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2011年4月 9日 (土)

抗体医薬がアンメット・ニーズを解消する手がかりに

抗体医薬がアンメット・ニーズを解消
する手がかりに

2011年04月06日
Biotechnology Japan:Webmasterの憂鬱

詳細は、リンクを参照して下さい。

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 2011年3月25日(メールで3月28日と報道
したのは間違いでした)、
米国食品医薬品局はヒト抗CTLA-5抗体
「YERVOY」(Ipilimumab)の販売認可を
米Bristol-Myers Squibb社に与えました。

 悪性黒色腫に対して世界で初めて
延命効果が証明された医薬品です。

 手術不能の悪性黒色腫と転移性の
悪性黒色腫に適応が認められました。

 悪性黒色腫の予後は悪く、画期的な
医薬品の登場が待たれていました。

 抗体医薬が再び、アンメット・ニーズ
を解消する手がかりを与えました。
http://packageinserts.bms.com/pi/pi_yervoy.pdf

 YERVOYの画期的なことは、この抗体を
使ってT細胞性の免疫反応を人類が操作
できるようになったことです。

 B細胞性の免疫反応は3月9日に
米国食品医薬品局が販売認可した
ヒト抗BLys抗体「Benlysta」(Belimumab、
英国GlaxoSmithKline社)によって操作
できるようになりましたので、この春は
人類が免疫の微調整の手段を獲得した
画期的な春となったと考えています。

 BenlystaはB細胞性の自己免疫疾患
であるSLEの特効薬です。
 活性化したB細胞性免疫を抑制して、
治療効果を発揮します。

 YERVOYはT細胞性免疫を抑制している
CTLA-4に結合し、そのリガンドである
CD80/CD86との結合を阻止して、T細胞を
活性化します。
 ポイントは抗原特異的にT細胞性免疫を
亢進する(して欲しい)という点です。

 悪性黒色腫によってがんに対する免疫抑制
がかかっている患者さんに投与すると、
悪性黒色腫特異抗原に対するT細胞性免疫
を誘導し、がん細胞を死滅させると期待
されているのです。

 がんワクチン療法でよく見られる、
がんワクチン投与後に免疫が抑制されて、
治療効果が減殺される免疫抑止メカニズム
を解除する可能性があるのです。

 CTLA-4は抑制性T細胞(Treg)にも発現
しており、Tregの免疫抑制も解除する
可能性があります。

 今までのステロイドやFK506、
抗CD3抗体、抗CD20抗体が免疫系を抗原
によらず抑止する全面停電というならば、
新しい免疫調整抗体医薬は計画停電です。

 これは例えが悪過ぎましたが、もっと
ちゃんと言うと、抗原特異的に免疫系を
微調整する可能性を拓いたと
言えるでしょう。

 免疫反応は過去の抗原暴露の履歴と
遺伝的な背景によって決まります。
 こうした抗体医薬は遺伝的な
個の医療だけでなく、患者さんのライフ
スタイルの多様性によって生じる免疫反応
の多様性にも対応できる次世代の個の
免疫調節薬ともいえるでしょう。

 ただし、楽観は禁物です。

 YERVOYの臨床試験では悪性黒色腫患者を
対象に、がん特異たんぱく質gp100の
ペプチドワクチンをベースに、YERVOYの
有無で患者さんの全生存期間を比較
しました。

 その結果、gp100のみ投与した患者群の
中央値は6ヶ月、YERVOY単独と
YERVOY+gp100には差がなく、共に10ヶ月
でした。
 ワクチンによる抗原特異的なT細胞性免疫
を誘導するという上乗せ効果をYERVOYは
示せなかったのです。

 また、もっと深刻なのは、非特異的な
T細胞性免疫反応の活性化が副作用として
起こることです。
 30%以上の患者で消化管症状(大腸炎、
下痢)や皮膚反応が生じます。
 また、40%以上が疲労感(リンフォカイン
の分泌が原因だと思います)を訴えました。
 微調整と申しましたが、まだまだ荒っぽい
T細胞性の免疫操作に過ぎないのです。

 先月、東京で開催された癌ワクチンの
シンポジウムに来日したNCIの研究者が、
そっと耳打ちしてくれました。
 「抗CTLA-4抗体は副作用がきつい。
 抗PD-1抗体の方が副作用少なく、
抗原特異的なT細胞性免疫を誘導できる」
と。

 この抗体こそ、京都大学が開発し、
小野薬品が米Bristol-Myers Squibb社と
現在、フェーズ2臨床試験を進めている
ONO-4538/MDX-1106でした。
 我々の足元に、有望な免疫調節抗体医薬
があったのです。
 イスラエルのCuraTech社も抗PD-1抗体
(CT-11)を米国でも臨床開発中で、
もちろん、小野薬品も安穏としてはいられ
ません。

 世界は急速に個の医療へと進んでいる
のです。
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>悪性黒色腫に対して世界で初めて
>延命効果が証明された医薬
だそうです。

競争激しいですね。

まだまだ荒っぽいとのことですが、
この春は
>人類が免疫の微調整の手段を獲得した
>画期的な春となったと考えています。
とのことです。
期待したい。

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