の債務
は、負債計10.7兆円のうち5.2兆円しか
ない。そこで担保なしの債権について、
債権カットを電力事業に支障の出ない範囲
で行うとすると、3.6兆円も国民負担は減少
する。100%減資の場合と合わせて6.1兆円
も国民負担が減る。
プランBでは、東電は解体されるが、
その過程で、事業や資産の売却が
行われる。
たとえば、5兆円以上の資産として東電の
BSに計上されている送電網を売却して、
賠償金の原資とすることができる。
そうなると、電力自由化のキモである
送電と発電の分離を実務上同時に達成
できるのだ。
電力が地域独占というのは経済学の
教科書にもあるが、それは電力事業のため
には巨額な設備投資が必要だから、
自然独占になると説明されてきた。
ところが、電力事業を発電と送電に分け
ると、そのロジックは送電に当てはまるが、
発電は最近の技術進歩によって当てはまら
なくなった。
ということは、電話では電話網を開放
していろいろな事業者を新規参入させた
ことによって電話料金が低下したように、
送電と発電を分離し、送電網を開放し発電
では新規参入させたほうがいい。
日本でも、エネルギー関係や他の公益
事業など多くの業者が発電での新規参入を
考えている。
送電と発電の分離によって送電網を開放
することは、欧米では当たり前だ。
しかし、日本では送電網の開放が不十分
で電力発電の新規参入が少なく、電力料金
は国際的にも割高になっている。
かつて日本の電力料金が高いのは停電が
ないからだと豪語されていたが、今は
無計画な「計画停電」があるので、そんな
強弁もできない。また、省エネに役立つ
スマートグリッドが日本で進んでいない
のは、送電網が開放されていないからだ。
日本経済の将来を考えれば、電力料金は
すべての産業の基盤になり、それが国際的
に高いのは、日本の産業の国際競争力を
低下させるので不味い。
政府案のように東電温存・送発電の分離
できず・電力料金引き上げという道をとる
のか、プランBのように、国民負担を
少なくするとともに、東電解体・送発電の
分離・電力料金引き下げという道をとるか、
という日本経済にとって重要な岐路である。
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「国民負担を最小に」というのであれば、
当たり前の議論と思う。
各電力会社に地域独占体制を約束する
ような案で良いはずがない。
同様の議論は幾つも紹介しました。
これで最後にします。
あとは、見守るのみ。
政府は口では金融機関に債権放棄をせよと
言っているようだが、紹介した記事内容
によれば、実現しないでしょう。
このままだと多分、
賠償額=東電負担分+国民負担分
なのだが、東電負担分はそれほど
ではなく、殆どが国民負担となり、
改革などほど遠いことになる。
東電、東電と言って政府の責任追求は
蚊帳の外、政府はどう責任をとるのか?
東電の存続の手助けをするだけ?
政府は、今までの政策の誤りを素直に
認め、謝罪し、改革することが必要
なのではないですか?
それが責任の取り方のひとつでは
ないのでしょうか?
改革出来なくてどんな責任の取り方が
あるのでしょうか?
税金も下がらない、電気料金も高いでは
海外に逃げだす企業も出てくるかも
しれない。
今回の原発事故で日本の電力政策は破綻
したに等しい。
どう変えて行こうとしているので
しょうか?
根本的な改革なしでどうして将来に
期待が持てますか?
理解に苦しむ。現状維持が改革ですか?
現状のままでどうして再生可能エネルギー
の比率が上がるのでしょう?
ウランにせよ、化石燃料にせよ、有限な
エネルギー。いずれ枯渇する。
そんなに遠い話ではないと思う。
資源の無い国日本を、いつまでに、
どう改善していくつもりなのか示して
ほしい。
以前投稿した下記記事
「化石燃料脱却へのデンマークの挑戦」
がうらやましい。
きちんとした目標があり、公開している。
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