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2010年12月17日 (金)

医薬品産業の競争の成否を握るのは研究者のヒラメキよりも資金力

医薬品産業の競争の成否を握るのは研究者
のヒラメキよりも資金力

2010年12月13日
Biotechnology Japan:Webmasterの憂鬱

詳細は、リンクを参照して下さい。

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 先週の土曜日に技術士の生物工学部会
発足、20周年記念の会が東京で開催
されました。

 バイオテクノロジーに逸早く取り組み、
プロフェッショナルとして確立しようと
した、先人の努力と先見性には頭が下がり
ます。

 但し、会場でも話題になっていましたが、
生物工学と農芸化学の差は何かなど、
バイオテクノロジーが、横串を貫く技術で
あるため、製品や応用分野に準拠している
技術士のジャンルに混乱があることは課題
として残っています。

 日本の組織は縦割りが余りにも強く、
21世紀に入って実用化が加速した横串を
貫く技術革新を上手に事業化できない問題
と瓜二つの問題を抱えていました。

 今や一つの分野の専門家より、複数の
分野の専門家や専門家同士のチームが技術
革新のために必要となっています。
 人材の育成や異分野のコミュニケーション
も含めて、我が国の科学技術に取り組む
課題は極めて大きいと実感いたしました。

 この会議では記念講演もありましたが、
2010年10月15日のScinece誌に掲載
された重要論文を講演会で教えてもらい
ました。

 この論文は世界で初めて特製のスパコン
によって、たんぱく質の構造変化や
フォールディングを分子動力学計算で
シミュレーションできたことの報告です。

 今やウシ膵臓トリプシン阻害たんぱく質
(BPTI)のような小さなたんぱく質
であれば、NMRや結晶解析などせずに、
しかも、ダイナミックな構造変化を計算
することまでできるようになったのです。

 かつて飛行機や自動車のデザインを決定
する際には、空気抵抗を実測する巨大な
風洞が必要でした。
 しかし、今では風洞は引退し、スパコン
を使ったシミュレーションですっかり代替
されています。

 たんぱく質の研究も、NMRや放射光の実測
の時代から、今後急速にスパコンによる
計算に移行していくことは間違いないと
思います。
 スウェーデンや韓国が放射光施設の建設
に入っていますが、時代を読み違えている
のではないでしょうか?

 今まで、全原子の分子動力学計算によって
たんぱく質のシミュレーションを行った研究
では、2008年に発表された10μ秒間の動画
描出が最長でした。
 これはスパコンを3ヶ月間連続稼働して
得たものです。
 しかし、10μ秒間ではたんぱく質の
フォールディングや構造変化をとらえる
ことは難しい。
 こうした現象はゆっくり進みます。
 10μ秒間から1m秒間をシミュレーション
しなくてはならないのです。
 今回の論文では、米D E Shaw Research社
が独自に開発したANTONというスパコンを
駆使しています。

 分子動力学計算に特化したCPUと
アーキテクチャーを持つ、専用コンピュータ
です。従来の100倍もの長時間の分子動力学
計算を可能といたしました。
 論文によれば、予想通り分子フォール
ディングや構造変異を今までの実測値と
一致しており、構造変化の詳細な
カイネティックスまで明らかになりました。

 この企業を率いるD E Shaw氏は世界最大
のヘッジファンド(2.5兆円)を創設、
大成功した富豪で、しかもコンピュータ
サイエンスの専門家でもあり、Clinton元
大統領高層ビルの2フロアをAntonで
埋め尽くし、パソコンによるたんぱく質の
動的な解析を実現しました。

 この研究資金は全て、彼のポケットマネー
から出ているという噂も流れているのが、
まったく小憎らしいほどです。

 同氏の研究に刺激を受けて、東京大学
先端技術研究所の児玉教授は富士通や
富士フイルムなどとコンソーシアムを今年
立ち上げ、専用のスパコンで抗体の分子設計
に挑戦することを始めました。

 将来、たんぱく質とリガンド(医薬品など
の低分子)やたんぱく質同士の動的な
シミュレーションが可能となれば、医薬品
産業はセレンディピティ依存の研究から、
論理的な薬剤設計に変わることは
避けられません。
 そうなると、研究者のヒラメキよりは、
資金力が競争の成否を握ることになります。

 つまり、半導体や自動車で起こした企業
などという中途半端な夢を追わず、資金力
と国際的な販売網を確保するために、巨大
合併を推進しなくてはならないのではない
でしょうか。
 もう、ここまできたら余り時間は残されて
いないと思います。

 それではいつ頃、医薬品を全原子の分子
動力学計算でデザインできるのか?

 今回モデルとして利用されたBPTIは
58アミノ酸で構成された分子です。
 計算対象となる原子数の2乗で計算処理が
必要となりますので、通常のたんぱく質
である100アミノ酸から300アミノ酸を標的
にすると、単純に計算すると今の4倍から
36倍の計算能力が必要となります。
 水分子なども考慮に入れれば、現在の
100倍程度の計算機能力があれば、こうした
たんぱく質と低分子の相互作用を分子動力学
で計算することは可能となるはずです。

 実際には阻害剤をデザインする時には、
内因性のリガンドとの競合なども
シミュレーションしたいので、余裕を持って
200倍程度のスパコンが必要となるかもしれ
ません。

 現在ならマンハッタンのビル、400階分
が必要でしょうが、毎年、スパコンは
素早く、価格安く、環境にも優しくなって
おり、10年後には、かなりの医薬品の
スクリーニングをスパコンが代替する時代
となる可能性があると感じています。

 平行して進むであろう、システム生物学
による細胞の動的シミュレーションなどと
組み合わせて、細胞ベースのスクリーニング
を代替することが、その次の挑戦と
なりそうです。

 先週神戸に行き、我が国のペタコンの
建物が順調に出来上がりつつことを確認
しました。
 ペタコンの使い道に悩んでいるよう
ですが、一も二もなく、たんぱく質の全原子
の動力学シミュレーションをSpring8と
理研がため込んだNMR群で検証しつつ、
ソフトウェアを開発するプログラムを開始
しなくてはならないでしょう。
 勿論、ANTONに対抗する独自の
ハードウェアの開発も忘れてはなりません。
 沈みゆく我が国のコンピュータ産業に
残された、最後のチャンスかもしれません。
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面白いですね。

ハードウェアとか気象現象とかの動的
シミュレーションだけでなく、
たんぱく質の全原子の動力学
シミュレーションの時代に入りつつ
あるんですね。

確かにそうなれば、研究者のヒラメキ
よりも資金力ということになりそうな
気もします。

シミュレーションの威力は絶大です。
ただ、シミュレーションの正しさの検証は
必須ですので、実測できる環境は必要です。
シミュレーションだけでは成り立ちません。

物理学もそうですね。
理論物理は理論だけでは成り立ちません。
物理的な証明が必要となります。

理論は自由です。
応用範囲は広い。
夢が広がります。

分子生物学も面白そうですね。

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