第5回 医療事故への適切な対処
押田 茂實 氏「法医学の役割-安全で冤罪
許さない社会目指し」
第5回 医療事故への適切な対処
(掲載日:2010年6月7日)Science Portal
詳細は、リンクを参照して下さい。
このインタビューという項目はなかなか
面白いですね。
その中の一つを紹介します。
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実は私のライフワークは医療事故訴訟
です。
医療事故の裁判では、相当因果関係の
有無が問われます。
民法の場合ですと、現実に生じた損害の
うち、債務不履行あるいは不法行為があれば
通常生じるであろう損害を賠償すればよい、
という考え方です。
法科大学院で講義するとき私は
「相当因果関係というのは、
相当いい加減な関係だ」と話しています。
院生たちはゲラゲラ笑いますが、講義を
聴き終わった時には皆、シーンと
なります。
なぜかというと、どの裁判官に当たるか
によって同じようなケースでも勝ったり
負けたりの判決なのです。
やってみないと分からないということ
です。
普通の損害賠償請求訴訟、例えば「貸した
お金を返せ」という裁判で、訴えられた
被告に「お金を返せ」という判決が出る
のは、全体のどのくらいと思いますか。
- 少ないのでしょうか。
いえ、約85%は「借りたものは返し
なさい」という判決が出ます。
問題はその次です。
判決に不満な被告が「既に一部返して
いるではないか」などと控訴することが
あります。
その結果、判決が覆って「返さなくても
よい」となるケースはどのくらいあると
思いますか。
家を探してみたら領収書が出てきたなど
という事実認定が後で変わる例があります
から、逆の判決が出ることはあるのです。
しかし、せいぜい数%です。
これで、世の中の秩序は保たれている
わけです。
裁判官が一度「返しなさい」と
言ったら、違う事実が出てこない限り、
ひっくり返ることはありません。
ところが、医療関係の訴訟は違います。
一審判決で1億円の損害賠償を請求
されたとします。
そして、5,000万円払えという判決が
出たとしたらどうでしょう。
大抵の場合、医師は怒りますよ。
「まじめに医療行為をしたのに、何と
いうことを言うのか」と主張して控訴
します。
こうしたケースで、「5,000万円払え」
という判決が、逆に「払わなくてもいい」
と覆る確率はどのくらいだと思いますか。
3-5割あるのです。
一方、1億円の請求に対し
「払わなくてもよい」という1審判決が
出た場合はどうでしょう。
患者側弁護士の中には非常に勉強して
いる人がいて、「冗談じゃない。
治療に失敗したから子供が脳性まひに
なっているのに」などと主張して控訴
します。
その場合の判決がどうなるか。
5割は一転「金を払え」となるのです。
普通の裁判では、裁判官がこうと言ったら
まず終わりです。
3割も5割も判決が覆るのは医療訴訟しか
ありません。
「医療訴訟はやってみなければ分から
ない。
だから“いい加減な関係”だ」と言うと、
私の講義を聴いた院生たちは皆「なるほど」
となるわけです。
こういう現状を変えるためには、医療の
ことも法律のことも分かる裁判官が必要
です。
裁判官が一度「こう」と言ったら変わら
ないというレベルにしないと日本の
医療訴訟はおかしい。
例えば、このように言ったという録音が
あるなど新しい事実が出てこない限りは、
判決は変わらないようにしないと―。
40年間、私が言い続けていることです。
特に医療に関しては、日本の裁判は
行き当たりばったりだ、と言わざるを
得ません。
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こういう記事を見ていると。
確かに
>特に医療に関しては、日本の裁判は
>行き当たりばったりだ、
と思えてきますね。
やってみないとわからない。
どうしてそんなに判決がころころ変わる?
どこかおかしいと思わざるを得ない。
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