日本発の「超高純度鉄」 世界標準へ
日本発の「超高純度鉄」 世界標準へ
2011/2/25 日本経済新聞
詳細は、リンクを参照して下さい。
2009年9月22日に投稿した
「重い存在「鉄」新時代」
のその後の状況になります。
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日本生まれの「超高純度鉄」が世界の
標準物質として活用される。
開発者の安彦兼次・東北大学客員教授が
日本とドイツの関連機関に登録を申請し、
このほど認定を受けた。
高温に強くさびないという優れた特性を
持ちながら、量産が難しく高価なため応用
はこれからだ。
世界標準の認定が用途開拓の突破口になる
だろうか。
純度99.999%、重量約80キログラムの
超高純度鉄(超高純度金属材料技術研究
組合長崎試験場で)
超高純度鉄が登録されたデータベースは、
製品評価技術基盤機構の「標準物質総合情報
システム」と、独連邦材料試験研究所が
主宰する「国際標準物質データベース」だ。
米国立標準技術研究所も関心を示して
おり、世界で最も純度の高い鉄として世界
で公式に認められそうだ。
安彦客員教授は「このテーマに47年間
取り組んだ集大成」と感慨深げだ。
超高純度鉄は、純度が99.9996%と市販
されている高純度鉄よりも不純物の量が
さらに100分の1と少ない。
性質は一般の鉄とは全く違い、表面が銀色
に輝きさびない。
塩酸につけても溶けず、教科書で習う金属
のイオン化傾向の常識が成立しない。
柔らかいため、たたいて加工しやすいが、
極めて割れにくく簡単に切断できない。
こうした特性を生かす用途を見つけよう
と、安彦客員教授は新エネルギー・産業技術
総合開発機構(NEDO)や科学技術振興
機構の支援を受けて応用開拓を目指して
きた。NEDOの事業では産業界と協力
して「超高純度金属材料技術研究組合」を
設立。核燃料の被覆管など厳しい耐熱強度
が求められる用途を想定し、長崎市内に
100キログラム級の超高純度鉄を作れる
試験炉を完成した。
この2月には、米独の機関に送るため、
純度99.999%で重量約80キログラムの試料
を作った。
しかし現状では、産業界がすぐ飛びつく
段階には至っていない。
一番の壁はコストだろう。
市販の高純度の鉄は1キログラム当たり
100万~200万円する。
超高純度鉄がそれを上回るのは確実。
電力会社のほか素材や重工メーカーは
採用に及び腰だ。
研究組合の活動期間は2010年度までで、
このまま事業段階への移行は難しい。
国際標準の認定は、産業応用に向けて
“つなぎ”の役割を果たすと安彦客員教授
らは考えている。
大学や企業が新たに開発する鉄系の材料
の成分を分析する際、この超高純度鉄が
基準になる。これまでの高純度鉄よりも
精度の高い分析が可能になる。
データベースに登録されたことで、
多くの研究者の目に留まるようになる。
従来の鉄を上回る性質が広まれば、
使おうとする研究者が現れる。
すでにベルギーの研究者から「原子力発電
の燃料棒用に最適ではないか」と問い合わせ
があるようだ。
これほどの超高純度鉄を作れる拠点は、
東北大金属材料研究所(仙台市)と長崎に
ある試験炉の2つだけ。
かつて米マサチューセッツ工科大学や
独マックスプランク研究所、
仏サンテティエンヌ国立鉱山大学など
名だたる金属研究グループが挑んだが、
せいぜいグラム単位の高純度鉄ができた
程度。80キログラムは驚異的といえる。
先進国で金属の基礎研究が廃れてきた
とはいえ、標準物質に対する意識は欧米
研究者の間で高い。
その欧米の研究者から、世界標準の鉄を
作る研究拠点として日本は先頭を走っている
と認められている。
安彦客員教授はこれを機に、これまでの
ノウハウを次の世代に引き継ぐ国際的な
拠点を整備する構想を温めている。
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世界標準の認定おめでとうございます。
なかなか日本で出来たものが世界標準に
なるというのはなかなかないですから、
とはいえ、前途は多難なようです。
1キログラム当たり300万円位?
なのかな?
どんな用途に向いているのでょうか?
折角の世界標準なんとか生かしたいですね。
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