山中 伸弥 氏:第26回京都賞記念講演会から
山中 伸弥 氏:
第26回京都賞記念講演会から
2010年11月11日 Science Portal
詳細は、リンクを参照して下さい。
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成功はビジョンを持つことから
米国と日本の研究環境の違い
私が3年間留学した米国は、日本と
研究環境が全く違いました。
「頑張って研究を続けるぞ」と米国から
日本へ帰ってきましたが、一年もしない
うちに『米国後うつ病』とでも言うべき
状態に陥ってしまいました。
「もう研究をやめよう」と、本当にやめる
直前までいきました。
つらかったことは自分の研究を理解して
くれる人があまりいなかったことです。
帰国後は医学部で研究をしていたの
ですが、周りの先生から「君の研究は面白い
とは思う。
けれども、もっと医学に役立つことを
やった方がいいんじゃないか」と忠告
されました。
共同研究における信頼関係
私は現在、日本と米国双方で研究活動を
行なっていますが、多くの人は「患者さん
を救いたい」という考えで一致しています。
だから共同研究をする際には、互いに
協力し合う関係をつくれます。
研究のある部分は秘密にせざるを
えなかったとしても、他の部分では協力
関係を築くことができるのです。
共同研究における信頼関係を築くため
には友人になることが大切です。
そのためには実際に会って話をすること
が重要だと思います。
留学への道のり
ネイチャーやサイエンスなど科学雑誌を
めくり人材募集の広告ページを見て、
自分がひきつけられるような研究を
している米国の研究所を見つけては、
片っ端から応募していたのです。
しかし手紙を出しても、出しても連絡は
返って来ません。
そんな中で受け取ったのが、
サンフランシスコからの返事でした。
「一度電話で話をしたい」と記されて
いるのを見て30分ほど話をした後に
「じゃあ契約成立です。大学院修了後の
4月からこちらへ来なさい」との言葉を
頂きました。
これが大学院修了前の11月だったと
思います。
この時私を雇ってくれた
トーマス・イネラリティ
(Thomas Innerarity)先生の指導の下、
サンフランシスコで学んだことが
私の基礎となっています。
「ビジョン」と「ハードワーク」
そしてこの時代に学んだことを常に私は
心がけています。
それは「ビジョン」と「ハードワーク」
でした。
研究者として成功するために、また人間
として成功するためには、この二つを
守ったら大丈夫だと教えてもらったこと
です。これは米国時代の恩師であり、
またグラッドストーン研究所の
プレジデントでもあるロバート・マーレー
(Robert Mahley)先生の教えでした。
まずビジョンを持っておくこと。
その上で、そのビジョンのために
ハードワークすることが大切なのです。
科学者を志す若い人へアドバイスしたい
ことは、他の人のまねをせず、本当に
新しいことに挑戦するためにビジョンを
持って、粘り強く取り組むことです。
『米国後うつ病』の状態から回復し、
研究者を続けることができたのは二つの
出来事のおかげでした。
一つ目はその当時に自分の研究分野
だったES(胚性幹)細胞研究が医学に役立つ
と注目を浴びるようになったこと。
そして二つ目は新しく奈良先端科学技術
大学院大学へと移り研究室を任されたこと
です。
この大学は米国に負けないような
研究環境があり、優秀な研究者と学生が
集まっていました。
ここで立てたビジョンが「受精卵以外の
細胞からES細胞のような細胞を作ろう」
ということでした。
(「受精卵を使う」という)ES細胞の倫理的
な問題を解決する、これに成功したならば
どれだけ素晴らしいか。
難しいことだというのは承知して
いましたが、このビジョンを大学院の学生へ
向けて話しました。
奈良で徳澤佳美さんと高橋和利君、
そして一阪朋子さんたちが私の研究室の
メンバーとなってくれました。
彼らは私の人生にとってかけがえのない
大切な仲間です。
彼らの活躍でiPS細胞
(人工多能性幹細胞)の樹立が成功した
のです。
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示唆に富んだ話だと思います。
山中先生は素晴らしい人ですね。
日本はもっと学ばないといけません。
その為には、研究者はもっと外に出て
いくこと。内向きでは駄目です。
学んで、もっと良い研究環境を作って
いかないと駄目なような気がします。
「ビジョン」。なりより必要なこと。
もっと大学間でオープンに議論しあえる
環境が必要でしょう。
>信頼関係を築くためには友人になる
>ことが大切です。
なんですから。
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コメント
最初の開国は明治維新である。二番目の開国は戦後である。三番目の開国はこれからである。
考え方にはいろいろある。自分たちの考え方が理に合わないものであることを証明するのは難しいことである。だが、それが証明できなければ、おかしな考え方を改めることも難しい。
http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812
投稿: noga | 2011年1月19日 (水) 17時26分
nogaさんコメントありがとうございます。
考えを改めるために証明が必要とは思いません。
閉鎖的であることは事実。比較すれば良い。
事実をきちんと把握し、どうあって欲しいかをしっかり
つかんでいさえすれば、どう改めるべきかは、自明と思います。
投稿: haredasu | 2011年1月20日 (木) 15時49分