放射線の影響 追跡60年
放射線の影響 追跡60年
朝日新聞アスパラクラブ
科学面にようこそ
詳細は、リンクを参照して下さい。
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放射線は人体にどんな影響を与えるのか。
広島・長崎の被爆者たちの健康調査で
多くのことが分かっている。
大きな犠牲から得られたデータは、
世界の放射線防護対策の基礎となっている。
健康調査は、1947年に米国が設けた
原爆傷害調査委員会(ABCC)が始め、
75年から日米共同運営の
「放射線影響研究所(放影研)」が
引き継いだ。
被爆者9万4千人と、そうでない
2万7千人を生涯にわたり追跡調査。
うち約2万人は2年に1度の健康診断や
生活習慣調査を続けている。
放影研の大久保利晃理事長は「系統的な
長期調査で、世界が必要とするデータを
発信できた」と話す。
国際放射線防護委員会(ICRP)の
委員で大分県立看護科学大の甲斐倫明教授
も「放射線のリスク推定で決定的な役割を
果たすのが放影研のデータ。
ICRPもこれを基本に計算している」
と説明する。
◇広島・長崎調査、世界の防護策の基礎
■がん
被曝(ひ・ばく)後10年目ぐらいから
乳がんや胃がん、大腸がん、肺がんなどに
かかる人が増え始める。
統計で、被曝していない人より多いと
明確なのは200ミリシーベルト以上浴びた
場合だけだ。
通常、30歳から70歳までにがん
になる人は30%。
30歳で200ミリシーベルト浴びると
33%に上がる。
100ミリシーベルトの場合は、計算上
は31・5%だが、追跡調査では判別
できない。
喫煙の有無による差の方が大きく、少量
の放射線による差は統計をとっても数字に
表れないからだ。
被曝年齢が低いほどリスクは大きく、
女性は男性よりリスクが若干大きいことは
わかっている。
■白血病
被曝から2年で増え始め、子どもは同年齢
の発症率の数倍に増えた。
6~8年後から患者は減り始め、20年
ほどで日本人の平均レベルになった。
発症率の増加は大きいが、比較的まれな
病気で、被曝で増えた患者はがんに比べ
少ない。
■胎児
妊娠何週目の被曝かで大きな差があった。
一番影響が大きかったのが、妊娠8週
から15週。
被曝線量が多いほど知的障害児が生まれる
割合が増えた。
「200ミリシーベルトまでは発生頻度
が上がるようには見えない」と放影研の
中村典(のり)主席研究員は言う。
16週から25週では
500ミリシーベルトを超えてから頻度が
増え、0週から7週と26週以降では
影響は見られなかった。
■遺伝
親が被爆者の「被爆二世」について、
死産や奇形、染色体異常の頻度に親の被曝
の影響は見られなかった。
小学生になったときの身長、体重など
にも影響はなかった。
2007年には、糖尿病や高血圧など
6種類の生活習慣病について約1万2千人
の健康診断結果が報告され、「遺伝的影響
は見られない」と結論づけられた。
ただ、原爆は一度に放射線を浴びており、
事故などによる比較的低いレベルの放射線
を長期間受ける場合の健康被害は分かって
ないことも多い。
■キーマーク■
被爆と被曝
原爆の被害を受けるのが被爆。
放射線にさらされることは被曝と書く。
被爆者の放射線被曝量を推定し、
健康影響との関係が調べられてきた。
《筆者の高橋真理子から》
3月11日以来、放射線の人体への影響
について多くの記事が紙面に出ました。
「低い線量なら心配はいらない」という
専門家の談話も何度か載りました。
では、低い線量とはどれだけなのか?
資料を見てみただけでは、
1ミリシーベルトから250ミリシーベルト
まで、いろいろな数字が出てきます。
専門家に聞いても「いろいろな場合が
あって一概にはいえません・・・」という
説明が返ってくるだけ。
ただ、誰もが、人間に対する影響で一番
しっかりしたデータがとれているのは
広島・長崎の被爆者調査だと言いました。
それなら、広島・長崎のデータから
今わかっていることを知りたい。
たとえ様々な限界があるとしても、限界
も含めて詳しく理解したい。
そんな思いで、放射線影響研究所の
中村典・主席研究員の助けを借りながら、
膨大な研究成果の中から私が大事だと考えた
四つのポイントについてまとめたのが
今回の記事です。
放影研は日米共同運営の研究機関です。
大久保利晃理事長は「WHOもIAEA
も研究機関ではありません。
でも、国際的な研究センターは必要です。
放影研が国際機関の一部へと発展すること
を目指していきたい」と話していました。
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高橋真理子さんご苦労様でした。。
事実を正確に知ることが大切だと思って
います。
その意味で今回の記事は素晴らしい。
明快です。
多くの被爆者達から得た貴重なデータ。
生かしたい。
遺伝への影響ないんですね。
被爆者たちの受けた苦しみは繰り返さない
ようにしたい。
>100ミリシーベルトの場合は、計算上
>は31・5%だが、追跡調査では判別
>できない。
>喫煙の有無による差の方が大きく、少量
>の放射線による差は統計をとっても数字に
>表れないからだ。
そうなんですね。
低レベルの放射線を浴びたときにどんな
影響がどの位でてくるのか?
どうやって調査したら良いのでしょう?
高自然放射線地域での調査などは有効
なのかもしれません。
必要以上に恐れることの無いように、
又、風評被害を防ぐ意味でも、
国際的な研究センターが必要と思います。
そして正確な情報を世界に向けて発信して
欲しい。
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