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2010年7月 5日 (月)

第33回 厚生労働省や金融庁、総務省は情報化の焦点がずれている

第33回 厚生労働省や金融庁、総務省は
情報化の焦点がずれている

2010/07/05 IT Pro


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 前回(第32回)は、選挙での得票を意識
しなければならない政治家よりも、原則
として定年までの雇用が保証される官公庁の
職員・官僚のほうが、社会を変えるのに必要
な情報収集・情報発信の役割を担うのに
ふさわしいことを説明しました。

 ただし、現実には官公庁の情報収集・発信
には様々な課題があります。

以下で、厚生労働省、金融庁、総務省など
の個別の事例を紹介します。

7億円IT投資でも合理化されない病院経営
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 例えば厚労省が所管する病院の会計
システムには問題があります。
 あまり目立たないところですが、病院の
会計システムの開発と維持には膨大なコスト
とエネルギーがかけられています。

 病院の規模や立地、診療科などは多様で、
医師にも個性があります。
 個別の患者の要望も尊重するべきです。
 しかし、病院の会計に個性が必要で
しょうか。
 厚労省所管の法令によって、病院が会計
でやらなければならないこと、やっては
いけないことは厳密に定められています。

 病院にとっての基幹情報システムとは、
患者に対する診療行為を記録し、その後の
診療に備えると同時に、患者負担金と
保険者負担金などを計算し、管理会計・財務
会計上のデータを記録するものです。

 私が聞いた話では、ある病床数400程度の
大規模病院が5年に1回基幹情報システム更改
し、その都度約7億円を投資するそうです。
 それだけで驚きましたが、これが医療業界
では常識的な金額だと聞いてさらにびっくり
しました。

 病院の基幹情報システムには電子カルテ
などを含む場合がありますが、それでも事実
を記録し、集計、計算、管理するだけの
比較的シンプルな機能しかありません。

 システムが刷新されたからといって、我々
患者が診察室や手術室で受ける診療や
サービスは向上しません。

 患者が支払う医療費が下がるわけでも
なく、待ち時間が短縮されるわけでも
ありません。

 それなのに、この7億円はこの病院で世話
になる患者全員で応分負担することになり
ます。
 あるいは、病院に来ない健康な人が支払う
保険料や、税金などでまかなわれます。

 厚労省は「医科電子点数表」というものを
公開しています(厚労省の2010年3月5日付の
発表文書)。
 診療行為や薬剤の診療報酬について
「点数」を定めています。
 点数はそのまま価格に換算されます。
 ただし、電子点数表と言っても、日本語
で何が何点かを羅列して書いてあるだけの
ものです。


「医科電子点数表」の怪
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 数年前、厚労省のある課長クラスの方が、
もっとコンピュータで扱いやすい真の“電子
点数表”を作ろうと動きました。
 ところが、“抵抗勢力”が現れたようです。

 全国の病院が2年に1度の診療報酬改定に
応じて、多額のシステム改修コストを使う
ほうが良いと考える勢力があります。
 さらに、全国の病院から健康保険組合など
に保険者負担金を請求するためデータが
「社会保険診療報酬支払基金」(厚労省の
外郭団体)に集約されますが、ここでの
データチェック業務を複雑にしてシステム
経費をかけるほうが良いと考える勢力が
あるのです。


金融機関を監督しすぎる金融庁
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 金融庁にも課題があります。
 金融庁の検査・監督対象は金融機関です
が、それらの子会社も含まれます。
 銀行、保険業、証券業の情報システム
子会社も監督対象になるわけですが、この
順で監督の厳しさ、細かさが異なります。

 中央省庁から親会社グループへの“天下
り”人数と監督の厳しさに相関関係がある
という説もあります。

 銀行のシステム子会社について、笑い話の
ような出来事がありました。

 システム子会社でも「“銀行法の縛り”
によってやって良い業務が制限されている」
と同社の管理職が言いました。
 たまたまある“ユーザー企業”の主要IT
(情報技術)ベンダーがその銀行子会社で
あった時のことです。
 この“ユーザー企業”が親銀行の融資先
だったことから、子会社がシステムの面倒
を見ることになったのですが、人材管理業務、
給与支払業務、社内電子メールなどほとんど
すべての分野のシステムを提供していました。

 「“銀行法の縛り”というのは何なの
だろう」といぶかしく思ったものです。


グーグルのサービス導入が銀行法“違反”?
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 ところがこの“ユーザー企業”がグーグル
のクラウド型サービス(関連記事)を採用
すると決めた時のことです。
 ITベンダーである銀行子会社は、電子
メールシステム運用の一部について支援
できないと言い出しました。
 それも、“銀行法の縛り”によってでき
ないのだと。
 関係者の1人だった私は噴き出すのを
こらえるのに必死でした。
 “銀行法の縛り”を口実にして、やりたく
なかっただけなのです。


改革を志す政治家には情報化の知恵が必須
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 総務省にも課題があります。
 都道府県・市区町村を指導する役割を持つ
総務省は、地方自治体が効率的に情報化を
進めるために果たすべき役割があるはず
です。
 自治体の“自治”に任せて総務省が何も
しなければ、自治体のシステムは全国で
バラバラになってしまいます。
 この問題は「第28回 行政機関が
“似て非なるシステム”を作り続ける理由」
で指摘したとおりです。
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何か良く訳の分からない縛りが沢山ある
ようです。

自分達の利権を守るために、ルールを作る。
自分達の為で、国民の為にならないルール。
そんなルールが沢山ありそうです。

それはそうですよね。
自分で自分を縛るようなルールは作らない。

改革を志す政治家には情報化の知恵を
持って貰いたい。それはそれで期待
しますが、

やはり最終的には、国民が官をしっかり
監視する、監視できるシステムを作る
しかないのではないでしょうか?

オンブズマンもその一つでしょう。

法律的にもしっかりした基盤を持たせない
と駄目だと思います。

時間がかかるでしょうが、これしかない
かな?

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