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2011年1月16日 (日)

不死細胞HeLa(ヒーラ) だれのもの

不死細胞HeLa(ヒーラ) だれのもの
朝日新聞アスパラクラブ
科学面にようこそ

詳細は、リンクを参照して下さい。

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 「HeLa(ヒーラ)」という名前の細胞
を知っていますか?
 人工的に培養され、無限に増える能力を
持つヒトの細胞だ。

 誕生からちょうど60年。
 世界中で培養され、病気や薬、細胞の
メカニズムなどあらゆる研究に使われて
きた。しかし、HeLaの物語は、科学に
大きな課題を突きつけている。

◇世界での貢献 遺族は20年余知らず
 大阪府茨木市、医薬基盤研究所の細胞
バンク。タンクのふたを開けると、
マイナス196度の液体窒素の煙の中から
金属のタワーが現れた。
 そのラック一つに80本ずつのガラス製
アンプルが納められている。

 「これ1本に100万個のヒトの細胞が
はいっています」。
 小原有弘研究員が説明した。
 収集した細胞を培養してストックし、
国内外の大学や研究機関、製薬会社などに
有償で提供している。
 年間約3500本。

 ヒト細胞の培養は現在、世界で当たり前
のように行われているが、出発点はひとりの
女性の細胞だった。

◇はじまりは米女性
 ヘンリエッタ・ラックスさん。
 米バージニア州のたばこ農家出身の
黒人女性で5人の母。
 30歳の1951年1月に腹部に
しこりが見つかり、ジョンズ・ホプキンス
病院を受診した。
 子宮頸(けい)がんだった。

 担当医は、ヘンリエッタさんから
がん組織を切り取ってジョージ・ガイ博士
に渡した。
 ガイ博士は、ガラス管の中でも育つ
ヒト細胞を作ろうと20年以上研究
していた。

 細胞培養はカエルやマウスでは実現して
いたが、ヒトでは誰も成功して
いなかった。ヒトの正常な細胞は、むやみに
分裂しないような機能や、不具合があると
自死する品質管理の仕組みがある上、50回
ほど分裂すると寿命を迎える。
 だから、培養しても増えずにすぐ死んで
しまう。

 ところが、ヘンリエッタさんから採取した
細胞は、24時間で倍になるほど急激に増殖
し、死ななかった。

 「不死化の原因は子宮頸がんを引き起こす
ヒトパピローマウイルス(HPV)にある」

 国立がん研究センター研究所の清野透・
分野長は言う。
 HPVの遺伝子が正常細胞の寿命と分裂
にかかわるスイッチをいじって、不死化し
無限に増えるようになる、という。

 「ヘンリエッタ・ラックス」の頭文字から
HeLaと命名。
 ガイ博士はHeLaを使ってポリオ
ウイルスを増殖させることにも成功した。

◇活用 ノーベル賞も
 HeLaは世界中に提供され、
がん研究や製薬などに役立てられた。
 核兵器による放射能の影響調査にも
使われ、無重力での細胞増殖を調べるため
米国とソ連がロケットに載せて宇宙に
飛ばした。

 医生物学データベース「PubMed」
によると、HeLaにかかわる論文は
6万5千報超。
 「HPVの発見」
 「緑色蛍光たんぱく質の発見・開発」
などの研究はノーベル賞受賞につながった。

 一方で、ヘンリエッタさんは自分の細胞
が研究に使われることを知らされないまま、
その年の10月4日、人種隔離病棟で
亡くなった。
 がんが全身に転移していた。
 自宅の庭に埋められ、墓石もなかった。
 死後も細胞が生き続け利用されている
ことは、家族も20年以上知らなかった。

 50年代当時、患者に十分な説明なく
研究することはよくあった。
 しかし現在は研究倫理上、十分な説明
による同意(インフォームド・コンセント)
が必要となっている。

 HeLaは「患者から採った細胞が生む
価値は誰のものか」との問題も提起した。
 「細胞を樹立した研究者側に知的所有権
があり、患者にはない」という
米「ムーア事件」の判例がある。
 ガイ博士は無償配布したが、培養して
利益を得る企業もある。

 集めたヒト細胞は別の研究に使えるのか、
商業的価値が明らかな場合、細胞の提供者
に知らせる義務はないのか――。

 医薬基盤研難病・疾患資源研究部の増井徹
部長は語る。
 「ヒトゲノム(全遺伝情報)の研究が
進んだ今こそ議論されるべきだ」

 「組織があなたの体の一部であるとき、
それは明らかにあなたのものだ。
 けれども、いったん体から離れて
しまうと、あなたの権利は曖昧なものに
なってしまう」。
 米の科学ライター、レベッカ・スクルート
さんは著書「不死生命HeLa(ヒーラ)」
(講談社から邦訳刊行の予定)に記した。
 本の売り上げの一部で、ヘンリエッタ
さんの家族や同様に研究に貢献した人たち
を支援する基金を作った。

 ガイ博士に学んだ米モアハウス医科大の
ローランド・パティロ教授はヘンリエッタ
さんの貢献をたたえるHeLa
カンファレンス(会議)を毎年開く。
 「HeLaの物語は科学的、倫理的、
社会的に大きな議論と関心を呼び起こした。

 ヘンリエッタさんはジャンヌ・ダルク
のように歴史に残るヒロインだ」。
 昨年5月、パティロ教授の寄付で
ヘンリエッタさんの墓石が作られた。
 墓石にはこう刻まれている。
 《彼女の細胞は永遠に人類を助け
続けることでしょう》
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難しい問題です。
遺伝資源の問題ということになるので
しょうか?

>医薬基盤研難病・疾患資源研究部の
>増井徹部長は語る。
>「ヒトゲノム(全遺伝情報)の研究が
>進んだ今こそ議論されるべきだ」
同感です。

彼女の貢献は事実だと思う。
だから、
>米の科学ライター、
>レベッカ・スクルートさんは
>本の売り上げの一部で、
>ヘンリエッタさんの家族や
>同様に研究に貢献した人たちを
>支援する基金を作った。

>ローランド・パティロ教授は
>ヘンリエッタさんの貢献をたたえる
>HeLaカンファレンス(会議)を
>毎年開く。
>「HeLaの物語は科学的、倫理的、
>社会的に大きな議論と関心を呼び
>起こした。
>ヘンリエッタさんはジャンヌ・ダルク
>のように歴史に残るヒロインだ」。
>昨年5月、パティロ教授の寄付で
>ヘンリエッタさんの墓石が作られた。
>墓石にはこう刻まれている。
>《彼女の細胞は永遠に人類を助け続ける
>ことでしょう》
素晴らしい行動です。

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