再生医療に新手法 一足飛びに細胞作製、iPS介さず
再生医療に新手法 一足飛びに細胞作製、
iPS介さず
編集委員 矢野寿彦
2010/11/26 日本経済新聞
詳細は、リンクを参照して下さい。
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再生医療研究で新たな技術に注目が
集まっている。
皮膚などの細胞からiPS細胞(新型
万能細胞)を介さずに、神経の細胞や心臓
の筋肉(心筋)の細胞を作る
「ダイレクト・リプログラミング」と呼ぶ
手法だ。
実際の治療に応用を考えた場合、移植
した組織や細胞ががん化するリスクが
低いとされる。
11月初め、カナダの研究チームがヒトの
細胞で初めて実験に成功したと発表した。
カナダのマクマスター大学の研究チーム
はヒトの皮膚の線維芽細胞から血液の
前段階の細胞を作製した。
英科学誌ネイチャー(電子版)などに
よると、遺伝子「OCT4」を導入し
実現した。
特殊なたんぱく質を加えて培養した
ところ、赤血球や白血球といった血液細胞
もできた。
2012年までに臨床試験開始を目指す
という。
ここ1年、マウスの実験段階だが、
ダイレクト・リプログラミングによる研究
成果が国内外で相次いでいる。
1月、米スタンフォード大の研究チーム
が胎児の尾にある線維芽細胞から神経細胞
を作製したという研究論文を発表した。
3月には大阪大学の妻木範行・独立
准教授らが、軟骨のもとになるような細胞
や軟骨組織を作ったと、学会発表。
8月には慶応大学の家田真樹助教が、
米留学中の成果として心筋細胞を作製
したと、米科学誌セル(電子版)に公表
した。
ダイレクト・リプログラミングの研究
開発が加速するのはどうしてか。
iPS細胞のように生まれたころの未熟な
細胞へ完全に初期化(リセット)
しなくても、細胞分化の時計の針を戻せば、
狙った細胞が作り出せるかもしれない。
マクマスター大のチームが今回使った
遺伝子「OCT4」も、山中教授が
iPS細胞を作製するのに使う
「山中4因子」のうちの1つだ。
転写因子とも呼ぶこうした遺伝子の働き
は、種が変わっても保存されるケースが
多い。
岡野栄之慶応大教授は「マウスでできた
(ダイレクト・リプログラミングの)研究
成果の多くはヒトでも実現するだろう」と
話す。
今後1~2年、マクマスター大に続く
成果が相次ぐ可能性が高い。
再生医療の切り札とされるiPS細胞
だが、将来の臨床応用を考えると、
そのまま移植するわけにはいかない。
神経細胞なり心筋細胞といった治療目的
にかなった細胞に分化させなければならず、
「分化誘導だけでも大変な作業になる」
(国立成育医療研究センター研究所の
阿久津英憲室長)。
ダイレクト・リプログラミングだと、
このプロセスを事実上省くことになる。
遺伝子導入にウイルスを使うため、
がん化リスクは皆無ではない。
ただ、iPS細胞のように分化しきって
いない細胞がどんな細胞に育つか分から
ないといった心配はなく、その分、がん化
リスクは低いとみられる。
妻木、家田両氏も参加する科学技術
振興機構(JST)戦略的創造推進事業
(CREST)「人工多能性幹細胞
(iPS細胞)作製・制御等の医療基盤
技術」研究領域を総括する須田年生慶応大
教授は「治療に使うには、細胞に万能性は
必要なく、ダイレクト・リプログラミング
は魅力的なアプローチ。
どれだけ増殖能力が備わっているかが、
実用化への課題になる」とみている。
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「ダイレクト・リプログラミング」ね~
面白い発想ですね。
>「治療に使うには、細胞に万能性は必要
>なく、ダイレクト・リプログラミングは
>魅力的なアプローチ。
>どれだけ増殖能力が備わっているかが、
>実用化への課題になる」
なるほど。
万能細胞はそれはそれで、必要とは
思いますが、
ダイレクト・リプログラミング、確かに
魅力的ですね。
カナダの研究は以前投稿してます。
「ヒト造血幹細胞:iPS経ず皮膚細胞
から作成」
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