電力分野で「非連続のイノベーション」が起きたら・・・
電力分野で「非連続のイノベーション」
が起きたら・・・ 電気事業も
自動車産業も、水平分業化する
2010年10月18日 日経ビジネスONLINE
詳細は、リンクを参照して下さい。
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<コンピューター産業も電気通信事業も
水平分業へ>
一般的な傾向として、水平分業化は
レイヤーごとに新規参入が容易になり、
競争が激しくなること、
従ってイノベーションに迅速に対応
しやすいことは言えるだろう。
またその前提として、レイヤー間の
接続手順が標準化され、公開されることが
不可欠である。
そして、一度水平分業化が世界の潮流と
なれば、垂直統合を維持することは、
グローバル競争上困難を伴う。
以上が、1世紀もの間、垂直統合型
だった電気通信事業から得られる
教訓である。
インターネットは、この点において
革命的であった。
そのネットワークは、特定の電話会社が
独占的に所有して国ごとに中央管理する
ものではなく、多くの電話会社、さらには
需要者が分散的に共有する形になったため、
インフラとして誰もが使えるようになった。
このようにレイヤーごとに特化した
機器や、インフラを利用した新たな
サービスのビジネスは、グローバル化に
親和的だった。
水平分業化された1つのレイヤーは、
国内市場のみを対象にしていれば、
垂直統合型産業よりも圧倒的に規模が
小さい。
しかし、そのレイヤーが世界共通で
標準化されていれば、市場は国境を越えて
つながっていると見ることができ、競争の
地平が一気にグローバル化する。
<電気事業で何が起こるのか?>
インターネットを軸として通信分野で
生じたこのようなイノベーションは、
電力分野では生じないのだろうか?
スマートグリッドが志向しているものに、
この水平分業化も含まれると考えざるを
得ない。
即ち、垂直統合型で運営されてきた
既存の電気事業は、今後、水平分業化と
サービス化が進むだろう。
図3の通り、これまで発電・送電・配電を
統合的に管理してきた電気事業は、
各機能が分離されていくと考えられる。
電気事業においてボトルネックとなる
設備は送電網である。
発電や売電には競争を導入する余地が
大きいが、いくつもの会社が競うように
全国的な送電網を建設しても、社会的に
非効率なだけである。
従って、送電網は独占的な主体が一括
して保有し、一定の規制下で安定供給義務
を負い続ける。
と同時に、風力発電の事業者や家庭の
太陽光発電に対して、公正なルールの下で
広く開放されることが望ましい。
これまで、この送電網への接続について
制約が大きかったことが、日本で風力発電
が普及しない一因とされてきた。
風力発電事業者に話を聞くと、電力会社
が容易に送電網に接続させてくれないと
不満を漏らす。
一方で電力会社の言い分を聞くと、風力
による電力は周波数の変動が激しく、また
送電容量にも限度があるため、
安定供給義務を負っている立場からすると
接続を制限せざるを得ないと反論する。
両者の対立問題は、資源エネルギー庁の
審議会などでも長年議論されているが、
日本では十分に解決されていない。
その解決策が送電網の構造分離であり、
これが実現すれば公正な競争が促進され、
再生可能エネルギーが普及すると
言われている。
これは、1990年代の通信分野において、
NTTが独占的に所有する地域網への「接続」
について議論されたのと全く同じ
構図である。
水平分業化は、その川下部分にも競争を
もたらす。
即ち、売電専門の会社が現れ、これまで
単一商品だった電力の販売において、
価格面で競争が発生する。
もちろん、その前提として公正に機能
する電力市場が存在し、需要と供給に
応じて価格が変動することが必要である。
そしてAMI
(Advanced Metering Infrastructure)の
構築が進めば、HEMS
(ホームエネルギーマネジメントシステム)
などのサービス競争が展開され、またEV
(電気自動車)に対するサービスも開発
されるはずだ。
こうして、これまで受動的だった需要者
には、価格面でもサービス内容面でも
多様な選択肢が与えられることになる。
これら、水平分業化とサービス化が実現
された姿こそ、自律分散・開放型の
スマートグリッドの目指すところ
なのであり、ここまでの構造変化が起きて
初めて、「e-T革命」と呼ばれる
イノベーションに値するのである。
実は、電気事業の水平分業化は机上の
空論ではない。
むしろ、世界の常識と言っても過言では
ない。
欧州も、アメリカも、中国さえも、原則
として発電と送電、配電が分離されている
のである。
しかしそれは、スマートグリッドが注目
を集めるようになってからの話ではない。
前回で触れた通り、1980年代から
1990年代にかけて世界各国で電力市場の
自由化が議論され、その主要政策として
送電網の分離が実現された。
しかし日本では、アメリカで電力危機が
発生するに及び、大口需要家向け市場の
開放で止まり、当面は水平分業化
(構造分離)をしないとの判断が下された。
そこにイノベーションが起きること
により、日本の電気事業も変わる
だろうか?
シュムペーターは、「新しい組織の実現」
について、「独占的地位の形成あるいは
独占の打破」と説明しているが、そのような
ことが起きるかもしれない。
このように、インターネットのアナロジー
から考えれば、電気事業のビジネスモデル
にも、水平分業化やサービス化が生じると
予想される。
繰り返しになるが、私は何でもかんでも
水平分業化すべきと言っているのではない。
垂直統合が当然であり最善だと思われて
きた電力分野でも、非連続の
イノベーションが生じる可能性を否定
すべきではないということだ。
予想通りになれば、「20年で3100兆円」
(日経BPクリーンテック研究所)という
莫大なビジネスチャンスがもたらされる
ため、日本を含む各国はスマートグリッド
の開発を競っている。
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>スマートグリッドが実現すれば、莫大な
>ビジネスチャンスがもたらされる。
ことは事実だと考えられます。
通信事業のアナロジーからわかるように、
その恩恵に預かる最低条件が、電気事業の
水平分業化なのです。
発電と送電、配電が分離され、自由な競争
が出来るような環境がなければ不可能です。
当然そこには、標準化が存在します。
新しい標準の策定に日本も貢献できるよう
でなければ、乗り遅れること必定だと
思います。
小さな単位でスマートグリッドの実験など
と言ってやっているようではお先が見えて
います。
スマートグリッドはシステムなのです。
あるべき構造があるのです。
>欧州も、アメリカも、中国さえも、原則
>として発電と送電、配電が分離されて
>いるのである。
のです。既に出遅れているのです。
日本の政治家を見ていると出来そうにない
ような気がします。悲観的になってしまう。
電力業界を押し切って、あるべき構造に
勇気を持って変えて行けなければ日本は
ますます取り残され、後進国の仲間入り
かな?
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