計画停電が日本の製造業をさらに弱体化する
計画停電が日本の製造業をさらに
弱体化する
周波数の違いを乗り超えて関東に
電気を送るには
2011年3月30日 日経ビジネスONLINE
詳細は、リンクを参照して下さい。
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東京電力の計画停電が、エレクトロニクス
やバイオ・メディカルなどのハイテク産業に
大きなダメージを与えている。
1日に3時間停電すると、まず
クリーンルームが使えなくなる。
クリーンルームは連続運転してはじめて
そのクリーン度が保てるからだ。
また、MOCVD(有機金属気相成長法)
などの半導体成長装置や、さまざまな
プロセス装置が動かせなくなる。
3時間だけでも休止することになると、
その間、反応炉やプロセス装置を窒素など
で充填してじっと置かざるを得ない。
すると休止中に空気中から不純物が混入
するために、作製する半導体や薬品の純度
が悪くなって、できあがる製品の品質や
性能が著しく下がるからだ。
これが自主停電であれば、例えばA社は
土曜日から火曜日まで連続稼働、B社は
水曜日から土曜日まで連続稼働、などと
生産計画の管理をすることができる。
そうすれば、残りは休日として社員は
被災地へ救援活動に行くことも可能になる。
連続生産を阻む計画停電
ところが今回の計画停電の実施方法では、
不定期で停電の時間が割り当てられている
うえ、実際に停電が実施されるかどうかは
前日か当日にならないとわからないので、
連続稼働のスケジュールを組みにくい。
また、従業員がまとまった休日を取る
ことも難しくなる。
日本の屋台骨をささえてきたハイテク産業
に深刻なダメージを与える計画停電は、
いつまで続くのだろうか。
企業の技術経営とその未来戦略を研究
してきた私のもとには、惨状を訴える関東の
ハイテク企業からの悲鳴が数多く寄せられて
いる。
彼らは「もし計画停電が今夏まで続くよう
ならば、西日本もしくは国外に脱出する決意
を今、しなければならない」という。
そこでこの電力危機を回避する抜本的な
方法を考えるために、まず東京電力の供給量
を分析しておこう。
今回の地震以前の東京電力の発電量は、
水力発電=899万キロワット(KW)、
火力発電=3819万KW、
原子力発電=1731万KW、
風力・地熱発電=3800 KWの計6449万KW。
ただし水力発電のうち600万KWは、
余剰深夜電力を使って水を上げておく
揚力発電であって余剰電力のない状態では
使えない。
また原子力発電のうち597万KWは
現在点検中(注1)。
したがって、地震以前の事実上の
総発電能力は、6449万KWから600万KWと
597万KWを差し引いて5252万KW。
注1:柏崎刈羽原子力発電所2-4号機の
計330万KWと福島第1原子力発電所
4-6号機の計267万KW
今回の原子力発電所事故で福島第一原子力
発電所からの203万KWと第二原子力発電所
からの440万KWの計643万KWが失われ、
さらに地震により計715万KWの火力発電所が
今も停止している(注2)。
したがって現在、東京電力の最大総発電量
は、地震前の総発電量5252万KWから
原子力発電所喪失分643万KWと火力発電の
停止分715万KWを差し引いて、3894万KW。
もしも停止した火力発電所が今夏までに
稼働できれば、最大発電能力は4609万KWと
見込まれる。
注2:広野2号機=60万KW、
広野4号機=100万KW、
常陸那珂1号機=100万KW、
鹿嶋2号機=60万KW、鹿嶋3号機=60万KW、
鹿嶋5号機=100万KW、鹿嶋6号機=100万KW、
大井2号機=35万KW、東扇島1号機=100万KW
では、他の電力会社から電力を融通して
もらえないのか。
東京電力と同じく周波数50Hzを採用する
電力会社は、震災被害を受けた東北電力を
のぞくと、北海道電力がある。
しかし、北海道電力からの送電は津軽海峡
を渡る際に直流に変換されており、
その変換装置に60万KWの上限がある
(現在、東北電力を助けるために全出力で
稼働中)。
一方、東京電力より西にある7電力会社
は、すべて60Hzを採用しているため、
東京電力に電力を融通するには、周波数を
60Hzから50Hzに変換する必要があって、
その融通電力の上限は、100万KW(注3)。
したがって、現時点での東京電力の
最大供給能力は、4609万KWに100万KWを
足して、4709万KWとなる。
注3:新信濃変換所=60万kW、
佐久間変換所=30万kW、
東清水変換所=10万kW
一方、東京電力管内における電力の
ピーク需要量は、過去5年を平均すると
真夏の日中に6147万KWとなる。
よって、たとえ地震によって停止した
火力発電所が今夏までに復帰したとしても、
約1400万KWが不足する見込みだ。
そのため、政府は計画停電のさらなる
拡大を容認するばかりか事業者ごとに
電力使用量の総量規制を実施することまで
をも検討しているという。
すでに述べたように、ハイテク産業に
おける計画停電は、停電時間をはるかに
超えた悪影響を及ぼす。
また量産工場への電力総量規制は、
生産量にもろに跳ねかえる。
したがって政府が、東京電力の計画停電
のさらなる拡大と継続を容認し、かつ事業者
への電力総量規制までをも実行するならば、
日本のGDP(国内総生産)へのマイナスの
影響は、震災被害(政府は直接被害額を
最大で25兆円と推定)を超えるのでは
ないかと懸念する。
この危機を回避する第1の方法は、
中部電力と東京電力の境界に周波数変換所
を増設することだ。
しかし変換所1カ所で、変換できる電力は
60万KW程度なので、不足する約1400万KWを
まかなうためには24カ所を設営しなければ
ならない。しかもこの変換装置は、電力ロス
が大きい。よって長期的には無駄な投資と
なりかねない。
第2の方法は、火力発電所を増設する
ことだ。しかし、たった4カ月で用地買収や
数多くの法規制をクリアして約1400万KW分
の火力発電所を増設することは、
現時点では、ほとんど期待できない。
西日本から電力を送る仕組みをいそげ
そこで、第3の方法を提案したい。
それは60Hzの電力をつくる西日本の
6電力会社(中部電力、関西電力、
北陸電力、中国電力、四国電力、
九州電力。
いうまでもなく沖縄電力は電力を融通
できない)と、電源開発や日本原子力発電
などの卸売電力会社(注4)が結束し
コンソーシアムを結成して、新しい
電力会社を関東に作るという方法である。
注4:電源開発の最大出力は1639万KWで、
その9割の発電所が西日本にある。
その稼働率は7割以下と推定される。
日本原子力発電の最大出力は261万KW
この新電力会社は、発電所をすぐに
建設する必要はない。
単に、中部電力側から60Hzの送電線を
関東に向けて延長し、60Hzの電力を供給
していくだけだ。
送電線を伸ばす鉄塔を新設する必要は
なく、東京電力の高圧鉄塔をレンタルして、
東京電力既設の50Hz送電線と並列に相乗り
させる。
東京電力は「鉄塔が荷重に耐えられない」
として反対するだろうが、25パーセント程度
の重量増は設計マージンよりはるかに少なく
技術的に何ら問題はないはずだ。
また、一部の送電線は、現在の一系統を
専用使用のためにレンタルできる可能性も
ある。高圧変電所(27万5000ボルト以上)
だけは新規に設置する必要があるものの、
その数は東京電力管内で74か所と多くない。
しかも工場集積地区に重点投資すること
でその数を10カ所以内に絞ることができる。
これならば、政府の許認可などの問題や
資材調達が間に合えば、約1400万KW分の
電力供給体制を4カ月以内に用意することが
可能になるのではないだろうか。
顧客は、連続運転が不可欠な
ハイテク工場や情報通信サーバー会社など。
東京電力の事実上の独占体制から脱したい
と希望する企業が賛同するかもしれない。
それぞれの顧客が電気機器を60Hz化する
のは、大型の施設を建設することと比較
すれば、ほとんどコストがかかることでは
ない。直流駆動の電子機器をはじめ、
最近ではほとんどの電気機器は50Hz・60Hz
両方に対応する。
エレベーターや空調設備などに使われて
いる交流モーターのみが影響を受けるが、
これらだけ東京電力の低圧電力(別契約の
いわゆる「動力」)を当面使用したままに
しておけばよい。
この方法は、今夏に必ずやって来る
電力危機を救うのみならず、競争環境を
ついに首都圏で実現することによって、
事実上の地域独占の上にあぐらをかいて
きた東京電力の技術経営を、目覚めさせる
であろう。
さらには、福島第一原発の周辺で起こる
であろう土地買い上げやさまざまな被害者
への賠償によって、経済的困難に陥ることが
予想される東京電力に対して、その従業員の
雇用の受け皿を提供することになるだろう。
実現に向けては、さまざまな困難が待ち
受けているかもしれない。
だが、第1、第2の方法と比べると、
コストパフォーマンスなどの面からも、
真剣に考えてみる価値はあるのではない
だろうか。
政府は自らリーダーシップをとり、
可及的速やかにこの戦略にむけて動き出す
べきだ。さもなければ、関東は、今夏必ず
電力危機に見舞われるだけでなく、すでに
危機に直面しているハイテク産業は、
夏を迎える前に西日本ないし国外に逃げ出さ
ざるを得なくなる。
日本のハイテク産業の危機がいま目の前に
あることを、政府は真剣に直視してほしい。
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私はこの辺の事情に詳しくないので、
なんとも言えませんが、筆者の言うことが
正しければ、良い案のように思えます。
そもそも現在実施している計画停電は
あまりにも、東電の自分勝手な施策に
思えます。
それを政府が容認していることに違和感を
覚えます。
政府は自らリーダーシップをとり、可及的
速やかに何らかの手を打つべきです。
東電の言いなりのように見えてなりません。
計画停電は愚策以外のなにものでもない
ように思えます。
何故関係者を集めて、自主的なピーク電力
抑制策を決めないのでしょうか?
問題発生元の東電の言いなりですか?
こんな施策で良いのでしょうか?
政府はどう考えているのでしょうか?
今のままでは、ますます日本の経済は
停滞します。
停電対策にとって重要なのは、ピークを
いかに抑えるかであって、電力の節約では
ありません。
ピークが総発電量を超えるとブラックアウト
が起こります。
節約も一つの施策ではありますが、
ブラックアウト対策とは別のものです。
別に考えなくてはいけないことです。
無駄は極力なくすべきですが、
節約は経済を縮小します。
この編のバランスが必要だと考えます。
電力が余っている夜にせっせと節電
してもブラックアウト対策にはならない
のです。考えてみてください。
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